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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第一章 異世界適応篇

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14/105

第14話 異世界2日目


 色々あった昨日より時間が経過して、俺が起きたのは朝の8時頃だった。

 時刻を知らせる鐘の音が響き渡る。


「あー、もう朝だったのか……」


 やはり昨日はあんなことがあってしかも少し無茶をしすぎて疲れたのだろう。

 目を開けながらそう結論付けて、俺はうめきながらベッドから這い出てきた。


「体が……筋肉痛が半端ない……」


 さすがにただの一般人である俺が、森を彷徨い、町を歩き、初の人間との戦闘と色々ありすぎて体の節々が音を上げていた。


「とりあえずステータスでも見るか……」


 体が痛みながらもベッドに腰かけてステータスを開いた。



──────────────────


名前:霞野かすみの 優人ゆうと/ユート・ヘイズ

年齢:17

性別:♂

種族:人族

称号:異世界転移者・読書家・哲学者・一流キノコハンター

Lv:13 +12

HP:385/385  +120

MP:1255/1255 +124

筋力:185 +80

体力:201 +80

耐久:365 +80

敏捷:228 +80

魔力:200 +85

知力:370 +100


スキル

高速思考Lv4 +Lv1up

算術Lv5

速読術Lv2

採取Lv2 +Lv1up

魔力操作Lv4 +Lv2up

気力操作Lv1 

火魔法Lv1 

水魔法Lv1 

氷魔法Lv3 +Lv2up

光魔法Lv1 +Lv1up new

神聖魔法Lv2 +Lv2up new

空間魔法Lv1 +Lv1up new

瘴気耐性Lv1 +Lv1up new


ユニークスキル

鑑定Lv3

言語術


──────────────────



 おっと、意外とたくさんステータスが上がっている。

 嬉しいが、あの呪斧を壊したことでレベルが上がったのなら、ちょっとだけ複雑だ。

 ついでに名前が『ユート・ヘイズ』と記されているし、ステータスに認められたということなのかもしれない。

 しかし、12レベル上がったからHPとMPがプラス120なのだろうか。どういう基準で上がっているのか、いまいち分からないな……。まあ、いずれステータスに詳しい人に会ったらその時にでも聞いてみよう。

