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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第一章 異世界適応篇

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第12話 レイグと武器


2017/3/22 一部改稿しました。

2017/7/4 一部修正と書き込みました。


「さてと、まだやることがいっぱいあるんだよなぁ~」


 そう俺が呟くように言うと、オルガが聞いてきた。


「あと、何をするんだ?」


「それはな、この木の板を返すのと、武器を買わなきゃいけないんだよ」


 木の板は衛兵のディナードさんに、武器はまだ外に行かないが一応念のためにと色々あるのだ。


「ああ、仮通行証と言うわけだな」


 俺の言葉にアルジェルフが返してきた。


「そういうことだ。武器も外に行くなら必要だろ? まあ、氷魔法で造れれば良いんだけどな」


「ユートは氷魔法で武器の造形が出来るのか!」


「まだまだ制御能力も精密さも素早さも全くと言っていいほど足りないけどな」


 というか一度も作ったことは無いけど、と内心で苦笑いしながらそう言った。

 アサルトボアを倒すときに使った槍は武器ではなく、一度きりの消耗品のようなものなので、本当の意味で武器を模倣して創った訳では無い。


「いや、それでも凄いことだぞ! 氷魔法は水魔法の上位互換と思われているからな。いない訳じゃないが、武器を造れるということはそれだけで一人前と言うわけだな」


「それに、ユートが言ったように氷魔法は武器としてだけでなく、遠距離から凍りつかせるなど対人、対魔物でも敵を選ばず使えて、使い勝手の良い魔法だからな」


「なら、二人とも使えるのか?」


 その言い方だと自分も使えるように聞こえたので、聞いてみた。


「使えるか使えないかと言われたら使えるが、戦闘でメインに使うようなレベルではないな。おまえのように専門として使うというより、日常や補助的に使うくらいだ」


「そうだな~、詠唱するのに時間がかかるから、あたしにとっては火魔法のほうが使い勝手が良いんだよ!」


「なるほど。不得手の場合は詠唱でカバーするのか」


 ジャックは無詠唱で発動した俺の氷魔法を、そんなに不思議そうに見なかったから、多分考えた通りなんだろう。


「そういうことさ! それじゃあオススメの武器屋にでも行こうかね!」


「二人とも時間があるなら、このままお願いするよ」


 と言って、またしても二人に道案内をしてもらう。




──☆──★──☆──





 カーン、カーンと鎚の叩く音が聞こえてくる。

 ここはさっきいた服飾屋から十五分ほど離れた位置に存在する。周りを見渡すと、レンガで出来た建物が多く見かけられた。


「なぁ、なんでこんなに離れているんだ?」


「それはな、ここにいる鍛冶師どもが叩く鎚の音が夜中だと響くから、街の端側に追いやられているんだ」


 何でも、夜中に鎚を振るっている音が騒々しいため街の人たちから苦情がきて、町の城壁側に鍛冶の専用エリアが出来たそうだ。

 それはそうだろう。夜中にカーン、カーンと音をたてられれば煩くて仕方がないからな。


 それと俺が入った門は南門であり、南西の方角にスラムや花街があり、北西の方角に貴族や豪商、金持ちが住んでいる貴族街のような場所がある。

 反対に南東の方には住人たちの民家や宿屋があり、北東の方には鍛冶師たちや冒険者ギルド、商業ギルドなんかもあったりするらしい。


 この町のように、四方に通じる門と区切られた街並みが一般的なこの世界のデフォルトだそうだ。

 中央の十字に伸びる大通りには俺も通った果物、野菜、雑貨に料理、酒場など様々な物を売買する商店があり、他にも喫茶店から服屋なんかもあるという。

 まだ見てないが、広場や教会なども存在しているとか。


 これらはさっき、オルガとちょくちょく合いの手を入れてきたアルジェルフが教えてくれた。

 ついでに俺が記憶が無いことも話した。(というかオルガに無理やり話させられたとも言う)

