表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤバマーズ ~毒喰らい男爵の人生逆転劇~  作者: 裃 左右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/62

第11話 魔物鍋、爆ぜる(気軽に混ぜたらアカン)

「いよっしゃぁあああっ、面倒な客はマグダリアに任せて、肉食うぞぉぉぉおっ!!!」


 まず、気合一発。目指せ、魔物肉の食用化っ!

 聖騎士ロダンが来たあとで、研究するのもアレなんだが、切羽詰まってるので、やらざるを得ない。


「でも、もうアイデア尽きてんだよな。ぶっちゃけ」


 塩も、お酢も、アルコールも試した。

 で、一番、可能性がありそうなのは、灰を使うアプローチだったから、より工程に丁寧に取り組んでみることにした。


「もぐもぐ。ぺっ、まだ苦い。これも失敗だな。しかも、食感がひどい」


 さすがに学習した。

 苦みを感じた時は、我慢してまで飲み込んだらアカンわ。おなか壊すもん。そんなことしてたら、そのうち魔物になっちゃうだろ。これ(今さら)


「でも、やっぱ無理か。丁寧に処理しようとすればするほど、肉がひどいことになるぞ」


 頑張れば頑張るほど、魔物肉がさ。なぜか灰で処理すると、どんどん黒ずんでゲル状になるんだよ。

 こんなの、洗っても食えねえよ。臭いまで悪化するし。アンモニア臭がひどすぎる。


「なんらかの変化は、確実に起きてんだけどなー。このアプローチじゃ、食用化は無理なのか? ……でも、なぜ灰に漬け込んだだけで、肉がこうなる?」


 実は、適量な灰に漬け込んだり、まぶすのも食肉保存方法の一種だ。

 アルカリ成分が、硬い野生肉を柔らかくしつつも、腐敗を防いでくれる。脱水も兼ねるしな。


「魔物肉は、普通の肉と根本的に違う可能性? ……だとすると、魔素って結局なんだろう」


 大気中に存在するエネルギーだとされているが、これが動植物にどう取り込まれて、内部でどんな働きをするかは、まったくわからない。


「……気体? 液体? 固体? それとも、それ以外の何か? ああっ、エネルギーが空間に満ちているという概念が、そもそもわからんっ!」


 手詰まりだ。

 現状、手持ちで打てる手がほとんどない。どこぞの大学並みの設備が、あれば話は別だが。


「くっそ、設備も薬品も人材も足りねえ。……誰か呼びてぇなあ」


 王都で勉強してた頃は良かったなー。あまり金はなかったけど、好きなことやれたし。


「あの頃も、お腹も空かせてたけど、泣きつけば誰かはメシを食わせてくれたし」


 仕方がないので、またマスクを装着。野外で白骨茸を煮炊きし始める。

 気分転換に、食事をするのは悪くない手だ。


「また、廃水出ちゃうんだよなあ。いや、毒抜き処理って結局はそういうことなんだけど」


 今まさに、ホクホクのキノコを食べたいがために、毒ガスをまき散らす悪徳領主。頼む、それでも異端扱いはやめてくれ。

 大量に出た煮汁を眺め、なんとも言えない気分になる。


「はあ。これ、捨てるなら、森の中がいいのかなあ」


 森で生まれてるキノコなのだから、森に捨てる分には、調和を乱さないんじゃないか。と、思わなくもない。


(……どうせ、なにかが分解してくれるんじゃね?)


 で、そこでふと思った。これ、なにかに使えない? 例えば……。


「この猛毒キノコスープに、魔物肉漬けたらどうなんの?」


 いや、なにも起こらないかもしれない。

 キノコが魔素を、別の何かに変えているのだととしても、煮汁にその効果が移るとは考えにくい。


「でも、やるだけやるのは、タダか?」


 万策尽きてる現状、あるものを全部試してナンボである。

 しかも、ちょうど大量にあったのは、捨てる予定の臓物に血液。バケツにいっぱいあるこれは、どうせすぐに腐る。


「仮説では、血液も臓物も、魔素が濃くてどう足掻いても食べられない部位なんだよな。……魔素が、体内を循環する仕組みなら、だけど」


 だから、何も深く考えず。

 本当に深く考えずに、臓物入りバケツを持ってきて、ドボドボ流し込んだ。


「ほらよっ、と」


 ――変化は劇的だった。

 まず、臓物の表面から、微細な気泡が爆発的に噴き出た。まるで血肉そのものが、沸騰しているみたいだった。


「はあっ?!」


 流し込んだ血液は、すぐさま茶褐色に変色。ツンとする、刺激臭を放ちながら、臓物は煮えたぎる。

 火に掛けていないはずの鍋から、絶えず生まれ始める蒸気は、モクモクと天へと昇っていく。

 なんらかの化学変化で、熱量が生まれているのは明白だった。


「あわわわわ!? なにかやっちまった!?!?」


 すると、そこに女の声。


「あの、アスタ様。やはり、お尋ねしたいことがございまして――え、これはなにが起きているのですかっ!?」


 なんと、運悪くこのタイミングでやってきたのは……いなくなったはずの祓魔女(エクソシスター)リュス。


「ばっか! なんで、ここに来てんだよ!?」

「きゃっ?!」


 ――反射的だった。

 異端認定とか、そういう話は頭から飛んでいた。顔まで隠したこの女に飛びかかり……口元に、袖をあてがって抑え込む。


「気軽に実験場に踏み込んで来るんじゃねえっ! 死にたいのか、バカ野郎が! 絶対に息をするなっ!」


 そのまま女を引きずり込んで、風上へと避難させた。

 鍋から立ち上る蒸気。鍋から、破裂音まで聞こえてきた。身体がガクガク震える。


 ――なんなんだ、どんな変化が起きてる? この現象の正体はなんだ?!


 僕は事態が収まるまで、じっと息を殺し。恐怖と……ワクワクに打ち震えながら、リュスを抱きかかえていた。

 そう、ワクワクしていた。行き詰っていたなにかに、変化が起きていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