 そして【瘴気耐性】か。耐性と言うからには何かしら免疫のような働きをするのだろうが、あまりレベルが上がってほしくないスキルだな。こんなのに馴れたくないし。


 そんなことを一人で考え込んでいると、扉からノック音が聞こえてきた。


「ユート、起きているか?」


 この声はアルジェルフだ。


「ああ、ついさっき起きたところだ」


 そう言って、俺は扉を開けた。


「そうか、それならよかった。昨日は夜に訪れたんだが、眠ってしまっているようだったからな」


「すまないな。思っていたよりも疲れていたらしい。手伝いは出来なかった」


「ああ、それなら大丈夫だ。それより飯を食おう」


 そう言うとアルジェルフは踵を返して、下へと降りていく。それを俺もついていく形になった。

 下へ降りたらアマンダさんが声を掛けてきた。


「おはようさん! ユートは起きたようだね! それじゃどっかに座って飯を選びな!」


「ああ、おはようアマンダさん。朝はあまり食べないから、さっぱりしていて軽く食べられるもので」


「俺は今日の定食で」


「わかったよ! ちょっと待ってな」


 アマンダさんはそう言うとすぐに奥へと戻っていった。

 とりあえず近くにあった、イスへ腰かけるとアルジェルフに話しかけた。


「なあ、オルガはどうなったんだ?」


「ああ、ユートのおかげで3人とも快復へ向かっているようだ。それにみんなギルドで休ませてもらっている」


「そうか、教えてくれてありがとう。だが、オルガ達を助けられたのはアルジェルフ達のおかげだろ? それにもうあんな博打はしたくないものだしな」


「ははっ、そうだな。」


「それとさ、歯ブラシとかタオルってどこで売っているんだ? あと、風呂とかないのか?」


 昨日はそのまま寝てしまったので、風呂や歯磨きなど考えてなかったが、健全で綺麗が常識な世界から来た俺としてはちょっと思うところがあった。

 それに一日中家にいたのならまだしも、森や町、果ては戦闘と体が汚れるようなことを沢山したので、さすがに汚れを落としたかった。


「そういう日常的に使う雑貨類はギルド近くで買えるから後で行く時に買えば良いだろう。だが風呂は貴族や商人、金持ちではないと基本的には入らないぞ。というか入れないようなものだ。だから普通は水浴びするか、生活魔法をつかって済ますぞ」


「そうか、風呂がないのは残念だが、その生活魔法とはなんだ!?」


 カッ! と目を見開き、知りたいという感情が表に出るくらい、それくらい優人の顔にとてつもない好奇心があった。

 優人にとって魔法は不可能を可能にする力であり、地球にいたときは魔法が使えたら出来ないことは無いとさえ考えていたものだ。

 だからこそ、異世界での様々な知識というのは優人がいま一番欲するモノだった。それがなければただ力なく嘆くことしか出来ないのだから。


「あ、ああ、生活魔法とは少ない魔力で色々と役に立つ日常的に使える魔法の総称だ。例えば、【点火(イグニッション)】は火を灯す魔法だ。これがあれば簡単に薪に火を灯したり、料理に使えて節約にもなる。他にもユートが今欲しているだろう【洗浄(クリーン)】なんかがある」


 アルジェルフは俺が興奮したことに驚きながらも、実際に目の前で披露しながら生活魔法について色々と教えてくれた。点火や洗浄以外にも、【消音(サイレント)】【浄水ピュリファイウォーター】【囁き(ウィスパー)】【光明(ライト)】【穴作製ホールクリエイト】などがあり、生活に基づいた魔法というより、生きる世の中を豊かにする魔法だと思った。

 これ以外にもあるらしいので、前々から考えていたギルドに行ったときに本を読もうと思う。


「むむむっ、【洗浄(クリーン)】……こんな感じか?」


 元の世界の知識とイメージで活用して使ってみたところ、光が俺を包み体を洗われていく感じがするが、よくわからないのでアルジェルフに聞いてみた。

 

「……はぁ、魔法はちゃんと発動しているぞ」


 アルジェルフは驚き呆れたような感情がありありと顔に浮かんでいた。


「何でそんな顔してるんだよ? どこか悪かったのか?」


普通(・・)の魔法使いは一度説明を聞いただけで魔法を発動させることはできないんだ。いや、どこかにそんな天才がいるのかもしれないが、そんな奴ばかりだったらこの世界はあちこちに魔法使いで溢れているだろう? だからお前は非常識すぎる」