 ジャックに聞かされて気になっていたそうだ。


「なるほど、そういう風になっているんだな」


「そうだな、意外と上手く出来ているんだ。っと着いたぞ」


 そう言って、目の前のこじんまりした煉瓦造りの茶色い家を見る。耐火性には優れていそうだなと思ったが、よく見ると年季が入った後がある。

 結構古くからこの町に建てられたことが伺えた。


「ここか。まあ見た目でもう判断はしないが」


 そう言った俺は扉を開けて中に入った。

 

「すみませーん! お邪魔しまーす。ちょっと良いですか!」


「……」


 返事が無いので、適当に壁に飾られている武器を見る。本物の武器は重量感や威圧感が半端無い。

 でもそれだけじゃなく、鋭さの中に格好良さも感じる。


「残念ながら、居ないみたいだな。それにしても、そもそも俺は何を使えば良いんだろうか?」


「う~ん、ユートはどういった戦闘スタイルにするつもりなんだ?」


 オルガが俺に戦闘スタイルを聞いてくるが、戦ったことの無い俺に聞かれても……とりあえず俺の希望を言ってみる。


「そうだな〜……早く動いて、攻撃される前に斬る、みたいな?」


「そのスタイルだと短剣やレイピア、刀剣類だな」


「う~んサブウェポンとして短剣なら分かるけど、メインなら剣や刀が良いな」


(短剣で突きやちまちま削っていく自分というのはあまり想像がつかないので、剣や刀でバッサリしていくほうが性にあうと思うんだよなぁ。まあ、面倒くさがりな性格が武器の選択に影響している気もするが)


 とはいえ、刀なんて使ったことが無いからおそらく剣になるだろう。

 そんなことを考えていると、突然奥のカウンターから人が出てきて話し掛けられた。


「おい! お前みたいなガキが何しに来てんだ」


 俺を挑発しているのか目の前の爺さんはそんなことを言ってきた。

 初めてみるがもしかしてこいつが、「ドワーフ」という種族なのだろうか? ファンタジー小説に出てくるように確かに髭が生え、小人のように小さく、ずんぐりむっくりとしていた。

 でもその割りに筋肉が鎧のように纏われていて、歴戦の戦士の様な重厚さがあった。


「ここはあんたの店か? 俺は見た通り武器を買いに来たんだが」


 俺はこの爺さんの挑発に乗らずに、スルーして答えた。

 だが相手の口調に乗せられて、少しばかり素が出てしまっている。


「ふん! 一丁前に度胸だけはあるとみた。だが、腕は素人同然だな」


 値踏みするように俺を見ながらそのドワーフは素人だな、と断言してきた。

 見ただけで分かるという事はもしかしたら、本人も戦えるのかもしれない。


「やっぱりそのくらいは分かるのか。確かに俺は武器すら持ったことの無い素人だが、最初は誰でもそんなものだろう? 爺さん」


「誰が爺さんだ! 俺はまだ70だ!」


「ええ……その返しは返答に困る。なあ、ドワーフって寿命いくつなんだよ?」


 真後ろにいるオルガへ首を少し動かして、小さい声で話し掛けた。


「えっ! え~と……」


「確か、250くらいだな」


 ド忘れしていたオルガではなく、横にいたアルジェルフが覚えていたらしく俺に教えてくれた。


「つまり、人間で言うと30代くらいと言うことか。見た目じゃはっきり言って全然分からんな。おっさん」


 流れで本音がポロっと出てしまった。

 「おっさん」発言が気に障ったのか、目の前のドワーフは数秒目を丸くすると突然大声で笑いだした。


「あっはっはっ!! 小僧お前面白いな! この俺に向かってそんな口を聞く奴は久しぶりだ!」


「そ、そうか。それは分かったから、声の音量を少し下げてくれ!」


 いきなり大声で笑いだすから、近くにいた俺は堪ったものじゃない。耳がキーンとなってしまった。

 

