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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第三章 迷宮都市前編

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第79話 大きくなった蛇とミミズは大した違いが分からない

HAPPY Xmas!って言いたいがために投稿します。

内容はクリスマス全然関係ないんですけどね…。


 30階層にある平原のフィールド、その東の森の奥から何かを感じ取ったアギトの警告を信じ、俺達は森を抜けると平原までやって来た。


「――ここまで来たら大丈夫だろ」


 誰も喋らない中、ユートが会話の口火を切った。


「さて……とりあえず、これからどうしようか」


 アイゼンも何か言いたそうにしているが、空気を読んだのか俺の言葉に同調した。


「アギトにも聞いてみるか。アギトは何か意見はないか?」


「うむ。先程の違和感が気になるが……それよりもまず、ここにいても問題ないのだろうか?」


「う~ん、戦闘地点(さっきのところ)から森の外(ここ)までそれなりに離れているし問題ないんじゃないか。他に何かないか?」


「なら、後は任せる。我に構わず決めてくれ。我はおぬしらについて行く故な」


 そんな人任せな……と思ったが、もしかして自分だけ言葉が分からないから、会話が進まないと思って俺達に任せたのだろうか?

 ……そう考えたら、やっぱり言葉を教えた方が後々便利だよな、と今日帰ったら言葉を教えてやろうと心に留めておく。


「ちなみに、アイゼンはアギトが感じた違和感についてどう思う?」


「何が起きてるのか分からないから正確な事は言えないけど、おそらく彼は魔物の気配を感じ取ったんだと思うよ」


「魔物の気配?」


「そう。俺みたいな斥候は役職柄、気配って奴に敏感でさ。魔物や人間の生命力みたいな感覚的なものを肌で感じ取れるんだよ。それを彼も俺と同じ様にーーいや、龍人族ドラゴニュートとしての直感で感じ取ったんじゃないかな」


「……そんなことが出来るのか。ちなみに、あの森の中にそれらしい魔物の情報とかはあるか?」


「残念だけど、心当たりはないね。あの森に【トロルの森】って名前があるくらい有名なのは確かだけど、別にトロールしかいない訳じゃないから」


「やっぱりそうだよな……」


「ついでに付け加えるなら、出現する魔物の中に時々珍しい魔物が現れる事があるって聞くけど、その可能性が高いんじゃない?」


「その珍しい魔物ってのは、強さとかどんな感じなんだ?」


「まあ例外もあるけど、通常種の魔物と比べて格段に強くなったり、特化した能力を持つことがあるって聞くね」


 「残念ながら、俺は見たことが無いけど」と全く残念じゃなさそうにアイゼンは付け加えた。

 見たことが無いんじゃ、具体的に答えるのは難しいか。


「それはちょっと面白そうだけど、どこにいるのか分からない魔物を探すには手間が掛かりすぎるな」


「まあ、普通ならそう考えるんだけどね。でもその魔物が新種だったり、他では滅多に見れない魔物なら、今の時期なら高く売れるだろうから、これを知った冒険者はみんなここに殺到するだろうね」


