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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第一章 異世界適応篇

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第18話 初依頼

貨幣の価値についての設定(復習)


小銅貨10枚=大銅貨1枚 100

大銅貨10=小銀貨1 1000

小銀貨10=大銀貨1 10000

大銀貨10=小金貨1 10万

小金貨10=大金貨1 100万

大金貨10=小白金貨1 1000万

小白金貨10=大白金貨1 1億

大白金貨10=小水晶貨1 10億

小水晶貨10=大水晶貨1 100億


100ノル=100円くらい



補足として、現在は水晶貨の希少価値故に見られることも使われることも滅多にない。


 全ての本を読み終えた俺は、座りながら背伸びをして体をほぐした。

 まあ読み終えたというよりはさらっと流した部分の方が結構多かったんだけどな。

 それにメモ帳もないから書くことできなかったし、今度はしっかり準備しよう。

 そんなことを思いながら椅子から立ち上がり、司書さんの方に読んだ七冊の本を持って歩いていくと、相手もこちらに気づいて動かしていた手を止めた。


「本を読み終えたんですね」


「はい、探してもらったおかげで意外と時間が余っちゃいましたけど……」


 本を読む人なら分かるだろうが、目的の本以外に目を向けてしまって五分で見つかるようなものが十分、二十分と大幅に掛かってしまう時がある。

 そして面白そうな題名や興味を惹かれる文字が書かれてあるとついつい手が伸びて、最終的に目的の本は後回しだったりどうでもよくなってしまったりする。

 そんな本好きのあるあるが伝わったのか司書さんも笑ってくれた。


「ふふっ、そうですか。それは余計なことをしてしまいましたね」


「いやいや、とんでもない。あなたのおかげで時間を有用に使えますから。それとこの本が売っている場所をご存じですか?」


 そう言って見せた本は「魔物大図鑑」と「魔法大辞典」だ。これから先、あると便利だろう本は是非とも買いたいところだ。それに俺はまだ知らないことだらけだからな。


「その二つが欲しいのですか? それならありますよ、ここに」


 言うが早いか隣の小部屋へ颯爽と行くとすぐに二つの本を持って帰ってきた。


「はい、この本ですよね? どうぞ」


 渡された本を見てみると確かに似ていたが、二つとも少しだけ古く微妙に厚さが違った。


「そちらの二つは数年から数十年に一度、新種の魔物が現れたり、情報の修正や付け加えたりするのでその時に新しく刷新さっしんするんですよ。だから古い方の奴はただの骨董品同然になってしまうんです」


「えっ、でも本って高価なモノじゃないんですか?」


「それは一昔前のことですよ。今はだいたい一冊二千~三千ノル、小銀貨二、三枚くらいです。昔は今より高い一冊数万ノル以上していたんですから」


 時代が古いと大体本が高いとか羊皮紙が高い、あとは数が少ないってイメージがあったけど、どうやら違ったようだ。

 だが日本円で二千や三千はまあまあ高いと思うけど、それでも今の時代にとっては安い方なんだろう。分からんけど。


「なるほど、ならその本いくらで譲ってもらえますか?」


「えっ、いえそれを差し上げますけど……?」


 何かおかしなことでも? と言わんばかりに聞き返してきた。

 俺、おかしなことを言っただろうか……?


