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確率0.00%の絶望を書き換える――バグだらけの世界で、俺だけが因果を絶断して最強の聖女たちを救う。  作者: 仁胡 黒


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5/7

第5話:確率0%の救済、あるいは聖女の産声

「神の演算機」として心を壊されかけた少女、セイラ。

絶望的な包囲網の中、カイが叫んだ言葉は世界のシステムを激しく揺さぶります。

クライマックスの第5話、ぜひ最後までお楽しみください。

挿絵(By みてみん)「……ぐ、っ……!」

 地下広場に、カイのうめき声が響いた。

 視界は赤一色。アラートログが滝のように流れ、思考を削り取っていく。

【警告:全身の損傷率 68%】

【回避確率:0.02% —— ほぼ不可能です】

 正面には、教団の武装神父たちが放つ無慈悲な光弾の雨。

 レナが必死に炎の障壁を展開しているが、敵の「消火プログラム」によって、その翼は無残に毟り取られていた。

「ハハハ! 無駄だ少年! 『神の演算機』が弾き出した予測データによれば、お前たちの勝率は0%だと出ている!」

 神父が手元の端末を掲げながら嘲笑する。

 カイは血を吐き捨て、視線の先にある「それ」を睨みつけた。

 厚さ三十センチの強化ガラスに閉じ込められた、緑の髪の少女。西園寺セイラ。

 彼女の脳は今この瞬間も、敵のために戦況を計算させられ続けているのだ。

「……セイ、ラ……」

 カイは震える足で立ち上がり、よろめきながらガラスへと歩み寄る。

 背中に光弾が着弾し、肉の焼ける匂いがした。それでも、一歩。

「カイ! もう無理ですわ、逃げて……!」

 レナの悲痛な叫び。だが、カイの耳にはもう、システムの警告も仲間の静止も届かない。

 ドン、と血に汚れた手でガラスを叩く。

「……おい、聞こえるか。セイラ」

 ガラスの向こう、少女の虚ろな瞳が、わずかにカイを捉えた。

 唇が、微かに動く。

「……にげ、て……」

「……わたしは……もう……空っぽの、電池……だから……」

 それは、教団に刷り込まれた絶望の言葉。

 自分には生きる価値などないという、悲痛な拒絶だった。

 ——ブチリ。

 カイの中で、理性のヒューズが焼き切れる音がした。

「……ふざけんな」

 カイは歯を食いしばり、剥き出しの意志をその瞳にぶつける。

「システムが何だって? 演算がどうした? ……そんな他人が決めた数字で、お前の価値を決めてんじゃねえよ!」

 カイの右目が、これまでで最も激しく虹色に明滅した。

 視界に映る「生存率」が、ノイズと共に粉砕される。

「お前が自分を『空っぽの電池』だって言うなら、俺がそこに意味を叩き込んでやる! お前が世界に拒絶されるバグだって言うなら、俺がそのバグごと、この世界を書き換えてやる!!」

 叫び。それは祈りではなく、傲慢なまでの宣戦布告。

「笑え、セイラ! 運命なんて数字に、お前の未来を指一本触れさせるな!

 ——お前が誰で、どこに居たいのか……その『答え』は、計算式の中じゃなく、俺とお前の意志の中にあるんだよ!!」

 ガキンッ!!

 カイがガラスを殴りつけた瞬間。

 セイラの瞳に、凍てつくような「怒り」の灯が灯った。

『……あ……ああ、あああああああ!!』

 少女の絶脳が地下空間を震わせる。

 次の瞬間、セイラを拘束していた機械が内側から爆散した。

 舞い散る火花と煙の中、彼女の背後に現れたのは、巨大な鉄塊。

 太い鎖に繋がれた、禍々しくも神々しい**【大香炉フレイル】**。

【個体名:西園寺セイラ —— 覚醒】

【状態:狂信的守護ガーディアン・ブレイカー

【生存確率:——計測不能インフィニティ

「……私の、神様が……そう、言ったから」

 セイラが立ち上がる。

 彼女は巨大な香炉を引きずりながら、愕然とする神父たちへと顔を向けた。

「神様を、傷つけた……害虫、掃除……開始」

 ——ドォォォォォン!!

 セイラが香炉を軽々と振り回すと、緑色の有害なノイズを孕んだ煙が広場を埋め尽くす。

 一撃。たった一撃で、強化人間たちが紙くずのように壁へと叩きつけられていく。

 それは戦闘ではない。一方的な「駆除」だった。

「座標、確定……。そこだ、セイラ!」

「……了解。……粉砕」

 カイの指し示す先を、セイラの鎖が正確に貫く。

 二人の呼吸は、初めてとは思えないほど完璧にシンクロしていた。

 

 数分後。

 静寂が戻った地下広場。セイラは香炉を消すと、ふらりと、カイの胸に倒れ込んだ。

「……カイ、様……。私、ちゃんと……笑えて、ますか……?」

 血と煤にまみれながら、セイラはぎこちなく口角を持ち上げた。

 カイはその小さな体を抱きとめ、優しく答える。

「……ああ、笑えてる。少し不器用だけどな」

「うぅ……」

「けど、俺の計算じゃ100点満点の笑顔だ」

 安堵する二人の背後で、粉砕されたはずのモニターの一つが、ノイズ混じりに点灯した。

『ふふ……素晴らしい。因果の書き換えを確認。テストは合格よ、イレギュラーくん』

 紫色のノイズの中に浮かぶ、見知らぬ少女のシルエット。

 カイはその視線を、確かな敵意を持って睨み返した。

第5話、最後までお読みいただきありがとうございました!

ついにセイラが覚醒し、物語は一つの大きな節目を迎えました。

しかし、謎のモニター越しの少女の言葉が示す通り、これはさらなる巨大な陰謀の序章に過ぎません。

もし「熱い展開だった!」「セイラが可愛い」と思っていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】で応援いただけると嬉しいです!

執筆の大きな力になります。

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