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ヤバマーズ ~毒喰らい男爵の人生逆転劇~  作者: 裃 左右


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第21話 君、魔物から見たら最高級の餌だよ?

 オノレが最初に取り組んだのは、この生えたウロコ。そして、芽生えた感覚の正体を探ることだった。

 僕がこれまでの経緯を話せば、彼は指先で顎をなで何度も頷いた。


「なるほど。魔物の攻撃に対して、予兆を感じとる能力……ね。面白いじゃないか」


 見せてみろと言うので、日課である魔物狩りに連れ出し、実戦で披露することにしたのだが――。


「ほら見ろ! 今、攻撃される寸前にウロコが疼いたぞ!」

「……うーん。確かに巧みに(かわ)してはいるけど、アスタ」

「なんだよ」

「傍から見てる分には、普通に君が運動神経を活かして避けてるだけに見えるんだよね」


 僕は、ゴブリンや変異狼(チェイサー)を仕留めて見せたが、納得されなかった。なんでだよ。


「あらよっとっ! 背後からの奇襲だってこの通りだ。これならどうだっ!」


 僕はムキになって、襲いかかるゴブリンにわざと隙を見せてやったのだが。


「それだって、君なら元々できたんじゃないか? 王都の剣術演習でも、アスタは逃げ回るのだけは一級品だったし」


 などと、オノレは欠伸混じりに言う。


「む、むむっ……! なんてことを言うんだ!」


 でも、確かに……これくらいなら、変異の前でも必死になれば出来たかもしれないな。

 紙一重でひらり。すかさずゴブリンの首を撥ねれば、「ギヤッ」と醜い断末魔。

 いつもより格段に魔物が片付いていくというのに、証明できないもどかしさ。あー、腹が立つっ!


「いいか、これは特別な感覚なんだぞ! 特に、魔物が強力な異能を使おうとすると、こう……ウロコが焼けるように熱くなってだな!」

「そっかー。でも、それも君の主観だよね」

「……確かに。……これも、主観、だな」


 ダメだ。客観的に証明する方法がない。

 いや、待て。アレがあるじゃないか!


棘山熊(エピヌウルス)を倒した時だ! あの時は、左手から半透明の刃が生えてきたんだぞ! 電撃を断ち切るようなすごいやつが!」

「へぇ、すごいすごい。で、今ここで出せる?」

「……出し方が、わからない」


 踏ん張っても、転げまわっても、唸っても出ない。ウロコをくすぐってみても、何も起きない。ううっ、なぜだっ!

 するとオノレは、哀れみすら含んだ目で「なるほど」と呟いた。


「仮に、君の妄想や幻覚ではないとして」

「妄想なんかではないぞ! 刃を出したのは、領民も見てるんだ!」

「わかった、わかったよ。……現状の仮説としては、『磁気感覚』に近い異能だろうね」

「磁気? 僕が磁石にでもなったっていうのか。一応言うけどな、このウロコは、磁石にくっつかないんだぞ!」


 変なことを言うやつだ。人間が磁石になるわけがない。


「そうヘンな話でもないさ。渡り鳥やサケを知ってるだろ」

「ああ、それがどうした」

「彼らは数千キロの旅をする際、地磁気を頼りに方角を知るという説がある。つまり、脳内に微細な磁性体を持っているんだよ」

「……確かに、渡り鳥やサケは磁石にくっつかないな」


 相変わらず、変なことを知っている男だ。そんなこと、大学の講義で習った記憶はないぞ。


「魔物の体内を巡る、動的な魔素の反応や流れを読む。そんな磁気感覚に似たものが、ウロコを通じて芽生えたとすれば、一応、説明はつくよ」

「わかりやすく言え」

「そうだな。……魔物が殺意を込め、魔素を元気にすると、ウロコが反応する。みたいな?」

「……ならば、透明な刃は?」

「んー。大気中の魔素を、刃状に収束させたんじゃないかな。見てないから知らんけど」


 思い返してみる。

 あの時は、ゴブリンの血や、棘山熊(エピヌウルス)の放電と内部破裂で、戦場は濃密な魔素に満ちていた!


「おおっ! それなら腑に落ちるぞ!」

「納得した? あ、でも。一つだけ、すごくマズいことに気づいちゃったんだけど」

「なんだよ、不吉な言い方をするな」

棘山熊(エピヌウルス)、死んだふりをしてまで君の命を執拗に狙ったんだよね?」


 そうだ。あの怨念に満ちた殺意。今思い出しても背筋が凍る。

 思えば、一目見た瞬間から、真っ先に僕を殺しに来ていた気さえするぞ。


「たぶん、それ。君のウロコのせいかも」

「なんでだよ?!」

「魔物からしてみたら、魔素は活動エネルギー源だから。……もう、君って最高級の餌か宿敵(ライバル)に見えてるかもね?」


 ――悲報。

 便利な回避能力かと思ったら、魔物から優先的に狙われる『超ヘイト集め体質』になった説、浮上。


「僕、これから一生、魔物に命を狙われるのかっ!?」

「さすが、アスタ。モテモテだね?」


 魔物にモテモテ男爵。……嬉しくねえよっ!

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