「えーっと、ここは図書室なんですから置いておかないんですか? それに俺に渡す理由は無いじゃないですか?」


 至極疑問に思ったことを聞いてみた。たとえ古本だろうと本は本なんだから、置いておくべきじゃなかろうか。


「ああ、そういうことですか。同じ本は他にもあるんですよ。それに本、いえこの部屋の裁量権は私が持っているので大丈夫ですよ」


 何でも基本的に図書室に人は来ず、たまに来る人もふざけていたり探している本を見つけたらすぐに帰ってしまう人ばかりなんだとか。

 そのため、もう使わない古本でなおかつ必要としている人がいるのならその人に渡してもいいかな~、ということらしい。


「それは大変ありがたいですけど、本当に大丈夫なんですか?」


「ふふっ心配ご無用です。その代わり分かっていると思いますけど丁寧に扱ってくださいね」


「………ありがとうございます。ちゃんと大切に使わせていただきます」


 俺としてもタダでもらうには少しばかり心苦しいが、もらえるものはもらっておく主義だからな。

 いずれ何かでお返しをすればいいかと、潔くいただくことにした。


「じゃあもう帰りますね。それと俺の名前はユートです。これからもここに来るのでよろしくお願いします」


 また本を読みに来るだろうから、俺は名前を伝えた。それに親切にしてもらったら礼は欠くべきではないだろう。


「いえ、好きでやったんですから気にしないでください。

 それと私はこの部屋の管理をしている、フィロメア・メルバルディと申します。フィロメアとお呼びください」


「それじゃあ、フィロメアさんと呼ばせてもらいます。ではまた今度」


「!……ええ、さようなら」


 そう言ってユートは扉を開けて出て行った。


「ふふっ、『また今度』ですか……。珍しい人もいるものです」


 そう言いながらいつも無表情な彼女の顔には小さく笑みが浮かんでいたのだった。




──☆──★──☆── 




 やっと本を読み終わって一息つきたい所のユートはギルドの一階まで降りていた。


「うあぁー肩が凝ってるな~「あれ? ユートじゃねえか!」ん? ジャックの声?」


 名前を呼ばれた方へ顔を向けるとそこには予想通り、ジャックが一人で酒を飲みながら手を振っているので、そちらへ向かって行く。


「よお! どうしたんだこんなところで?」


「図書室で情報集めに本を読んでいたんだよ。そういうジャックは何でここにいるんだ?」


「俺か? 俺は仕事が終わったんで一杯やってるんだよ。そういえば昨日の事件で派手にやったそうじゃねえか! あっはっは!」 


 ジャックは口を大きく開けて大笑いして聞いてきた。

 昨日といえば、呪斧を持っていた男と広場で戦ったが俺はほとんど役に立ってないんだが……。


「何でそれを知ってるんだ? 昨日あの場所にいなかっただろう?」


「ああ、俺はいなかったがアルジェルフの奴に聞いたんだ。お前の活躍とオルガのこともそのときにな」


 なるほど……どうやら大体のことを知ってるらしい。それにしても昨日の今日なのに随分と気の抜けているやつだな。


「まあそんなことより、今日このあとはどうするんだ?」


「あ~特にすることが無くてな……飯食ってから考えようかと思っていたんだ」


「ふ~んそうなのか。じゃあ依頼クエストでも受ければいいんじゃないか?外に行く採取や討伐じゃなくても、お使いとか荷物運びとか掃除とか低ランク向けのやつが色々あるんだぞ」


「そうなのか……まあそれについても、とりあえず飯食ってからにするよ」


 そういうと同時に13時を告げるゴーンゴーンという鐘の音が町中に響いてくる。

 町の中、というよりは外壁の上に一つだけ付けられた大きな鐘が存在し、時間や外敵からの脅威などを知らせるために鳴らされる。異世界の時間は一日26時間なので、朝6時から夜10時の1時間ごとに計18回ほど鳴らされるそうだ。


「くくっそうだな。まず腹ごしらえが先だよな」


 にやにやした腹立たしい顔でジャックに言われたが、無視して近くにあった椅子に座る。都合よくチャイムが鳴るから、俺が腹が減っているように見られるんじゃないか。全く!


「おいおい、そんなむすっとした顔すんなよ。俺が悪かったって。ほら飲めよ!」


 へらへらしながら酒を渡そうとしてきたので押し返し、そばを通ったウェイトレスさんに沢山注文した。


「な、なあそれ誰が払うんだ……?」


 ジャックが焦りながら聞いてきたので、笑顔・・になりながら言ってやった。


「先輩! 今日はゴチになりまーす!」


「ちょっ! マジかよ! やめてくれーー!!」


 別に怒ってないけど腹いせに言ってみただけだったんだが、ジャックは予想以上に慌てていた。

 そんなこんなでジャックをいじりながら楽しく昼食を取ったのだった。

 ……ついでに代金は割り勘だったとここに記しておく。




 ジャックとの昼食を終えて別れた俺はギルドの依頼掲示板(クエストボード)の前に来ていた。

 と言ってもすぐ近くなんだけど。

 ここにはGからAランクの依頼が貼られてあり、難易度が上がっていくほどそれに合わせて危険度も上昇する。残念ながらGとFの依頼は子供でもできるレベルのモノばかりだ。

 その依頼クエストが書かれれている紙は一般的な植物製の紙ではなく、魔物の皮で作られた羊皮紙を使っている。これは粗暴な冒険者が力を入れてすぐに破ってしまわないようにという名残りだとか。

 さきほど読んだ本にそう書いてあった。

 そんな俺はまだ一度も依頼を受けたことが無いのでGとFのランクの依頼しか受けられないのだが、こう言ってはなんだが見事にショボいものばかりだ。

 子供のお世話や雑草抜き、配達、お使い、荷物運びなどなど大変そうなものから、こんなの自分でやれるだろ! というものまで沢山あった。

 とりあえずいつまでも悩んでいたらキリがないのでユートは荷物運びでもしようと決めて、紙を剥がし受付へと持っていく。

 

「あら、ユート君! 今日はどうしたの?」


 受付には紫色の髪が特徴のジャネットがいた。


「この依頼を受けたいんだけど……」


「うん、町中だしこれなら大丈夫かな。じゃあギルドカードを出してね」


 そう言われたのでよくわからないが、とりあえずカードを出して渡した。


「ああ、何で必要なのか疑問に思っているんでしょうけど、これは『この人がこの依頼を受けてますよ』というのをカードに記すためなのよ」


 なんでもカードに魔力を込めると、依頼数が書かれているところに一緒に書き加えられるらしい。

 これの利点は依頼者がこの人に依頼したというのが目に見えてわかることだ。つまり偽造は出来ず、安心と信頼が保たれるという訳だ。


「なるほど、本当に便利だな。それで依頼の場所はどこなんだ?」


「え~と、東地区の大工さんのところね。依頼者はボッグさん。簡易の地図をあげるからそれを見て行ってきてね。それとはい、ギルドカード」


 簡易の小さい地図と一緒に依頼書とギルドカードが返ってきた。


「他に何かあったかしら? ……そういえば依頼のことについてまだ説明して無かったわね。依頼の報酬金からは税金と仲介料として3割ほど引かれてあるの。その分安全性はちゃんとギルドが保障するわ。

 そして万が一依頼を失敗してしまったら、報酬の半分が違約金として支払わなければいけない。これを何度もしてしまうとランクにも響くから注意するのよ。

 それと最後に依頼が終わったら依頼書にサインして貰ってね。それじゃあ頑張って!」


「わかった。初依頼なんで気合いを入れて頑張ってくるとするよ」


 そう返事をしてユートはギルドから出て行くのであった。


現在の残高

135700-1000(割り勘代)=134700ノル

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