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複垢調査官 飛騨亜礼 ≪短編連作版≫  作者: 坂崎文明
第三章 ネット小説投稿サイト三国志
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IMT.COMの闇

「神沢少佐、そろそろIMT.COMの本社に着きますが、サーバー稼働中のデータを押さえられないと証拠をつかむのは難しいでしょうね」


 安堂光雄は助手席にいる紅色のサイバーグラスに黒いコート姿の上司に話しかけた。 

 彼の方はいつもの背広ではなく、黒い軍服風のサバイバルスーツに身を包んでいた。

 ダークブルーのベレー帽に、神沢優とお揃いのデザインで青色のサイバーグラスをかけている。 


「それは問題ないわ。竜ヶ峰会長も、坂本マリアCEOも<刀剣ロボットバトルパラダイス>にアクセス中だから心配ないわ。飛騨君と舞ちゃん、メガネ君もしっかりやってくれてるみたいだし」


 神沢優はスマホゲームの<刀剣ロボパラ>を覗き込みながら戦況を眺めていた。

≪悪役令嬢≫同盟の神楽舞の機体である、ダークピンクの<ボトムドール>の視点カメラをモニターさせてもらっていた。


 連合軍の本拠地である<スカイパレス>城に、巨大な八つ首をもつ龍が天空から襲いかかっていた。≪八頭龍≫と呼ばれる竜ヶ峰雪之丞の機体であり、連合軍のメンバーも善戦していたが、ジリ貧なのは明らかだった。


「もう少し粘って欲しいのだけど、戦況は厳しそうね」


「ただ、AIプログラムの稼働は確認出来てますので、あとはサーバーデータの押収さえできれば立件は可能かと思います」


 とは言ってみたものの、ネットゲームの中で軍事用ドローンのAIプログラムの研究をしていることを犯罪として立証するのは、かなり難しかった。

 そもそも前例はないし、ユーラシア大陸の北の元社会主義の強国、バラス連邦への武器輸出規制法でも持ち出して、強引にもっていくつもりである。

 でも、ただの良くできた戦争ゲームのゲームプログラムだと言い逃れされる可能性も高かった。


「しかし、この夜桜とねじまき姫というプレーヤーはなかなかやるわね。<攻城刀技>の分割使用で攻城用の必殺技の連射を可能にするなんて、飛騨君みたいな発想ね。十二聖刀使いは考え方が似てくるのかな」


 ゲームマニアの神沢優らしい発言だが、安堂光雄には少々、専門的すぎて意味があまり掴めなかった。


「僕も<刀剣ロボパラ>やってみましょうかね?」


 話の流れでそんなことを言ってしまった。


「安堂君がねえ。案外、向いてるかもしれないけど、その場合は≪悪役令嬢≫同盟に入ってもらうわよ」


「いや、それは……」


「冗談よ。初心者だからメガネ君の≪飛礼≫同盟辺りがおススメね」 


「着きました。ここがIMT.COMの本社です」


 神沢優は公安警察の覆面車両である黒の大型ランドクルーザーを降りると、遠くから本社ビルを見上げた。

 そこは監視カメラの死角の場所で、紅色のサイバーグラス越しに赤外線センサーの紅い光線が見えた。  

 何とかこの厳重なセキュリティをかいくぐって、本社ビルに潜入しなければならない。

 腕時計を見たらちょうど21時頃だった。


「安堂君、次元迷彩(メタマテリアル)で潜入するわよ」


「了解です」


 <メタマテリアル>は「従来の光学の常識を超越した物質」という意味だが、<電磁メタマテリアル>と呼ばれる光に対して負の屈折率をもつ新素材を使用して、物体の表面で光を迂回させる。

 一種の透明化技術だが、秘密結社≪天鴉アマガラス≫では次元迷彩(メタマテリアル)と呼ばれている。

 

 神沢優は潜入用のヘルメットを装着して、紅色のサイバーグラスをかけなおした。

 コートを脱ぐと、安堂光雄とお揃いのサバイバルスーツ姿になった。


 ふいに、二人の姿は闇に溶け込むように消えた。



 

   †




 坂本マリアの真紅の機体は、一瞬で両断されて落ちていく<龍騎兵>30機を微動だにせずに眺めていた。

 飛鳥こと飛騨亜礼は十二聖刀<光風剣>を鞘に戻して、抜刀術をいつでも繰り出せるように構えている。


「飛鳥隊長、神沢少佐が言ってたように、あの<龍騎兵>はAIドローンのようですね」


 接触秘匿回線による通信である。

 メガネ機の左手が飛鳥機の左肩に置かれていた。


「確かに、連携攻撃は目を共有してるように乱れがないけど、一機一機だと妙にもろい。おそらく、間違いないだろう」


 飛鳥も同意した。


「マリアさんは僕に任せて下さい。飛鳥隊長は<龍騎兵>を」


「しかし、神沢少佐の作戦だと、あの紅い奴を倒す訳にはいかないなあ」


「そこが難しいところです。十二聖刀もち相手に手加減などできませんしね」


「まあ、訳ありのようだし、そちらは任せる」


「はい」


 メガネはうなづいた。

 そして、ブレードローラーを全開にして、突進していく。

 <龍騎兵>の残り40機がメガネ機に向けて急降下しなから襲いかかってきた。

 背後から飛鳥の<風光剣>の抜刀術が炸裂し、<龍騎兵>は次々と落ちていく。


  心強い援護に、思わず頬が緩む。

  <龍騎兵>を巧みに避けながら、メガネの突進は止まらない。

  本丸を背にして立ち尽くすマリアに向かって一直線に駆け抜ける。

 

「<水龍水破斬>改、抜刀術!」


 メガネが叫ぶ。


「攻城刀技、<鬼神十字斬>!」


 マリアは十二聖刀<十字剣>の最強の奥義で迎え討った。

 煌めく十字の光が立花城もろとも、メガネの<ボトムストライカー>を包み込んで両断した。


 


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