第1話 プロローグ
初めまして。
はじめてなので至らないところがあると思いますが、喜んでいただけるよう精進しますので、どうぞよろしくお願い致します。
それでは、どうぞ。
*2017/3/22 一部誤字を修正しました。
ああ、つまらない――。
この縛られた社会、代わり映えのない世界、そして変化なき日常が。
世界も、社会も、情勢も、人も、家族も、自分でさえも。
気付かぬ内に変わっていっているというのに。
それを認められずに、空しさを抱えている自分が。
なによりもつまらないと気付いてしまった事が――。
変わらないものなどないのに、人は気付かない、気付けない。
本当の意味で理解するのは全てが変わった後なのだから………。
──☆──★──☆──
それは、冬から春へと変わっていく少し肌寒い季節の時だった。
キーンコーンという授業の終わりを知らせる電子情報に変換された鐘の音が響き渡る。
「起立! 気をつけ! ありがとーございました!」
チャイムが鳴り、礼が終わるとガタガタと物音をたてながら、クラスメイト達は三々五々に教室から出ていく。
「はぁー、今日も疲れたな~」
六時限目の授業が終わり、背伸びしながら机の上の物を片付けていると、優人の横に影が射した。
「なぁ~、優人! 今日一緒に帰ろうぜ!」
「ふぅ、またお前か悠星……隣のクラスだって言うのに暇だな。一人で帰れよ」
「うわっ、ひっでぇなお前は!まあ、お前も本当にいつも通りだな」
話しかけてきたこいつの名前は植木悠星。中学から今の高校へと一緒に進学したちょっとした腐れ縁というものだ。
見た目は特に何の変哲もない男だがいつの間にか彼女がいたり、アニメやゲーム、ラノベに小説、そしてたまに出てくる幅広かったり浅かったりと中途半端な謎な知識を持っている、自他共に認める変人だ。
そのくせ成績も良かったりと、本当にムカつくやつなのだ!
嫉妬では断じてない。
「余計なお世話だよ。俺は無駄なエネルギーは使わない主義だからな」
「はいはい、どこかで聞いたような省エネ主義、乙。それでどうなんだ?」
こいつめ……と睨みつけるが飄々と流される。
それに、一生懸命頑張ったって何か賞が貰えるわけでも無いのだから、全力を出すだけ無駄だ。
「チッ! まあ、いいけど」
「ははっ! あっ、そういえば今朝のニュース見たか! 何でも東京に近海で謎の島が現れたってニュースでやってたよな!」
「ああ、あのニュースな。何でいきなり見つかったのか、よくわからんが」
そう、それは昨日の深夜0時になる頃、そろそろ寝ようと思っていた時に突然大きな地震が起きた。
そしてそれと同時期に東京近くの太平洋上に、突如としてその謎の島が海から現れたらしい。
何でもその島は「遥か昔の神話の舞台なのでは?」とか、「現代のアトランティス」や「神の審判」などと、色々な噂がネット上で広まっているが定かではない。
今朝見たニュースでは幸い死者こそいなかったものの、内陸部の木造建築なんかは半壊したり、軽傷者が数十人出るほどの大きさの地震だった。
「そうだよな、ちょっとワクワクしてきたぜ!」
「何でお前がワクワクしてんだよ」
「えー!お前なら分かってくれると思ったのにー」
「まあ、ちょっぴり面白そうとは、思ったけどな」
「さっすが! やっぱり俺が見込んだだけはあるぜ!」
「それはいいけど、そんなことよりもうすぐ担任来るぞ、自分の教室に帰った方がいいんじゃないか?」
「おっと、もうこんな時間か。じゃあこの話はまた後でな」
「はいはい、わかった。また後でな」
ガラガラガラという学校特有の開閉音を響かせて、あいつは出ていった。
(はぁ~、まったく……騒がしいやつだな。まあ、あいつはずっと前から変わらんか)
少しした後、手に書類を持った担任がやってきた。
「あー、遅くなったな。まずは手紙とそれから三点話すことがある。一つ目は――」
HRが終わり、悠星の奴と一緒に帰っているとき。
「そういえばさ、俺とお前が初めて会ったのいつだっけか?」
「いきなりどうしたんだ、お前?」
悠星が神妙な顔をしながら訊ねてきた。
「いやさ、どうしてお前と話すようになったんだっけなーと思ってさ」
「あぁ~……確か中学の時にバカやったせいで、授業中なのに職員室の前で二時間以上も立たされて、二人で喋っていたらいつの間にかこんな風に話すようになったんだろ」
そうして、思い出すように過去を振り返る。
「あー、そうそうあれな! いや~あれは、事故だったんだけどな……。懐かしいな~あんときは!」
「あれから話したり、遊んだりして、今ではこんな状態だけどな」
「そうだな……まったく、あの時は今みたいに同じ高校に通って話しているとは想像なんかしてなかったよな」
本当に俺もそう思う。
こいつとこんな風に話して帰っているなんて誰が想像なんかしていただろうか。
「そうだな……それで何でそんなことをいきなり聞いてきたんだ?」
「いや、特に何と言うことはないけど、やっぱり未来なんかわかんねーもんだなーと」
「ふーん、全く変わらないな、お前は」
そう言って優人は苦笑する。
「そうか? いや、そう、なのかな……」
「ああ、そうだぜ。お前の変なところであり、お前の特徴であり、お前の長所なのかもな」
「くく、お前……かっこつけてるつもりか?だとしたらダサいぞ!」
「お前に言われたくねーよ!!」
ははっ! と二人して笑い合いながら帰り道を歩いていった。
──☆──★──☆──
家についた俺は、手を洗い、服を着替えてからベッドに寝転んで考えていた。
(ふぅ、全くいつもと変わらぬ「日常」か。
それも悪くはないんだろうが、やっぱり飽きたな……。
退屈なこの世界じゃあ、やっぱり俺は生まれた世界を間違えたのか?
枠にはまったこの社会は、俺のような歪な人間には生きずらい……。
あぁ~あ、何か面白いことでも起きないかな……。
はぁ、ダメだな。これじゃあ、全くいつもと変わらないか……。
ちょっと疲れたし少し休むか。母さんが帰って来るまでまだあるし、少しだけ眠ろう)
重いまぶたに逆らえずに優人は眠りへと落ちていく。
これから待ち受ける運命にどうなるかなど想像もできずに……。