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複垢調査官 飛騨亜礼 ≪短編連作版≫  作者: 坂崎文明
第三章 ネット小説投稿サイト三国志
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風の太刀

「<メガロポリスの虎>同盟からから共闘の申し入れがありました。<YUKI no JYOU>同盟と組んだと見せかけて、裏でうちと組んで同盟相手を潰そうなんて、なかなか抜け目がないですね。確かに<YUKI no JYOU>同盟は最強ですから、最初に潰すのはセオリーですが」 


 メガネ君は<作家でたまごごはん>の午後ミーティングの後に報告を上げてきた。


「どうも、怪しい話ね。どちらにも対応できるように準備するしかなさそうね」


 神楽舞はそう答えるしかなかった。


「そういえば、この前、≪飛鳥(あすか)≫同盟の戦闘映像見てたんだけど、あの≪飛鳥(あすか)≫というプレイヤーの動きがおかしいのよ。というか、神業すぎてわけ分からない」

 

「刀が消えるやつですか?」


 メガネ君はデスクトップパソコンから、その映像を出してきて再生した。


「それもそうだけど、敵の攻撃が全く当たらないのはどうしてなの?」


「そうですねえ、居合術というのはご存知ですか?」


「あの、刀を神速で抜くやつ?」


「簡単に言えばそうですけど、どうして、刀を抜く瞬間が見えなくなるかですが、それは日頃の≪型稽古≫で最小の動きで動けるように修練するからですね。ただ、居合、抜刀術の極意は<刀を抜くのではなく、鞘を引く>ことにあるといいます」


 メガネ君は机の下から模造刀を持ち出して、腰に構え、一瞬で抜刀してみせた。

 全く見えないけど。

 メガネ君、いつから居合術を習ってたの?


「ちょっと、スローモーションでやってみますね。こういう感じです」


 メガネ君は最初に鞘を後ろ側に引いて、鞘の方を抜いている。

 そこから最小限の動きで、刀を横薙(よこな)ぎに払っている。


「何となくわかったわ」


「つまり、鞘の引くスピード+刀をそこから切り出すスピードで、単純に言えば倍速の動きになります。とはいえ、刀、鞘を最小限の動きで抜くという動作は日常生活ではできないような動きなので、型稽古を繰り返すことで身につけるしかないですね」


「なるほど、だけど、それが何故、敵の攻撃が全く当たらない理由になるの?」


 どうも理屈が分からない。

 まるで魔法のような動きだし。


「僕もねえ、正直、最初は分からなかったんですが、普通のプレイヤーは遠心力に任せて、刀を振り回し勝ちなんですよね。ところがですね、居合術などの武術家の動きは長い歴史の中で、もっとも合理的な動きが出来るような型稽古を開発して改良して進化してきた。刀の軌道半径も最小限になりますので、スピード的にも全くついていけない訳ですが、それに加えて体捌(たいさば)きも特殊で、人間の身体にはできない動きや力が入らない動きがあって、それの原理を究めると小柄な合気道の達人が大男を何人も投げ飛ばすということができたりします」


 メガネ君はそういいながら、ネット動画を再生して見せてくれた。

 居合の達人が刀を抜く映像や合気道の<空気投げ>で大男がポンポン投げられる動画を見たが全く分からない。


「昔の日本人の体捌(たいさば)き、特に歩き方は竹馬に乗る時のように右足を出す時に右手をだすような歩き方だと言われています。それは<ナンバ歩き>と呼ばれますが、実際には着物や腰の刀のせいで身体をひねらない体捌(たいさば)きが生まれて、あまり手を振らないような歩き方だったと思われます。能とか歌舞伎、巫女舞に見られるようなすり足で歩くような動きだったようです。飛脚や忍者が走る場合は<ナンバ走り>と呼ばれますが、人気忍者漫画、アニメの≪猿飛サスケ 風忍伝≫では、手足を後ろに伸ばして、身体をひねらずに走ってますよね。ああいう感じで、飛脚は腰巻か(ふんどし)姿だっというけど、効率的な<ナンバ走り>で一日数百キロ走ったといいます」


