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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第四章 迷宮都市中編

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第104話 VS.アッシュ

長くなったので二話に分割します。


「――――答えろッ!! どうしてお前が、アイツと同じ剣を持っているんだッ!!?」


 アッシュは突然豹変すると、剣をこちらに向けてきた。


「ちょっと、いきなりどうしたんですか? そもそもアイツっていうのは?」


「黙れッ! さっさと質問に答えろ!! その剣は何なんだ!? 何故お前が持っている!?」


 どうやら極度の興奮状態に陥っており、これ以上の会話は難しそうだ。

 それに、この【指斬】を何かの剣と勘違いしているらしい。

 アッシュの反応を見るに、おそらく“アイツ”というのは復讐相手の事だろうと想像がつく。

 だとすれば、さしずめこの剣は仇が持っていた凶器に似ている、といったところか。

 ならば、アッシュに見せてしまったのは、少々軽率な行動だったかもしれない。

 いや、流石にこれは予測できないか。


 しかし、少しでも変な動きを見せたら、アッシュを刺激してしまう。

 どうするべきか……。

 そこで俺は思案してから、ゆっくりな動作でアッシュに向けて剣を投げ渡した。

 アッシュは一瞬、警戒する動きを見せたものの、そのまま足元に滑った剣を注視した


「少し落ち着け、アッシュ。それは数日前のオークションで手に入れた武器だ。その剣がアンタが知っている剣と同じ物なのか、しっかりと見比べてみろ」


 俺はその場に胡坐をかき、動かない事を態度で示した。

 アッシュは足元に転がる剣を親の仇でも見るような目で睨む。


「……これは何だ?」


「何だ、というのはどういう意味だ?」


「こんな……こんな剣が! 幾つもこの世にある訳が無い!! 答えろ! この不気味な剣は何なんだ!?」


 アッシュは一目見て、【指斬】が普通の剣ではないと見破った様だ。

 とはいえ、成り立ちからして呪具の説明を素直に受け入れられるかどうかは分からない。

 だから俺は、もしもの時は諦めようと思い、呪具について説明に入った。


「……それは、呪われた武器。いわゆる呪具と呼ばれるものだ」


「呪具だとッ!? どうしてお前がそんなものを持っている! いや、どうしてお前が使えるんだ!?」


「そんな事は知らん。ただ俺にも事情があって、色々……復讐代行みたいなことをしているだけだ」


「復讐代行……?」


 自分で言ってて、なんだかおかしくなり笑みをこぼす。

 【宵闇のコート】に宿るオボロと【指斬】の願い。

 復讐代行という言葉が咄嗟に出て来たが、あながち間違ってもいないのが何とも皮肉だ。


「知ってるかどうかは知らないが、呪具の来歴は人間の――いや、生物の怨念を根源として生まれてくる。強い恨み、消えぬ憎悪、抑えられない怒り……いわゆる負の感情が凝縮した結晶だ。俺はそんな呪具と“契約”と言うのをしてるらしくてな。恨みを晴らす代わりに力を貸してもらうような相互的な関係らしい。まあ、契約するにも適性とか運とか、色々と複雑な条件なんてのがあるみたいだから詳しくは知らない」


「……その言葉に偽りはないと、俺にどう証明する?」


「おいおい……アンタに嘘ついたところで俺に何のメリットがある? それに嘘だろうが真実だろうが、アンタが見たもの、聞いたものを自分で判断すればいい。そもそもどう証明しろと?」


「口答えするなッ! これが呪具だと言う事と、そしてお前が俺の敵ではない事をどう証明するというんだ!?」


 剣を向けて威嚇するように脅しをかける。

 ユートはそんなアッシュを眺めながら、嘆息する。

 今のアッシュに何を言っても無駄なようだ。

 呪具の証明ならまだしも、俺が敵ではない事を俺一人で証明するのは難しい。

 おそらく、それを理解できる理性が今のアッシュの頭から抜け落ちているのだろう。

 想像しか出来ないが、目の前にかたきについての情報――いや、仇と関係があり得る者がいたら、視野が狭くなり、理性よりも感情で動いてしまうものなのかもしれない。

 アッシュの状況をそう推察したからこそ、誤解を解くために思考を巡らす。


「……呪具の証明なら、おそらくこの場で出来る。だが、俺が敵ではない事は、状況証拠しか出せない」


「それは何だ。言ってみろ」


「俺はあるスキルを持っている。そのスキルを使えばアイテムの詳細な情報を見抜くことが出来る」


「……ほう、お前に情報系スキルがあると? 確かに、お前の性格なら本当に持っているのかもしれないが、俄かには信じ難い」


 情報系スキルとは、外界から情報を取得するのに役立つスキルの総称だ。

 いわゆる【夜目】や【遠目】、【鑑定】などの視覚系、【隠密】、【気配察知】などの五感による情報を得るスキルのことだ。

 情報系スキルを持つ者は総じて知力の項目が高い傾向にあるとは書かれていたが、「俺の性格なら」っていうのはどういう意味だ。


「じゃあ、実際に目の前でやってみせればいい。何か自分しか知らないアイテムは無いか?」


「……よほど、自信があるようだな。いいだろう。なら、オレの剣を“視て”、どんな付与を施したのか、そして付与した者の名前を言い当ててみろ」


 そうして俺は、アッシュに興味を引かせることに成功した。


「――じゃあ、やってみよう。剣を俺に見えるように翳してくれ」


 アッシュは俺に向けていた剣を見えるように前に出す。

 俺は立ち上がるとすぐさま鑑定を使う。


「【鑑定】」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アッシュの魔法剣(三重付与トリプル・チャント