「高く売れる? ……ああ、そういうことか」


 どういう意味かを考えた時、前に本で魔物の新種はギルドで買い取ってもらえるという記述を見たのを思い出した。

 それだけじゃない。あと数週間としない内にオークションがある。

 それに出品したり、好事家やコレクターに売りつければいい小遣い稼ぎになるだろう。


「とはいえ、そこまで金に困ってない訳だけど、その魔物、探して捕まえたいか?」


 生きるためではなく、金のために狩られる魔物が少しだけ憐れに思った。


「いや、魔物にはあまり興味は無いかな。宝なら喜んで探すけど、魔物は専門外でね」


「じゃあ、休憩ついでにその何かの正体を探るっていうのはどうだ? 休憩が終わっても何も起きなかったら次の階を目指すってことで」


「いいんじゃない? ここまで俺は何もしてないけど、十分じっぷんもあれば何か変化があるかもね」


 賛成が得られたという事でアギトにも伝えると、各々自由にくつろぎ始めた。

 それを見たユートは少し離れた場所でトロールを出現させると、解体の本を手に、どこから解体すればいいのか探し始めた。


「そういえば、君に聞きたいことがあったんだ」


「んー? なんだ?」


 アイゼンが意味深な切り出しで話し掛けてくるが、面倒くさいので俺はトロールに関するページをパラパラと読みながら適当に返事をした。


「――君、空間魔法が使えるよね?」


 何でもないかのようにアイゼンが平然と問うてくる。

 その質問が来た時、俺はただこう思った。


 「ああ、やっぱり聞いてくるか」と。


 別になにが何でも隠しておきたい訳じゃないが、わざわざ教える必要性を感じなかったのも事実であった。

 空間魔法が希少な事は幾人かの反応を見れば馬鹿でも理解できる。

 だというのに、見ず知らずの初対面に自分の能力をペラペラ喋る方が怪しいと言うか、大抵の場合、警戒するだろう。

 それにまだ、パーティーを組んで初日なのだ。

 残念ながら、最初から明け透けに全てを話せるほど信用できない、というのが一番の理由だった。

 それに、話すことでどういう反応をするのかもチェックしているからだ。

 そもそも、本気でバレたくないのなら目の前で魔法を使うはずもない。


「まあ、そりゃあ空間魔法が無かったら、トロールなんて(こんなの)持ち運べないしな。それに俺、一応魔法使いだし。別に使えてもおかしくないだろう?」


「……確かに君、一応魔法使いだったね。空間魔法が使えても何もおかしくないか」


「そうそう。それで聞きたいことはそれだけか?」


「んー、そうだね。今はそれだけかな」


「そうかよ」


 と一言言うと、それ以降、ユートとアイゼンの会話は続かずに終わった。

 その後はアギトに手伝ってもらいながら、力技で解体を行い、必要最小限の素材を取ったら火で燃やした。

 食うつもりは無いが、焼き肉の匂いが漂ってくるので食べたらおいしいのか少し気になった。

 別に俺の頭がおかしくなった訳ではなく、本に可食できると書いてあったためだ。

 一応念のため、誰に言うでもないが前置きを置いておこう。


「――そろそろ出発しようか」


 ゆっくりとしていたのも束の間、軽やかに立ち上がり、一声かけてから歩き出したアイゼンの後を俺達もついて行く。

 結局、休憩中に魔物が出てくることも、それらしい騒ぎも起こることなく出発する訳だ。

 何も起きなくて面白くないが、人生とはそういうもんだろう。

 そんな風に考えながら次の階層へ向かおうとすると、何か違和感を感じた。


「……地面が揺れている?」


 アイゼンが小さな声で呟いた。

 それを聞き、試しに立ち止まってみると確かに地面が揺れている事に気付いた。

 どうやら違和感の正体は地震だったらしい。


「確かに揺れてるけど、ここじゃ地震って珍しいのか?」


「……君は何も知らない様だけど、内陸国であるこの地で地震は滅多に起きるものじゃない」


「ふーん」


「それに――」


「それに?」


 不穏な前ぶりにどんな言葉が出てくるのか。


「ダンジョン内で地震が起きる事は、まずあり得ない」


「あり得ない……? それはつまり――」


 先程まで感じるか感じないかだった揺れが、まるで何かが近付いて来ているかのようにどんどん大きくなっていく。


「下から何か来るぞ!!」


 アギトが剣を抜きながら警戒を呼び掛けてくる。

 すると突然、トロールが置かれていた地面が隆起すると何かが飛び出して呑み込んだ。


「あれは……!」


 飛び出して来た巨大な何かが空を滞空し、そして停止すると、そのまま自然法則によって地面へ落っこちてくる。


「すぐに離れるんだ!」


 一番遠くにいたアイゼンが逃げながら呼び掛けてくるが、二人よりも一歩逃げ遅れた俺は迫ってくる影から逃げられない。


 ――こんなところで押しつぶされて、死んでたまるかぁっ!!


 右腕を目一杯広げ、どうにか潰されない様に前へ前へと手を伸ばす。

 そこで突然、がっしりとした腕に掴まれた俺は、外からの力になす術もなく引っ張られ、前に流される。

 同時に、巨岩が地面へとぶつかる様な大きな音が平原内に轟き、土煙を上げる。 


「うわあっ!?」


 俺はというと、引っ張られた力と後ろからの風圧でゴロゴロと無様に地面を転がっていくと、樹にぶつかってようやく止まった。


「――痛っ! ……はは、助かったよ、アギト。助けてくれてありがとな」


「うむ。死なずにすんで何よりだ。怪我もしてない様だな」


 腕を組みながら見下ろしてきたアギトが、その無表情の龍の顔に申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 アギトが間一髪のところで引っ張ってくれたおかげで、地面の染みにならずに済んだが、俺はというと、藪と背中に背負ったバッグという名のクッションのおかげで、服が土まみれになったものの無傷で生き延びられた。

 その代償に、逆さになってアギトを見上げることになったが、戦闘中なのでシュールな体勢から立ち上がることにした。


「ああ、問題なさそうだ。――それよりあれ……ミミズ、か?」


 目の前には黒に近い土褐色の長い胴体を持ち、子どもの妄想を描いたような巨大なミミズが目の前に存在していた。

 人によっては蛇と勘違いする見た目をしているが、こう、なんていうか、ミミズ特有の蛇腹(?)のような節が沢山あるので、おそらくミミズだと思われる。


「あれとは違うが、我は似たものを森で見た記憶がある。その時は遥かに小さく、それに数が多いのが奴等の強みだった筈なのだが、目の前にいるのはどうやらたった一匹しかいないようだ」


「じゃあ、あれはアギトが見たのとは別の奴ってことか……?」


「おそらくそうであろう。森で見たヤツは的が小さい癖に、落とし穴を掘るという小賢しいヤツでな。食いでが少ないだけでなく、泥臭くてマズいという、全くもって倒しがいの無い魔物であった」


「そ、そうか……」


 なんか色々気になる言葉を言われたが、いまは緊急事態だ。

 その話について詳しく聞くのは倒してからにしよう。


「――大丈夫だったかい?」


 遠くにいたアイゼンが剣を片手に魔物を警戒しながらも近くに寄って来た。


「ああ、アイゼンか。危うく死にかけたけど、問題ない。それよりあいつ、どうやって倒せばいいと思う?」


「そうだね……見た感じ、砂漠にいるサンドワームに似た魔物の様だから、同じように倒せばいいんじゃないかな」


「そいつはどうやって倒すんだ?」


「魔物を地面から引きずり出した後に、潜られる前に叩く。その繰り返しだね」


「マジかよ、おい……」


 どうやら俺は異世界にきてまで、もぐら叩きをしないといけないらしい……。


ミミズでよくみられる蛇腹のような構造のことを専門用語で体節たいせつというそうです。

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