 アルジェルフが俺を非常識呼ばわりしてきたが、つまりそんな簡単に最初の魔法を発動することは難しいということだろう。

 だが地球という別世界の知識を有して、それをイメージで補える俺は発動自体はそう難しいことではないと思うのだが。

 そんなことは言えるわけもないので、とりあえず曖昧に場を濁してアマンダが持ってきた料理を食べるのに専念するのだった。




──☆──★──☆──




 アルジェルフの「お前は非常識だ」という居心地の悪い顔から逃げるために、そそくさと朝御飯を食べて逃げるようにギルドへ向かった。


「それでえーっと、雑貨屋はどこにあるんだ?」


 この空気を変えるためにギルドへ歩きながら、アルジェルフに聞いた。


「はぁ、すぐそこだからそこで買えば良い。……ここだ」


 思ったより近くにあったようだ。店の前に雑貨から冒険者が使うようなポーションのようなものまで様々なものが売っていた。

 そこで俺はこれからの冒険者生活のために、色々なものをついでに買った。


「う~ん、歯ブラシとタオルが10枚にポーションを5本ほど、それと全部入れられるバッグもください」


「あいよ。歯ブラシは小銅貨3枚、タオルが小銅貨5×10枚、ポーションが大銅貨5枚、バッグが大銅貨3枚の計小銀貨1枚と大銅貨3枚だ。小銅貨3枚はおまけだよ!」


 雑貨屋のおばちゃんが朝から元気よくそう言ってくれた。

 とりあえずお金を渡して、持ち物を普通のバッグに入れながら歩き出した。


「そういえば、アイテムバッグってどこに売っているんだ? 雑貨屋には無さそうだったけれど」


 ジャックが持っていたことを思い出して、そうアルジェルフに聞いた。


「アイテムバッグは結構な値段がするぞ? 今のお前じゃ買えるとは思えないが……とりあえず売っている場所は魔道具店か錬金術店、他には裏の非正規のモノだったりだな」


「ふーん、非正規とかあるんだな。具体的にどういうモノを指すんだ?」


「盗賊から得た戦利品だったり、落とし物だったり、盗品が巡りめぐってきたりと様々だな。裏といっても犯罪を犯している訳ではない。中には闇ギルドや暗殺者だったり、犯罪結社何かもあるが、そんなところに繋がることは滅多にないな」


 滅多にないと言うことは、稀にそういうことがあるということだろう。もし俺もそんなことがあったら気を付けようと心に刻んでおく。


「ま、まあ、今の俺は正規の商品で我慢しておくよ。それも面白そうだけど」


 俺は顔を真顔にしながら、自分にはまだ早いなと感じながらそんなことを口にした。


「それが賢明だろう。おっと、もうギルドについたようだ」


 アイテムバッグはギルドの帰りにでも寄ろうと頭の片隅で考えながら、ギルドの中へと入っていく。

 ギルドには朝なのでいくらか冒険者が並んでいた。俺達も受付に並んで数分ほど待っていると、マリーさんの受付だった。


「おはようございます! あっ! アルジェルフさんとユートさんですね! 昨日の件でお話がありますのでついてきてもらえますか?」


「わかった。アルジェルフはどうだ?」


「俺も大丈夫だ」

 

 そう言って俺達は大丈夫だと返事をした。マリーさんは昨日の件で俺達を待っていたようだ。

 て言うか俺の事バレてんじゃん……とか思って遠い目をしてしまった。隠すつもりは無かったがバレると面倒臭いのに。仕方なく俺は諦めてマリーさんについて行った。

 二階へ上がり奥へと歩いていくと、俺達は樫のような木材で作られた重厚な扉の前についた。着色は一切せず、一本の巨大な樹から削り出して作ったような無骨さでありながら、芸術的な気品さも感じられる不思議な感動を俺に与えた。

 マリーはそれを見て微笑みながら、いつも通りと言わんばかりに普通に扉をノックした。


「アルジェルフさんとユートさんをお連れしました」


 マリーがそう言うと、中から低い男の声がした。


「入ってくれ」


 そう返答されたマリーは重たそうな扉を簡単に開けて、俺達を中へと招く。


「失礼します」


「おう! ごくろうさん。それじゃあ、とりあえず二人とも座ってくれや」


 その男は警戒もせずそう言い放ち、自分はデスクトップの様なところで何かをしていた。

 中はあまり飾り物をしておらず、奥の壁に掛けられた剣と左右に大きな棚がある、私室とでも言うような部屋だった。


「えーっと、じゃあ失礼します」


「失礼する」


 俺はどうすればいいか迷いながらとりあえず座ると、アルジェルフも俺に続いた。

 座っているソファはふかふかで座り心地がいい、高級感のある革張りのソファだった。

 そんなことを思っているとマリーはお茶をテーブルの上に用意して、部屋から出ていった。

 それを見て机に向かっていた男は一段落したのか目の前のソファまできて座り、一息ついてから口を開いた。


「さて、呼び出して悪かったな。俺の名はゲオルグ・ルンドグレン。このダラムの町の冒険者ギルドマスターをしている。アルジェルフとユートだな? ギルドを代表して礼を言う。昨日は助かった! お前さん達のおかげで被害は少なく済んだ」


 ゲオルグと名乗ったこの男は口早にそう言った。せっかちな男なのだろう。俺達のことを知っていたようだが一応名乗ることにした。

 だがアルジェルフはまだしも何で俺の名前を知っているんだろうか?


