感謝チョコレート
バレンタインデーということで書かせていただきました。
女の子の勇気になれば幸いです。
チョコレートを板状にした「板チョコ」
チョコレートを型に流し込んで殻をつくり、その中にクリームやジャムやフルーツ類などを入れた「シェルチョコ」
溶かしたチョコレートに生クリームを加えた口溶けのいい「ガナッシュ」
ガナッシュをフランス料理の高級食材に形どった「トリュフ」
他にもチョコレートにはたくさんの種類があるけれど、とても私じゃ作れないものばかり。
わたしは今年に入ってからずっと待っていた。感謝の気持ち伝えられるこの日を。
今日2月14日は――――バレンタインデーだ。
わたしには誰がバレンタインデーという日を決めたのか知らないけれど、実は結構助かっていたりする。2月14日はわたしにとって感謝の気持ちを伝えられる大切な日だ。人によっては伝えられない気持ちをチョコレートに込めて渡したりすることができる特別な日。
どちらにしても、女の子には大事な日なのだ。
好きな男性に渡す「本命チョコ」
知人の男性に渡す「義理チョコ」
友人に渡す「友チョコ」
自分へのご褒美に「自分チョコ」
男性から女性へ渡す「逆チョコ」
いろいろな〇〇チョコがあるけれど、わたしは「感謝チョコ」を作った。
――2月13日。
事前に用意した材料で手作りチョコの定番「トリュフ」を作ることにした。普段あまり台所に立たない私もこの日だけはやる気に満ちていた。慣れない包丁でチョコレートを刻んでガラスボールに入れ、温めた生クリームを注ぎ込んでゆっくりとかき混ぜる。そこへ無塩バターを加えて丁寧に混ぜて、粗熱を取っていく。室温で冷ましてほどよい固さになったのを確認して、絞り袋に入れて適当な大きさに絞る。それを素早く手のひらでクルクルと丸め、冷蔵庫でしっかり固めてココアパウダーをまぶして完成。
「――よしっ! これはレジェさんの分。これは洋海さんとひだりさんとみどーさん。こっちは四音さんに丘野さん、旅人さんにがうぇいんさん。あっちがナオさんにそらさんに知さんに八木Tさん。えぇっとそっちはジョナサンさんに灯莉さんに蒼衣ちゃん」
一袋にトリュフを2つずつ詰めて赤色のリボンで口を閉じていく。ひとつひとつ丁寧に想いを込めて、15人分の袋詰めが終わったところでわたしは青色のリボンを用意した。
「こっちのリボンを使う方にはよくお世話になっている方で、七七日さんに汐ちゃんにさおさん。あとお母さんにお父さんに……まぁ一応お兄ちゃんの分っと」
詰め終えたチョコレートを冷蔵庫に戻す。
一旦休もうかと思ったが、じつはまだ一つ残っていた。トリュフチョコレートを作る前に作っておいたみんなと違う「感謝チョコ」。形はハート型と星型の2種類で、ミルクチョコレートとホワイトチョコレートだけれど「感謝チョコ」だ。
改めて見ると急に恥ずかしくなった。
好きな人に直接会って告白するのは難しい。もし好きな人を目の前にしたら恥ずかしさのあまり顔を赤らめて下を向いてしまい、訳の分からないような言葉を呟いて気まずい空気が漂って、これからの関係性が壊れてしまいそうだ。だからわたしは言葉をメモ用紙に綴った。
〇〇さまへ――
いつもありがとうございます。
どうかこれからもよろしくお願いします。
と。わたしにはこれが一番いい言葉だと思った。もしかすると味気ないと思う人もいるだろう。しかし、あくまでメモに書いた言葉は礼儀的なものだ。わたしの場合、恥ずかしくて何も言えないだろうから書いたまでで、文章で気持ちを伝えるのは勇気さえあればいつだってできる。でも今日は年に一度のバレンタインデー。手作りのチョコレートで感謝の気持ちを伝えなくちゃ意味がない。
そう。ひとりの女の子として――――
好きな人にチョコレートをあげる事を考えるとどうしても意識してしまう。
もしかすると考えすぎかもしれない。
けれど、緊張しないでいられるはずない。
もしも断られたら?
もしも先に誰かからもらってたら?
それは「本命チョコ」?
それとも「義理チョコ」?
はたまた「友チョコ」?
「感謝チョコ」なんて口実で、じつは「本命チョコ」。
義理でも友でも感謝でもない。
想いの込めたチョコレート。
後悔だけはしたくない。
読んでいただきありがとうございました。
また、ツイッターで名前を貸してくださった方、ありがとうございました。
勇気をもらった方がいたらしあわせです。
ありがとうございました☆