「そんなことより、オルガにアルジェルフ! お前さんら面白いのを連れてきたな!」


「そうだろう! あたしもこいつの事が気に入ったのさ! だから、ここに連れてきたんだよ」


「オルガの鬱憤を晴らしてくれた本人だ」


「なるほど……道理で今日のオルガは良い顔をしている。昔はいつも不機嫌そうな顔だったのにな!」


 そのドワーフは少し考えるしぐさをすると、ユートに聞いた。


「おい小僧! 名はなんという!」


「俺の名前はユートだ! ふぅ、やっと耳が治った……」


 耳に手を当てながら、俺はそう答えた。


「そうか、俺の名はレイグ・ゴードンだ! 手を出してみろ」


 言われた俺は右手を上向きに差し出した。

 すると、レイグは俺の手を触りだして何かを調べているようだった。そして調べ終わったのか、顔を上げると俺にこう言った。


「ふむ、お前さんは面白い手をしているな」


「どういう意味だ?」


「お前さんは武器をまともに振ったことがないくせに、その素養が高いと見た。だが、高すぎるが故に武器をちゃんと決めなければ器用貧乏になるぞ」


「それは、ユートは武器を振るう才能はあるが、これと言って不得意な得物もないと言うことか?」


 ――つまり俺は何でも出来るようになるが、中途半端にとっかえひっかえしているとロクに育たないと言うことか。

 と言うか、俺にはそんなすごい才能があったのか。元の世界ではいち一般人だったはずなのに。

 こんなことなら、真面目にスポーツにでも打ち込んでおけばよかったな。しかもそんなことを手を触っただけでわかるおっさんもスゴすぎる。


「じゃあどうすれば良いんだ?」


「それはお前さんが決めることだ。武器一つを極めるのか、何でも使えるオールラウンダーになるのかだ。だが、『使える』と『使いこなす』は別物だぞ」


 なるほど。

 さてどうしたものかと考えてみるが、もうすでに決まっているんだよな。


「じゃあ俺は、器用貧乏になるから」


「えっ! もっと考えなくても良いのかユート!?」


「これからの人生が懸かっていると言っても過言ではないぞ。本当に大丈夫か?」


「がっはっはっ! 即答か! お前さん面白いな」


「三者三様のリアクションをありがとう。だが、別に適当に選んだ訳じゃないさ。ただ俺が考えている戦闘方法なら様々な武器は使えて損はないと思ったんだよ」


 そうなのだ。そもそも俺は氷魔法で様々な武器を創造することがおそらく可能なのだ。だから一つだけ武器を選ぶ必要なんてないんだ。

 相手に合わせて武器を変えるもよし、好きな武器を使うもよしなのだ。それに使ってみたい武器もあるし、戦闘場面によって変えた方が良いことは、これから先必ずあるはずだ。

 打撃に斬撃、刺突と七変化するような動きは敵としては相当厄介なモノだろうしな。もちろん、使いこなせればの話だが。

 ついでに異世界に来たからには色々体験したいのが男心というものだ。


「そうか、ちゃんと考えているなら良いが、無理なら一つの武器に絞って訓練することも大事だからな!」


 オルガが先輩冒険者として、俺に助言をしてくれたので有り難く受け取っておく。


「それでお前さんは何の武器を使うんだ?」


「それはな、打撃、斬撃、刺突と色々できる武器が良いと思うんだよ」


「なるほどな、相手によって変えるんだな。なら、短剣、槍、メイス、弓、刀か剣は候補に入れるのか?」


 そう言うと、レイグは今言った武器を取り出してカウンターに載せた。


「そうだな、短剣は投擲にも使えそうだし有りとして、槍は難しいんじゃないか?」


「いや、槍は間合いが取れるから、むしろ素人にはちょうど良い武器だぞ。悪いことは言わないから、入れておけ」


「あんたがそう言うなら、入れておくよ。メイスは使い勝手は良いのか?」


「ふむ、人によりけりだな。オルガの様なタイプなら嬉々として手に取るが、お前さんはもっと遠距離から攻撃する方が好きそうだしな」


「まあ、それは否定しないが。と言うか、大前提としてこんなに沢山も武器は持てないな……」


「なんだ、そういえばお前さんアイテムバッグは持ってなかったのか? なら、空間魔法とか収納魔道具はないのか?」


「空間魔法っていうのがあるのか」


「その名の通り空間を操る魔法だ。魔法使いでも、後天的に得られる者はそう数はいないと言う。あたしも見たことは無いんだけどな!」


 収納魔道具について聞いてみると、稀にダンジョンなんかで得られることがあるそうだ。そういうものを『天然物』と言い、魔法効果が大変優秀だが、その代わりとても高価で一般人には買えるような額ではないらしい。

