表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第一章 異世界適応篇
1/105

第1話 プロローグ

初めまして。

はじめてなので至らないところがあると思いますが、喜んでいただけるよう精進しますので、どうぞよろしくお願い致します。


それでは、どうぞ。


*2017/3/22 一部誤字を修正しました。

 ああ、つまらない――。


 この縛られた社会、代わり映えのない世界、そして変化なき日常が。


 世界も、社会も、情勢も、人も、家族も、自分でさえも。


 気付かぬ内に変わっていっているというのに。


 それを認められずに、空しさを抱えている自分が。


 なによりもつまらないと気付いてしまった事が――。


 変わらないものなどないのに、人は気付かない、気付けない。


 本当の意味で理解するのは全てが変わった後なのだから………。




──☆──★──☆──




 それは、冬から春へと変わっていく少し肌寒い季節の時だった。

 キーンコーンという授業の終わりを知らせる電子情報に変換された鐘の音が響き渡る。


「起立! 気をつけ! ありがとーございました!」


 チャイムが鳴り、礼が終わるとガタガタと物音をたてながら、クラスメイト達は三々五々に教室から出ていく。


「はぁー、今日も疲れたな~」


 六時限目の授業が終わり、背伸びしながら机の上の物を片付けていると、優人ゆうとの横に影が射した。


「なぁ~、優人! 今日一緒に帰ろうぜ!」


「ふぅ、またお前か悠星ゆうせい……隣のクラスだって言うのに暇だな。一人で帰れよ」


「うわっ、ひっでぇなお前は!まあ、お前も本当にいつも通りだな」


 話しかけてきたこいつの名前は植木悠星(うえきゆうせい)。中学から今の高校へと一緒に進学したちょっとした腐れ縁というものだ。

 見た目は特に何の変哲もない男だがいつの間にか彼女がいたり、アニメやゲーム、ラノベに小説、そしてたまに出てくる幅広かったり浅かったりと中途半端な謎な知識を持っている、自他共に認める変人だ。

 そのくせ成績も良かったりと、本当にムカつくやつなのだ!

 嫉妬では断じてない。


「余計なお世話だよ。俺は無駄なエネルギーは使わない主義だからな」


「はいはい、どこかで聞いたような省エネ主義、乙。それでどうなんだ?」


 こいつめ……と睨みつけるが飄々と流される。

 それに、一生懸命頑張ったって何か賞が貰えるわけでも無いのだから、全力を出すだけ無駄だ。


「チッ! まあ、いいけど」


「ははっ! あっ、そういえば今朝のニュース見たか! 何でも東京に近海で謎の島が現れた(・・・)ってニュースでやってたよな!」


「ああ、あのニュースな。何でいきなり見つかったのか、よくわからんが」


 そう、それは昨日の深夜0時になる頃、そろそろ寝ようと思っていた時に突然大きな地震が起きた。

 そしてそれと同時期に東京近くの太平洋上に、突如としてその謎の島が海から現れたらしい。

 何でもその島は「遥か昔の神話の舞台なのでは?」とか、「現代のアトランティス」や「神の審判」などと、色々な噂がネット上で広まっているが定かではない。

 今朝見たニュースでは(さいわ)い死者こそいなかったものの、内陸部の木造建築なんかは半壊はんかいしたり、軽傷者が数十人出るほどの大きさの地震だった。


「そうだよな、ちょっとワクワクしてきたぜ!」


「何でお前がワクワクしてんだよ」


「えー!お前なら分かってくれると思ったのにー」


「まあ、ちょっぴり面白そうとは、思ったけどな」


「さっすが! やっぱり俺が見込んだだけはあるぜ!」


「それはいいけど、そんなことよりもうすぐ担任来るぞ、自分の教室に帰った方がいいんじゃないか?」


「おっと、もうこんな時間か。じゃあこの話はまた後でな」


「はいはい、わかった。また後でな」


 ガラガラガラという学校特有の開閉音を響かせて、あいつは出ていった。


(はぁ~、まったく……騒がしいやつだな。まあ、あいつはずっと前から変わらんか)


 少しした後、手に書類を持った担任がやってきた。


「あー、遅くなったな。まずは手紙とそれから三点話すことがある。一つ目は――」




 HRホームルームが終わり、悠星の奴と一緒に帰っているとき。


「そういえばさ、俺とお前が初めて会ったのいつだっけか?」


「いきなりどうしたんだ、お前?」


 悠星が神妙な顔をしながら訊ねてきた。


「いやさ、どうしてお前と話すようになったんだっけなーと思ってさ」


「あぁ~……確か中学の時にバカやったせいで、授業中なのに職員室の前で二時間以上も立たされて、二人で喋っていたらいつの間にかこんな風に話すようになったんだろ」


 そうして、思い出すように過去を振り返る。


「あー、そうそうあれな! いや~あれは、事故だったんだけどな……。懐かしいな~あんときは!」


「あれから話したり、遊んだりして、今ではこんな状態だけどな」


「そうだな……まったく、あの時は今みたいに同じ高校に通って話しているとは想像なんかしてなかったよな」


 本当に俺もそう思う。

 こいつとこんな風に話して帰っているなんて誰が想像なんかしていただろうか。


「そうだな……それで何でそんなことをいきなり聞いてきたんだ?」


「いや、特に何と言うことはないけど、やっぱり未来なんかわかんねーもんだなーと」


「ふーん、全く変わらないな、お前は」


 そう言って優人は苦笑する。


「そうか? いや、そう、なのかな……」


「ああ、そうだぜ。お前の変なところであり、お前の特徴であり、お前の長所なのかもな」


「くく、お前……かっこつけてるつもりか?だとしたらダサいぞ!」


「お前に言われたくねーよ!!」


 ははっ! と二人して笑い合いながら帰り道を歩いていった。




──☆──★──☆──




 家についた俺は、手を洗い、服を着替えてからベッドに寝転んで考えていた。


(ふぅ、全くいつもと変わらぬ「日常」か。

それも悪くはないんだろうが、やっぱり飽きたな……。

退屈なこの世界じゃあ、やっぱり俺は生まれた世界を間違えたのか?

枠にはまったこの社会は、俺のようないびつな人間には生きずらい……。

あぁ~あ、何か面白いことでも起きないかな……。

はぁ、ダメだな。これじゃあ、全くいつもと変わらないか……。

ちょっと疲れたし少し休むか。母さんが帰って来るまでまだあるし、少しだけ眠ろう)



 重いまぶたに逆らえずに優人は眠りへと落ちていく。

 これから待ち受ける運命にどうなるかなど想像もできずに……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