第2話 【現状理解】
「ぐすっ…ひっく…ぅぇぇぇ…っ」
涙が止まらない…
結局、最後の砦すら守れなかったよぉ…
「ぅぅぅ……くっせぇ…ひっく…」
自分でだしたありとあらゆる汚物にまみれ、うつ伏せに倒れてる私
心はもう折れました
「ゲホッゲホッ…ぅぅ、寒いぃぃ」
なんかここ、凄い森の中っぽいんだけど
しかも寒いし暗い
風邪が悪化しちゃうよ…
てゆか、なんで病人を変なゲームのプレイヤーにしようと思ったの!?
もはや瀕死だよ…?
「薄暗い森の中…喉が痛い頭が痛い節々が痛い体がダルいし熱が下がらない、パジャマがかつてないほど汚い、でも寒くて脱げない…
しかも喉乾いたしお腹空いた…」
私の体の中はもう空っぽだよ
ぜぇぇんぶ出ちゃったからね!
ハハッ
…………どうしたらいいの?
これ詰んでね?
「…とりあえず、ゲホッ、ここが異世界だと仮定して行動しよ…ゲホッゴホッ」
だって家のベッドで寝てたのに明らかに森の中だもん
夏だったのにここ結構寒いもん
てゆか、熱でもうろうとしてて考えるの面倒
なので、異世界だと仮定してまずは持ち物チェーック
「てゆっても、持ってるモノなんか汚物まみれのパジャマくらいしかないよね、ゲホッ…一応ポケットの中とか…ゴホッ」
ぐちゅん…
うへぇ…ポケットの中おしっこでビタビタだ
「ぅぅ…おしっこ冷えて冷たいぃ…ん?」
なんかポケットに入ってる
「なんだろ?ゴホッ
…メモ帳?
おしっこまみれだけど」
えー…と
メモ帳には【ガイドブック】ってかいてるね
ブックのつもりなのかよ、このメモ帳
「べちょべちょで読みにくいな…ゴホッ…んー…」
メモ帳の内容は要約すると
ゲームのルールだとか能力の使い方だとかステータスの見かたが書かれている
「暗いし濡れてて読みにくいけど、なんとなく分かった!
ゲホッゴホッゲハッ」
ヤバイ、明らかに風邪が悪化してる
「とりあえずルールは死ぬまで生きろって事か…クソゲーじゃん。
で、ステータスの見かたは【ステータスウィンドウ】ってとなえ…ぇあ?」
頭の中にRPGとかでよくある、ステータスウィンドウが現れる
表示されてるのは名前、状態、スキル、持ち物、現在時刻、残存プレイヤー数、って項目だけ
「名前は桜木ゆり、本名のまま、当たり前か…状態は衰弱、空腹、乾き、風邪、不潔になってる…ゴホッ、まぁ、そうだねぇ…でも不潔って…
時刻は18:25、スキルはっと」
頭の中のステータスウィンドウは簡単に操作出来た
ぶっちゃけゲームで操作するより簡単だよ
思った通りに動いてくれる
「スキルはドMの癒し手だけ…説明文は【自分や他人の傷、病気、状態異常などを痛みに変換し、その痛みを自らに受け入れ、痛みに耐えれれば癒す事が出来る。痛みは対象の傷や病気の重さによって増減する】
…………ワケわからん」
スキルの「ドMの癒し手」の説明文を読んでもよくわかんない
てゆか解りたくない
なんか怖い
「ゴホッゴホッゲハッ…………はーっはーっグラグラする、てゆか立てない…このスキル使ったら風邪治るかな…もう、怖いとか言ってたらまじで死んじゃうかも…」
どんどん暗くなってる森の中でフラフラじゃ間違いなく生き残れない
生き残る自信なんかない
メモ帳に書いてたスキルの使い方は、ただ念じるだけ
「ゲホッ…やって見ますか…
とりあえず、風邪を癒やして【ドMの癒し手】」
ド ク ン !
「ぁぁああぁああぁああ゛あ゛!!?」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
体の中を刃物でかき回されてるみたいに痛い
「ウぁアアアぁぁアアアアぁアアア!!」
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ぃ!
耐えれない!
死んじゃうって痛い痛い痛い痛い!