 それに色々な形で存在しているようで、分かりやすい袋から、バッグ、箱、指輪、腕輪、鍵、ネックレスと多種多様にあるそうだ。面白いものでベルトや靴下、帽子なんかもあると言う。

 それ以外にも、錬金術師や魔道具職人と呼ばれる者などが作成する物で、天然物に比べて効果が落ちるが『模造品』と呼ばれて存在しているという。ジャックが持ってたアイテムバッグもここに該当するようだ。

 

「ふ~ん、それでどういう魔法なんだ?」


 一応聞いてみる。ゲームやライトノベルと同じような魔法なのか、それとももっとファンタジー感あふれる魔法なのか。


「よく知られている魔法は、『空間収納(アイテムボックス)』『空間壁』『空間転移』だな。特に空間収納と空間転移は有名だな。一昔前の魔法使いなら、誰でも使えたと言う伝説があるくらいだ。本当かどうか分からないけど。つまり、空間に魔力で作用させるとか何とか……ってことだな!」


 とオルガが教えてくれた。最後の方はよく分からなかったのでおざなりになったんだろう。

 と言うか、アイテムボックスって名称は異世界人が言ったのが伝わって残っているのだろうか。そうでなければ、ライトノベルと全く同じ名称の名前が残っているというのは、偶然の一致では到底考えられない。

 もしくは、この魔法世界の人間が元の世界に転移してきて、魔法を伝えたという可能性もあり得るかもしれない。

 机上の空論の域を出ていないので、証明するのは難しそうだ。


 その内、ちゃんと魔法に関する本を読まなければ。

 それとおおまかにだがイメージは掴めたので、好奇心の赴くまま早速試してみることにした。


「――――うーん、こんな感じかな」


 魔力を体から肩を通り、掌から放出する。

 そして目の前に透明の壁があり、魔力を使いながら捻るように螺旋を描いて穴を開けていくイメージを想像する。


 すると、目の前の空間に渦を巻いたような黒い(あな)が出現した。

 やっぱり、何でも試してみることだな。イメージとは少しばかり違ったけれど。


「お、お前、そんな簡単にっ……! どうやってやったんだ!?」


「そんなに難しく考えなかっただけさ。ただ穴を開けるようにイメージをしてみただけだからな。

 それに魔法はイメージ次第で大抵のことは何でも出来るだろ? ほら、詠唱とか関係なく魔法が出来るなら、イメージさえしっかりすればたぶん子供でも発動できると思うし」


「普通は何ヶ月も掛けて魔法とイメージの練習をするものだ。お前は普通の常識では測れないな……」


「ははっ! 普通はそんな簡単にできる方がおかしいけどな! まあ、先入観を持ってないお前だから出来たんだろうがな。あと、今度からは部屋ん中で勝手に怪しい魔法使おうとすんなよ。壊したらぶん殴るからな」