「俺はユート・ヘイズだ」


「アルジェルフ・ブラッドリー。会えて光栄だ」


「おう。今日は報酬とちょっとばかし話をしたいからだ。ちなみに何で名前を知ってるのかというと、ディナードとそこにいるアルジェルフに聞いたからだぞ」 


 俺が思っていたことはゲオルグとやらには筒抜けのようだ。してやられたという気分になったが、よくよく考えたら当たり前かとも思った。一応、昨日の騒ぎの一人でもあるんだからな、俺は。


「ふぅ、さすがはギルドマスターだな。お見逸れしました」


 両手を上にあげる降参のポーズをしながら、それなりに本気で言った。


「がはは! これでもいろんな奴を見てきたからな。精進しろよルーキー! っとそれじゃあまず報酬の方からだ」


 そう言うとゲオルグは小袋を2つテーブルに置いた。 


「その中には大銀貨が10枚ずつ入ってる。小金貨だと使いづらいと思って大銀貨にしておいた。というのは建前で、たった1枚小金貨渡すだけじゃ見映えが悪いからな!」


 ゲオルグは笑いながら本音をぶちまけた。

 その心遣いに感謝しようと思ったが、思ったよりしょうもない理由だったので開きかけた口を閉じた。そして俺はゲオルグはこういう奴なんだと一つ学んだ。


「報酬内容は俺と共に被害を最小限に止め死傷者を出さず、なおかつ元凶である呪斧を壊し、斧男を捕らえたことだ。これは難易度ではBランクに匹敵するからこれでも少ないんだけどな。とりあえずお前さん達のおかげだ。誇れよ」


 ゲオルグは俺達のことを褒めてくれたが、多分本当は一人でも戦えたんだろう。ただ俺達が周りにいて戦闘に巻き込まないように力を制限していたんだ。それはそうだ、ギルドマスターの地位にまで登り詰めた男がそんなに弱いはずがない。アルジェルフの方がそれは分かっているはずだろう。

 だから俺は一言感謝の言葉を言って報酬を受け取った。それがゲオルグの望みだろうから。


「報酬の件はこれでしまいだ。次はあの呪斧についてだが……」


 ゲオルグは言いづらそうに悩んだ顔をした。


「あー、この話はお前達には聞く権利がある。無論厄介ごとだから聞きたくなければこれで話は終了だが……どうする?」


 厄介ごとのようだが、もう関わってしまったんだし知らないよりは知っていた方が対処がしやすい、という持論に基づき俺は聞くことにした。


「俺は聞いておくつもりだが……アルジェルフはどうだ?」


「俺も聞かせてもらう」


 アルジェルフは力強く頷いた。


「わかった。お前達に知っていることを伝えよう。まず、あの呪斧は造られたモノだ」


「造られたってそれが普通なんじゃないのか?」


「まあ、何も知らなきゃ普通はそう思うよな。何も知らんようだから言っておくが、呪剣や邪剣、魔剣と呼ばれるものはそのほとんどが人為らざる者によって創られたもんだ。それは魔族や悪魔、もしくは神と呼ばれる存在によって創られる。ちなみに魔族とは魔物の中でも高位の存在で、人型になることが出来る者の事を言うんだが――あの呪斧は弱すぎた」


