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複垢調査官 飛騨亜礼 ≪短編連作版≫  作者: 坂崎文明
第五章 複垢狩りゲーム
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複垢狩りゲーム

 メガネ君の提案により「作家でたまごごはん」のシステム改変がなされた。


 怪しい複垢カモフラージュブクマ、評価を拒否する機能を追加したのだが、当初、10段階評価の『文章:ストーリー:+α』が『1:1:1』の作者にとって不本意なブクマが削除されると思われたが、実際は全くそういうことは無かった。


 底辺作家は少しでもブクマ、評価は欲しかったし、人気作家も本音はそうだし、そういうことをして非難されることを怖れたからだ。


 だから、この機能は本来の目的である、そういう評価が嫌な人、自分の作品が妙な評価をされたり、突然、何の理由もなく総合日間ランキングに入るというような愉快犯の犯行を防止するという本来の目的にのみ使用された。


 同時に誰が評価してくれたかの可視化も行われたので、ユーザーによる日常的な怪しい複垢アカウントへの監視意識も高まった。

 そして、問題の怪しい評価の複垢をランキング化した「複垢ランキング」の効果は絶大で、次々と複垢が狩られていった。


 複垢の可視化によってユーザー間においても、そういう話題が自然にでるようになって、防犯意識も高まっていった。

 この「複垢ランキング」を元に「複垢狩りゲーム」なるものがリリースされるに至ってそれは頂点に達した。


 複垢を狩るたびにポイントが溜まっていき、賞金稼ぎができるシステムで、ファンタジーRPGなどゲーム会社と提携してゲーム内通貨と交換できるようになっていた。

 が、唯一、そのシステムを導入しない企業が存在した。


「IMT.COMは複垢狩りゲームを導入してくれませんね」


 メガネ君は不満をもらすが、ある程度、予想はしていたようで、あまり驚いてはいなかった。


「あそこの看板ゲームの<刀剣ロボットバトルパラダイス>はBOTで地下迷宮のモンスターを狩って、レア刀剣やアイテムをプレーヤーに売るRMTが流行ってるという噂があるみたいね」


 神楽舞は眉を(ひそ)めながら言った。

 BOTというのは自動プログラムで、RMT(Real Money Trading リアルマネートレード)とはゲーム内のレアアイテムなどを現実の世界で売買することである。

 業界で度々問題になっているが、月に数万~数十万をゲームに課金するような重課金プレーヤーがいるぐらいだから、ゲームの仮想世界に魅せられた者達はお金を出してもレアアイテムを欲しがる。

 

「しかし、IMT.COMはこの前の件もありますが、闇が深い会社ですね」


 この前の件とは、<刀剣ロボパラ>の第13ワールドの最終決戦において、軍事用ドローンAIを稼働させていたという話なのだが、何者かによってIMT.COMの竜ヶ峰雪之丞社長の記憶が消されていて、事件の真相はうやむやになってしまっていた。


「確かに。でも、課金ゲームそのものが若年層のパチンコみたいなものだから違法スレスレだし、そのうち規制されるかもしれないわ」 


 神楽舞の予想もその後の事件の多発によって現実のものになっていくのだが、この時点ではまだ、課金ゲームは放置されていた。


「そこまでは難しいと思いますよ。そのうち、警察かどこかの省庁から天下りして安定するかも」


 これも今のパチンコ業界をみれば、完全に警察の天下りで安定している。

 そうなる可能性が高いし、ラノベのテンプレ小説ではないが、ワンパターンの内容なのに馬鹿みたいに若年層が金を投入するコンテンツが見つかったのだからネットゲーム業界がそれを手放すはずもない。


 結局、今まで通りに、若年層の現実逃避的態度と行動パターンを読まれて、金を湯水のようにむしりとられる未来しかないだろう。オタクと呼ばれる人々にとってはそれが幸せだから仕方ない。


「とりあえず、様子見ね」


 神楽舞はミルクコーヒーを飲んで一息入れた。


「それじゃあ、仕事も一段落しましたし、<刀剣ロボパラ>やってもいいですか?」


 メガネ君はにっこりと笑う。


「仕事を早く片付けたらという約束だったわね。どうぞ」


 舞はしぶしぶ許可を出して仕事に戻った。




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