れっすん2*はなす
仮の話をしよう。
実は俺が二重人格で、もう一人の人格の"俺"が俺の知らない間に彼女をつくって、裸を見られるのも抵抗ないほど、仲が進行していたとする。
まぁ、んな訳ねぇがな。
16年と11ヶ月生きてきて、記憶違いの類は一度もなかった。
では、この罵声を浴びせながら俺のスネに蹴りをいれたこの女は一体誰だ。
1hitした箇所がまだ熱を持ち痛む。ついでに俺のガラスのハートも痛む。咄嗟に口をついて出た質問がミスチョイスすぎた俺のせいな訳だが。
肝心の本人はというと、夏期中は俺の家の人気NO.1アイドル扇風機たんを独り占めしている。
冷房たんのオーディションは貯金と検討中だ。
ってかここ俺の家だよな?
彼女はシンプルな洋服に着替えをすませていた。服は彼女の持ち物のようだ。
座っていると床を蛇のように這うほど美しく伸ばされた金に近い髪は、扇風機の風になびいて、光を吸収して金糸のようにキラキラと輝く。
ツリ目がちな大きな目に、小さくも高い鼻。
165センチはあるだろうか。
スラリとした細身の体型は、ピタリとした服によりさらに強調されている。しかし、あまり胸は強調されていない、残念だ。
肌は程よく白い。
一言で言えば、絶世の美少女。
「こっち見んな。キモすぎる」
ただし、
性格最悪。
「…で?何か聞きたいことがあるんじゃないの?」
「何カッ「殺されたいか」
どうやら胸のサイズを気にしているようだ。ははっ、ざまぁ!
「面倒だけど話してあげる。感謝しろ」
『ほ、本当は面倒なんだけど、あんたの為に仕方なく話してあげる。感謝しなさいよね!(赤面)』
のような甘い要素が1ミリも感じられない言い草だ。
「じ、じゃあ…何でお前は俺の家にいんの?」
「お前じゃなくてユイ様でいいわよ。住んでるからよ」
こいつ…何さらっと様付け要求してんだ。
「…住んでる?いつから?」
「んー…一週間前?」
「どこに?」
「ここに」
「え?何号室?」
「403」
「それは俺の部屋だって」
「だーかーらぁ。あんたの家!ここ!here!に住んでんの!!」
どういうことなの。
「はぁぁぁー。察しが悪い馬鹿ね。いいわ、説明してあげる」
ため息とかこっちがつきたい。
「単刀直入に言うと…」
「私は人間じゃない」
「鬼みてぇな性格だもんな!納得だいってぇ!!」
さっきと同じ箇所をまた蹴られた。2hit!
だっていきなり人間じゃないって言われて信用できるか?
俺は無理だ。宇宙人なの、とか言われたらいい病院をオススメしようと思う。
夏だからな。頭わいたんだな。それかただの電波ちゃん。
「何か失礼なこと考えてるわね。馬鹿面に書いてあるわよ」
「書いてる訳あるかぁ!」
「馬鹿面は認めるんだぁ。まぁ、認めざるおえないわよね、お馬鹿さん」
うっぜぇぇぇえぇ。
こいつうぜぇぇぇぇぇ。
くっそ…今すぐ殴ってやる。美少女じゃなかったらな!
恨めしそうに残念電波美少女ユイ様(笑)を見ていると、俺の方に向き直り正座した。
透き通った青い瞳にまっすぐ見つめられると、真夏の青空にとけてしまいそうな感覚に陥る。
人間離れした、その顔をみていると、なるほど。人間じゃない説が不思議と信じられる。
きっと彼女は妖精か何かだ。
「人工生命体ヒューマノイド。シリーズNO.811。チャンネル、ユイ。IDコード0321981577」
蒸し暑さを相殺するかのような涼しい声が鼓膜を震わせる。扇風機の羽音がユイの喋る間だけは不思議と耳に届かない。
ユイは初めての笑顔を俺に見せた。
それも、とびきりの笑顔だ。
「私は貴方に恋をしにきました」
今回は少し長め。
お疲れ様でした。
そして、ありがとうございます。
ようやく話が見える展開に。
ファンタジー要素はあまり入らない予定です。
私情のため、しばらく更新は遅れるかもしれませんが、
お付き合いいただけると嬉しいです。
よろしければ感想なりなんなり
残してやって下さい。