 メガネ君はそこで<古武術バスケット>という動画を再生しはじめた。

 普通の走りと<ナンバ走り>の比較動画があったが、どうも手の振りというよりが身体をひねらない動きが大事なように思えた。 


 右、左の身体の捌きの切り返しだけでディフェンスをすり抜ける<古武術ドライブ>、肩甲骨と左右の腕の交差で素早くだす<古武術パス>、軽く飛んでその反発力で打つ<古武術長距離シュート>、予備動作の全くない<古武術ディフェンス>とか、もうわけわからない動画が連続していた。


「それが西郷隆盛との西南戦争で官軍の庶民兵が走れなくて、薩摩軍に次々と切り倒された事例から学んで、西洋式の軍隊の走り方、身体動作を小学校、中学校からの軍隊教育に導入して、こういう体捌きは日本人の生活から消えていきました。右、左の身体の捌きの切り返しだけでディフェンスをすり抜ける<古武術ドライブ>が一番、わかりやすいですが、日本の古武術にはこういう独特の体捌きが基本となっていて、柳生新陰流の元となった<影流>の極意も、刀の影に身を潜ませる表裏変転の体術があるといいます。その起源は忍術や修験道から来ているのではないかと言われています」


 柳生新陰流と忍術を研究している女性歴史小説家の動画が流れている。

 本体を斬ったかと思ったらそれは影で、影だと思ったところから刀が突然、切りつけてくるような刀術、それが<影流>だという。


「なるほどね。わかったような、わからないような話ね」


「僕の古武術道場では≪飛鳥(あすか)≫というプレイヤーの刀術は<風の太刀>といいます。僕もいつかああいう動きができたらなあと思っています」


 神楽舞は<刀剣ロボットバトルパラダイス>の先進的な≪バーチャルアバタ―コントロールシステム/Virtual avatar control system≫に想いを馳せた。


 ヘッドマウントディスプレイを経由して、脳波で直接、操作できるプレイヤーの分身である≪アバタ―≫が<ボトムストライカー>を操縦するシステムは、リアルの身体能力や経験、反射速度が反映されるものになっている。


 それはリアル世界の修練がゲーム世界に影響するようなシステムであり、メガネ君がいう<風の太刀>とやらも、いつか実現できるのではないかと思えてしまう。


 いつしか、神楽舞はそんな未来を幻視していた。

2度目の抜刀が見えない!? これぞ神業!黒田鉄山の居合術の演武に驚愕!!

https://youtu.be/jyga4YN8NpM


黒田鉄山 0.1秒の抜刀 スローで見る神速の居合術 Kuroda Tetsuzan [slow motion]

https://youtu.be/c6mI7zyEKNU


黒田鉄山 基本素振り(輪の太刀)“魔の太刀の真価”とは?

https://youtu.be/L0nXGIzcZEg


民弥流居合術 Tamiya Ryû Iaijutsu 表之型 Omote no tachi 真之太刀 Shin no tachi

https://youtu.be/giEdxC76uVc



刀をいつ抜いたかわかんない訳です、上の動画はスローモーションの型稽古の動画で、ようやくわかります。


つまり、左半身の体捌きで刀ではなく鞘を抜いてそこから切りに入る。

そうすると、円を描いて刀を抜く場合に比べて刀はその位置から動かず、無駄な動きがなくなる。



古武術バスケット 桐朋高校 (2013. 9/15)

https://youtu.be/xdwPE-WwtRU


【古武術バスケ】 マイケル・ジョーダンのような右ドライブのやり方 紹介動金田伸夫の驚異の古武術バスケット上達法!オフェンスの全て(シュート~ドライブ~パス)

https://youtu.be/vR_qxkA3hfc


古武術家_甲野善紀_カラダ革命_aac

https://youtu.be/z9WDKhYT7iE


ナンバ歩き-甲野善紀-

https://youtu.be/DC66NZj8pJ4


多田容子「表裏変転の兵法 柳生新陰流」(部分)

https://youtu.be/rnYxlX-LIl4


多田容子 OFFICIAL SITE 時代小説作家のサイトです - nifty

http://homepage2.nifty.com/tada-yoko/



ナンバについては多田容子さん、甲野善紀が詳しいですが、ナンバで走った陸上選手もいたそうです。


ナンバ=忍者走りが起源じゃないかと思います。武道の中にも取り入れられた動きではあるんですが。


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