 オルガは驚きながら、アルジェルフは冷静に考察し、レイグは面白そうな目で笑っていた。

 でもレイグの最後のセリフには、本音が混じっていたのに気づいたので、壊さないように気を付けようと思う。




──☆──★──☆──




「それで、持ち運びは出来るようになったし、結局何を使うんだ?」


 実際に鉄くずを入れて、再度開いた時に取り出せることを確認した後、レイグがニヤリと笑いながら俺に問いかけてきた。

 最初の印象より柔らかくなったのは間違いないだろうが、何が琴線に触れたのかは俺には分からない。


「そうだな、とりあえず短剣と槍は決定だ。後はメイスと弓、剣もしくは刀だな」


「そうか……ならこの際、槍を斧槍(ハルバード)にしてみたら良いんじゃないか? 刺突、斬撃、打撃の全てが揃っているからな。まあ、お前さんが使えるかは抜きにしてな」


「それ面白そうだな! とりあえずハルバードを使ってみて、合わなかったら槍に戻すとして、弓も一張(ひとはり)頼む」


「わかった。じゃあ最後に剣か刀だな。どっちにするんだ?」


「あたしは剣の方が良いと思うぞ、ユート!」


「そうだな、ずっと使うわけではないなら剣が良いんじゃないか?」


 二人がそう言って助言してくれた。日本人たるものちょっとばかし刀を使ってみたい気もしたが、金が増えたり能力が上がったら、いずれ刀を造ってもらえば良いか。

 そう俺は結論付けて、レイグに頼んだ。


「じゃあ、おっちゃん! 今はまだ素人だから、剣の方で頼むよ」


「あいよ。じゃあ優先的に剣を造ってみるが、どんな剣がいいんだ?」


「一般的な長剣で」


 特に悩むことはなくそう言った。無駄に変わっているものを選んでも仕方がない。


「全部で短剣、斧槍、弓に長剣だな!長剣と短剣は3日もあればすぐに出来るぞ。それまで代わりの武器でも持っていくか?」


「いや、新しい服も丁度3日かかるから、その間は街の中でできる簡単な依頼とか魔法の練習したり、情報を集めしておくから大丈夫」


 俺はレイグにそう言った。


「そうか、それまでに俺がお前にはもったいねぇくらいの武器を造ってやるよ!」


「大丈夫だよ。いずれあんたの武器じゃ物足りないって言えるくらい強くなるからさ! それで幾らだ?」


 俺は笑いながらレイグにそう言ってやった。


「ははっ、言いやがったな小僧! 楽しみにしてるぜ! そうだな、合計10万ノルってところか。小金貨1枚の方が分かりやすいか?」


「いや、どちらも分かるぞ。はい、小金貨1枚な」


 俺は迷わず渡した。キノコとか薬草を採取していて良かったと思った。


「……こう言うのは人によるが、前金として半分の額を渡すものだぞ」


「いいよ、あんたなら信用できるしな。それに、もし裏切られたなら俺の見る目がなかったってだけの話だ」


「お前……」


「じゃあ行くわ」


 レイグはポカンとした顔をしたが、さぞ面白いと言わんばかりに笑って答えた。


「上等だ! 楽しみにしておけよ!」


 俺は笑いながら手を振ってレイグの店を出るのであった。




──☆──★──☆──




 仮通行証を返すためにこの町の入り口に向かう途中、オルガが突然話し掛けてきた。


「そういえば、ユートは何か勘違いをしているかもしれないがレイグさんが打った武器は高々10万ノルじゃ買えないぞ」


「ん? どういう意味だ?」


 よくわからなかった俺は聞き返した。


「つまりだ、ユート。レイグさんの打った武器はこの町では最高品質の武器と言っても過言じゃない。なのにお前は4つも武器を買いながらたった(・・・)10万ノルという価格で買えたと言うことだ。これがどれだけ凄いことか分かるか?」


 アルジェルフが珍しく興奮したように説明してくれた。つまり、レイグは俺にどうしてか安く武器を売ってくれたという訳だ。


「なんで安く買えたんだ?」


 するとオルガが呆れたような顔をしながら答えた。


「そんなのお前に期待しているからに決まっているだろう。あの人はこの町の鍛冶師のトップにいるんだからな。そんな人にお前は気に入られたというわけだ」


 なるほど、いつの間にかレイグに気に入られた様だ。なら、おっちゃんの期待は裏切らないようにしなければな。自分の造ったモノを安く買わせてもらったんだし、期待に答えるとしよう。

 そしていずれ、金は倍に返してやるか。負けた気がするからな! ふふっ、その時が楽しみだな。


現在の残高

137000-100000=37000ノル


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