体が痛みでビクンビクン跳ねる
ちょっとでも痛みを逃がそうとして地面を転げ回るけど、全然効果がない
「あぁぁああぁああああぁぁぁああああっ…………ぁ…ぅ…」
唐突に痛みと風邪の辛さが消えた
消えてくれた
「ぜー…っ…はー…あー…死ぬかと思った」
のたうち回ったから風邪は治ったのに擦り傷が出来ちゃったよ。
叫んだから喉の乾きもキツイし。
「風邪が治ったせいで食欲が戻って腹ペコだよ…何か食べ物と水を探さなきゃ」
立ち上がり、改めて周囲を見渡す。
立ち上がった時にズボンの中の汚物が足をつたって流れるけど、そんなもんは気にしない。
だって、どうしようもないじゃん。
周りはもうほぼ真っ暗でよく見えないけど、完全に森の中だね。
木が鬱蒼と生い茂ってる。
暗がりから獣が襲いかかってくるんじゃないかと想像すると、めちゃくちゃ怖い。
「てゆかホントにここが異世界なら、獣どころかモンスターとかも居るんだよね…………?」
やべえ!
超怖い!
「ぅー…怖いけど、川とか探さなきゃだし…あ、【ドMの癒し手】って乾きとか空腹も癒せるのかな?」
ステータスウィンドウを開き、私の状態を確認する。
「状態は空腹、乾き、不潔…風邪は治ってるね。……もう、いっそのこと全部治して見ようかな。」
だってこんな暗い森の中で川とか食べ物とか見つかるわけないし…
でも、あの痛みをまた味わうのか…
「ぉぉぉ…超怖いっ、痛いのやだなぁ。でも喉乾いたし…………よし、やってやる。」
覚悟を決めて【ドMの癒し手】を使用する。
「私の状態異常を全て癒して!【ドMの癒し手】!」
ド ク ン !
「~~~~~~っ!!」
いってぇ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
「ぐっぁ…っ」
アホか私は
一個ずつ治せばよかったのに!
でもさっきよりは、痛みがましだな
「ぁぁぅぅぅ…くぅぁっ」
てゆか長い!
痛み長いよ!
さっき見たいに刃物でかき回されるような痛みではなく、全身の皮膚をつねられてるような痛み。
叫びだす程じゃない。
ある程度覚悟出来てたしね。
体を丸めてひたすら耐える。
「~~~~~~っっ…………ぅぁ…………」
どれくらいの時間痛みに耐えていたのか分からない。
やっと痛みが消えた。
「ぐすっ…………痛み長いよ…【ステータスウィンドウ】」
泣きながらステータスウィンドウで時間を確認
「20:54って…どんだけ長い時間痛めつけられてたの?」
確か最後に時計見た時はまだ18:30ぐらいだったと思う。
「2時間以上痛みに苦しんでたのね……酷いスキルだな」
でもでも、苦しんだ甲斐があったよ!
喉の乾きも空腹もいやされた!
そして私の体だけじゃなく、汚物まみれだったパジャマまでも清潔になりました!
「ひゃっふー!健康って素晴らしい!清潔って素敵!」
嬉しくてピョンピョン跳ね回る
その姿はまるで森の妖精の様でしょう?
信じられる?
この妖精さんの様な私、さっきまでゲロとウンチとおしっこまみれだったんだよ。
うふふっ
グサッ
「痛ぁぁぁああ!」
裸足で森の中を跳ね回わったら、そりゃ木の枝が刺さるよね。
「やば、結構深く刺さってる。…………【ドMの癒し手】」
ド ク ン !
「うぎゃあ!?…あ…が……………~~っ」
今度の痛みは一瞬で引いた。
でもやたら強い痛みだったなぁ。
「…………そういえばこのスキルって、痛みに耐えれれば癒せるんだよね。耐えられなかったらどうなるの?ショック死するの?」
…………決めた。
このスキルは自分の為だけにしか使いません。
誰かの為にショック死する程自己犠牲精神持ってないよ!
「うん。そうしよう、このスキルは私専用って事で。」
スキルについてはもういいや。
ステータス画面の残存プレイヤーってのは多分まんま、巻き込まれたプレイヤーの生き残ってる人数だよね。
あの謎の声もプレイヤーは何人か居るっぽい感じの口振りだったしね。
「何人巻き込まれてるのかなぁ…っと」
残存プレイヤー数
1462人/2000人
「…………え?」