復讐者アッシュが長年使いこんだ剣に、付与術師エンチャンターアールヴァルト(偽名:アルヴ)が【切れ味増加(シャープネスエッジ)】と【鋭刃化スライシング】、【状態保持】の三つの永続付与を施した。そのため剣は切れ味が鋭くなり、錆びにくく汚れにくいという性質が付与されてある。剣が五割以上の体積を欠損した場合、付与魔法は効果を失う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「――付与した魔法は【切れ味増加(シャープネスエッジ)】、【鋭刃化スライシング】、【状態保持】の三つだ。付与術師はどうやら偽名を名乗っているらしく、アルヴという名のようだが……どうだ、あっていたか?」


「……ああ、どうやら本当らしいな。それもユニークスキルである【鑑定】とは驚かせてくれる。だが、それでどうやってコレ(・・)が呪具であると証明する?」


 アッシュが嫌悪感を隠さずに【指斬】を指し示す。


「同じように【鑑定】で出た情報を教えればいいだろう?」


「馬鹿がッ! オマエしか見れない情報を信じられるとでも? お前の口から出た言葉なら、どんな剣だって聖剣や魔剣を名乗れるってのか!?」


 皮肉交じりの言葉が苛立ちを誘う。

 だんだんとアッシュの口が悪くなってきている。


「……証明しろと言っておいて、俺の言葉を信じられないと言う。ならどうしたらアンタは信じられるというんだ? このままではいつまでも終わりは来ないぞ?」


「そうだな……簡単な事だ。お前が俺に、敵ではないと証明すればいい」


 ニヤリと気色の悪い笑みを浮かべるアッシュ。

 およそ正気ではなさそうな表情をしている。


「証明も何も、俺がこの街に来たのはほんの一月前だぞ? アンタがこの街を離れてる間に初めて迷宮都市に来たし、初めてダンジョンに潜った。なんならギルドに問い合わせればいい。俺は数か月前に冒険者になったばかりだから、アンタの仲間を殺すことは事実上、不可能だ」


「グダグダうるせえ! オマエは黙って俺の言う事を聞いていろ!!」


 口角泡を飛ばすようにアッシュが言い立てる。

 気色の悪い笑みを浮かべたり、怒ったり感情が忙しない。

 ユートは何かが起きている事を確信して、不快感を隠さずに顔に出した。


「おい、そろそろいい加減にしろよ」


「何だと!? 大体、さっきから聞いてりゃなんなんだ、そのなめた態度は!! 馬鹿にしてんのか!?」


「それはこっちのセリフだよ。さっさとこの茶番を終わらせてくれないか? もう飽きたんだが」


「ちゃ、茶番だとォッ! クソクソクソォッ!!」


 アッシュは頭を掻きむしる。

 やはり、先程から何やら様子がおかしい。

 まるで何かに駆り立てられているかのようにちぐはぐだ。

 言動と行動も支離滅裂で、最初に会ったアッシュからは一本芯のようなものが感じられたのに、今は別人のようだ。

 ――もう少し刺激してみるか。


「そりゃそうだろ? まさか本気で俺が殺したとでも思っているのか?」


「だったら証明して見せろッ! お前が敵ではない事を!」


「ハッ! 証明? 馬鹿の一つ覚えみたいに言いやがって。俺のレベルがいま幾つか教えてやろうか? ――三十二だ」


「なっ!?」


「アッシュ、お前のレベルは五十八か……馬鹿そうに見えて意外と高いんだな?」


「どうして、それをお前が……!?」


「さっき丁寧に教えてやっただろ? もう忘れたのか? 俺のスキルの事を」


「馬鹿な……【鑑定】に相手のステータスを見る能力なんてある訳が……!」


 アッシュが何やら小さく声で呟いた。

 気になったものの、今は何事も無かったかのように話を進めよう。


「そんなことより、俺のレベルは分かっただろう? それでもまだ俺がやったと言いたいのか?」


「……まだ、敵ではないと証明されてない」


 アッシュは頭を押さえつつ、懊悩おうのうしながらそう言った。

 憎悪と理性の狭間で揺れているといった感じだ。


(あと一押しで決壊しそうだな。――この際全部ぶっ壊すか)


「……ああ、そうかそうか。ならお前はこう言いたいんだな?

 ――ボクたちはレベル三十二に殺されるほど無能で弱い、負け犬の集団です、と」


 皮肉気に口を歪めながら言葉にした瞬間、ピキリと空気が変わる。

 先ほどまでのアッシュの纏う雰囲気が変化した。


「……おい、今なんつった?」


「俺に二度も言わせるつもりか? ――そんなんだから仲間を一人も守れねえんだろ? この死にぞこないが!」


「てめぇ……生きてここを出られると思うなよ」


「ハッ、最初から逃がすつもりもない癖に大口叩くな、負け犬風情が」


 ユートはここぞとばかりに挑発する。

 間違いなく、アッシュは怒っているだろう。

 それが良いか悪いかは今はまだ分からないが、事態が変動したことは確かだった。

 ついでに好き放題に言わせていた分、先程までの鬱憤を晴らすようにぶちまける。

 アッシュが睨みつけてきた殺意マシマシの目を見て、ゾクゾクとしたモノを感じながら、正解の筋道を探す。


(そもそもアッシュに何があったんだ? 呪具が引き金になったんだろうが、原因は他にあるはず――)


「よそ見してんじゃねえぞ!」


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