「あれでも弱いのか? 俺は目にしたほとんどのもんが初めてだからよく分からんが……」


 少なくとも今の俺では、一対一では瞬殺されてしまうくらいの力の差が残念ながらある。


「まあ、ほとんど知られてないことだからな。あれは武具のランクで言うと最下級と言ったところだ」


「具体的にどれくらいランクがあるんだ?」


「上からSSSランクから~Gランクまで冒険者ランクと同様に設定されてるんだが、それに+と-合わせて30に分けられる。S以上は滅多にないほど貴重なものだから、もし手に入れても無闇に他人に見せない方が懸命だな」


 なるほど、この世界では品質が文字通り見て分かるのか、便利だな。

 だが、誰でも簡単に解ることではないはずだ。


「それは特殊なスキルか魔道具で見分けるのか?」


「……まあそういうことだ。俺にそんなスキルは持ち合わせていないが、ギルドには何人か『分析』というスキル持ちがいてな、そいつらに見てもらった結果わかったんだ。その結果は『F-ランクの呪斧』と出たらしい。そいつらが文句言っていたぞ、『こんなに砕けて分析が大変だった!』とな!」


 ゲオルグは大笑いしながらそう言った。こちとら命がけで戦ったのになんという言い草だ。

 まあ、俺も初めての戦闘で気がたかぶって、威力調整出来なかったんだろう。それは今後の課題だな。

 というか話が脱線しているような……。

 そんな空気を嗅ぎとったのかアルジェルフが咳払いすると、ゲオルグは居心地の悪そうな顔をしたが、真剣な顔に直し話を戻した。


「……話を元に戻すが、基本的に呪われたモノは普通でもDやEランクだと言われている。いわゆる、怨念とか憎悪なんて言う負の感情が籠った道具のことだな。つまり、あの呪斧は人工的に造られたと考えられる」


「人工的にだと!? そんなことが可能なのか!?」


 アルジェルフが驚いた声をあげた。確かに驚くがそんなにだろうか?


「よく分かっていないようだな。簡単に言えば、今まで不可能とされていたことが現実に起こったんだと言われれば理解できるか?」


「……確かにそれは凄まじくスゴいことだろうが、今まで誰もそれをしようとしなかったのか? ……呪われたモノを造るということを」


 人間というのは初めてや未知というのが大好きだからな。それが誰も成し遂げられなかった、呪われたモノの作成なんてことなら誰かが秘密裏に実験とかしていただろうしな。


「……恐ろしいくらい平然と言ってのけるな。最近の若いのは、想像力が柔軟なのか?」


「いや、ただ常識にとらわれないだけさ。だが否定しないということは、過去にあったんだな?」


「ああその通りだ。俺も今回の件で色々調べてみたところ過去に呪われたモノを造る実験が合ったらしい。だが結局、成功はせずにその研究は頓挫とんざしたそうだ。だから呪われた品を造ることは実質的に不可能だと思われていた。今までは、な」


 今までは、と注釈を入れるということは、これからはああいうのが出回る可能性があるということか。

 ――おそらく裏の犯罪組織あたりか。

 ゲオルグは全てを話してくれた訳ではないから、これ以上は部外者の俺達には言えない極秘事項なんだろう。


「それで誰によって造られたんだ? 人為らざるもの、とやらか?」


「残念ながらそいつはまだわかっていない。だが俺達人類と敵対したいやつがいることだけは確かだ」


「つまり、敵が誰かはわからない、と言うことか」


「あー、まあそういうことだ。だがお前たちは否が応にもこの件に関わっちまった。敵が見逃してくれりゃあいいが、もし牙を向けられたら待ってはくれんだろうからな。それまでに今よりも強くなっとけよ!」


