表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

第8話:当たり判定の消失と、初期化《フォーマット》される学園

壁に向かって歩き続ける、NPC化した生徒。

異変の調査を始めたカイたちの前に、これまでとは全く異なる「システムのバグ」が生み出した異形の怪物が現れる。

 ゴン、ゴン、ゴン。

 無機質な音が中庭に響いている。

 壁に向かって歩き続ける男子生徒——山田の様子は、どう見ても正気ではなかった。

「ちょっと、カイ! 急に走り出して……って、何ですの、この気味の悪い動きは……!」

「カイ様……。これは、どういうことでしょう」

 息を切らして追いついてきたレナとセイラが、山田の異常な姿に息を呑む。

 セイラは少し目を細め、かつて『神の演算機』と呼ばれた鋭い視線で彼を観察した。

「洗脳や精神魔法ではありませんね。彼の『魂の形』そのものが欠け落ちています。……まるで、神様が中身をくり抜いてしまったみたいに」

 俺の視界(UI)が弾き出した【魂のデータ欠損】という警告と、セイラの分析は完全に一致していた。

 教団の実験なんかじゃない。この現実世界そのものが、どこかから壊れ始めている。

 その時だった。

 ——ゾクッ。

 右目の奥で、紫色のグリッチ(ノイズ)が激しく瞬いた。

「っ……二人とも、下がれ!」

 俺が叫ぶと同時、山田の足元の地面が、まるで「不自然に削り取られた」ように真っ黒な穴へと変わった。

 そこから這い出してきたのは、紫色のノイズで構成された、人でも魔物でもない異形の怪物たちだった。

【対象:システム清掃員スイーパー

【目的:エラー個体および周辺の不要データの『削除』】

「……清掃員? 不要データの削除って、なんだ……?」

 俺がUIの警告文に眉をひそめた瞬間、怪物の一体が刃のような腕を振り上げ、山田ではなく——最も近くにいたレナへと飛びかかった。

「きゃあっ!?」

「レナ! 避けろ!」

 間一髪でレナが後ろに飛び退き、刃が空を切る。

 そこで俺は背筋が凍る思いで理解した。こいつらはバグった山田だけじゃない、そこに居合わせた『俺たち』もまとめて処理する気だ。

「よく分かりませんけれど、いきなり襲いかかってくるなら丸焦げにしますわ! 灰燼に帰しなさいっ!」

 レナが真紅の炎の槍を放つ。

 同時に、セイラも虚空から巨大な香炉フレイルを引きずり出し、軽々と振り回して怪物へと叩き込んだ。

 ——だが。

 轟音と共に放たれた二人の全力の攻撃は、怪物の体を『すり抜け』て、背後のレンガ壁を粉砕しただけだった。

「嘘でしょ、燃えませんわ!?」

「手応えが……ありません。幻影ですか?」

 違う。幻影じゃない。

 俺のUIが、絶望的な警告を赤文字で表示していた。

【警告:対象に物理・魔法の当たり判定が設定されていません】

「当たり判定がない……だと?」

 理不尽にも程がある。

 あいつらの攻撃はこっちに届くのに、こっちの攻撃はすり抜ける。ゲームなら完全にクソゲーの領域だ。

 ヤトの『現実は削れていく』という言葉が脳裏をよぎり、右目が焼けるように痛んだ。

 だが、ここで出し惜しみすれば全滅する。

 俺は右目の痛みを歯を食いしばって堪え、UIの解析レベルを強制的に引き上げた。

「レナ! セイラ! 奴らの体は狙うな! 右から三番目の奴の『頭上30センチ』の何もない空間に浮かんでる、紫色のコアを狙え!」

「頭上!? 何も見えませんけど……ええい、信じますわ!」

「カイ様のご命令通りに……!」

 俺が視覚化した『見えないコア』へ向け、二人の攻撃が正確に交差する。

 バツンッ! というショートしたような音と共に、スイーパーの一体がノイズとなって霧散した。

「よし、いける! 次は左の奴の足元だ!」

 俺の精密な座標指示と、二人の圧倒的な火力。

 いかに理不尽な異常であろうと、隙間を突けば破壊できる。数分の戦闘の末、俺たちは全ての怪物を消し去った。

「はぁっ、はぁ……。やりましたわね!」

 壁に頭をぶつけ続けていた山田も、糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。

 なんとか凌ぎ切った。そう息をついた直後だった。

「……ねえ、カイ。あれ、見て……」

 レナの震える声に、俺は上を向いた。

 夕焼けに染まっていたはずの空が、いつの間にか「巨大な紫色のドーム」に覆い尽くされていた。

 外界の景色は一切見えない。

 学園全体が、世界から完全に隔離されたのだ。

 右目の視界に、無機質なシステムメッセージが浮かび上がる。

【エリア隔離完了:これより対象エリアの初期化フォーマットを開始します】

「……冗談だろ」

 俺たちの戦いは、終わってなどいなかった。

 ここはもう、逃げ場のない『バグの檻』だ。

第8話、お読みいただきありがとうございました!

「当たり判定がない敵」という理不尽に、カイの指揮とヒロインたちの力で立ち向かいました。

しかし、学園は完全に隔離され、ついに恐るべき「初期化」が始まろうとしています。

クローズド・サークルとなった学園で、カイたちはどう生き残るのか?

次回からのサバイバル編も、ぜひお楽しみに!

面白かったら、下部の☆☆☆☆☆から評価応援をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