 もしかしてゲオルグは俺達の心配をしていたんだろうか。

 なら期待は裏切らずに頑張るとしよう。


「わかった。あんたに心配されないくらい強くなってやるよ」


「ああ、いずれギルドマスターを越えて見せる」


「ははっ! そうか、それは楽しみに待っているとしよう。それと最後にユート」


「なんだ?」


「呪斧に攻撃したあの魔法。2属性をかけ合わせた魔法だな?」


「そうだが、それがどうしたんだ?」


「あれは氷魔法ではなかったのか!?」


 アルジェルフがまた驚いているが、あんな呪われたものをただの氷ではさすがに壊せないだろう……。

 そんなことを思ってしまった俺の顔は呆れていただろうか。


「お前が何を考えているか想像がつくが、むしろお前の方が非常識だからな」


「えっ、俺なのか?」


「あの土壇場で、しかもあんな緻密な魔力制御が出来る奴は魔法使いじゃない限り、そう多くはない。

 1属性だけならまだしも2属性の、しかも氷と神聖属性を組み合わして弾丸状にするのは見事だったが、あれを見たら腕の立つ奴にはお前ができる魔法使いだと確実にバレるぞ。

 それが嫌ならバレないように偽装するか、あまり使わない方がいいかもな。すごい魔法が使えたところで、今の低ランクのお前じゃ、上にいる奴等にとっては良いカモでしかない。自分の身を守るためにはそういう所にも気を使った方が良い」


 ……土壇場でなんとなくできるような気がしたのでやりました! とか言ったら絶対文句言われそうだな。

 まあ言わないけど。


「なるほど、そういうところにも気を使わなくちゃいけないわけね。目立つのは俺の好むところじゃないし、結構大事なことだからな。今分かってよかった。忠告感謝するよ」


 別にバレるのは構わないんだけど、面倒臭いのは異世界をもっと満喫してからがいいなー、というのが俺の本心だ。


「ふっ、お前はこの俺が期待しているからな。もちろんアルジェルフ、お前もだ。精進しろよ。そんじゃこれで話は終わりだ」


「有意義な話だったよ。それじゃまたな」


「ではまた」


 二人が挨拶して出ていくと、見計らったかのように眼鏡をかけた綺麗な女性が静かに二人が出た扉を開けて入ってきた。部屋にいる女性とゲオルグにとっては当たり前のことなのか、何の反応もなく話しだした。


「あそこまで情報を与えてよかったのですか?」


「ああ、あいつらはいずれ大きなことをしでかしそうだからな。今のうちに縁を持った方がいいと判断した」


 ゲオルグはいきなり話しかけられても、いつも通りだと言わんばかりに平然として答えた。


「それはまた……貴方が言うなんて余程の事なのでしょうね。またそれも貴方の直感ですか? 貴方がそんなに楽しそうにしているなんて」


「ああ、直感だ。それにユートの方は何をやらかすか想像がつかないから、なおのこと面白そうだ」


「まあ。ならば彼が道半ばで折れないことを祈るのみですね」


「あいつはそんな玉じゃないと思うがな」


 二人はいずれ来る運命にユートが引き寄せられることを想像して、話し続けるのだった。


──────────────────


名前:霞野かすみの 優人ゆうと/ユート・ヘイズ

年齢:17

性別:♂

種族:人族

称号:異世界転移者・読書家・哲学者・一流キノコハンター

Lv:13 +12

HP:385/385  +120

MP:1255/1255 +124

筋力:185 +80

体力:201 +80

耐久:365 +80

敏捷:228 +80

魔力:200 +85

知力:370 +100


スキル

高速思考Lv4 +Lv1up

算術Lv5

速読術Lv2

採取Lv2 +Lv1up

魔力操作Lv4 +Lv2up

気力操作Lv1 

火魔法Lv1 

水魔法Lv1 

氷魔法Lv3 +Lv2up

光魔法Lv1 +Lv1up new

神聖魔法Lv2 +Lv2up new

空間魔法Lv1 +Lv1up new

瘴気耐性Lv1 +Lv1up new


ユニークスキル

鑑定Lv3

言語術



──────────────────


 

現在の残高

37000-1300(雑貨代)+100000(報酬)=135700ノル



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