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プールサイドサイコロジー  作者: 双鶴


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8/10

8話

大谷美代子視点


文化祭準備


 放課後の教室は、文化祭の準備で熱気に包まれていた。

 段ボールを切る音がリズムのように響き、絵の具の匂いが空気に混じり、笑い声が重なっては消えていく。

 窓から差し込む夕陽がガラスに反射し、赤い光が机の上の紙を染めていた。

 折った紙花の端が破れてしまい、その脆さが、彼との距離の不安定さに重なった。

 沈みかける夕陽の揺れは、私の心の揺れそのものだった。


---


 最初は期待で胸が膨らんだ。

 ――今日は近づけるかもしれない。

 けれど、視線の先で浅田くんが別の女子と真剣に作業している姿を見て、胸がざわついた。

 誤解が忍び込み、痛みに変わる。


 唇を噛みしめ、紙花を強く握った。

 笑顔を作りながら机を指で叩いていた。

 呼吸を整えるふりをしても、心臓の音は隠せなかった。

 視線を逸らしたはずなのに、彼の姿が視界の端から離れなかった。


---


「美代子、こっち手伝って!」

 友達に呼ばれて、私は慌てて笑顔を作った。

 けれど、指先は震えていた。

 髪を耳にかける仕草で誤魔化し、タオルを強く握った。

 それでも胸の奥では痛みがじわじわと広がり続けていた。


---


 ふと、浅田くんと視線が重なった。

 ほんの一瞬だったけれど、永遠に続くように感じた。

 胸が熱くなり、喉が乾いて声が出ない。

 一瞬が永遠に伸びて、逆に彼が視線を外した刹那は、あまりにも短く消えてしまった。

 その冷たさは、紙花を片付ける時まで胸に残り続けた。


---


「ねえ美代子、浅田くんと一緒にやればいいのに」

「ち、違うよ……ただの部員仲間だから」

「ふーん、そういうことにしておくね」

「だから本当に違うってば……」

「でも顔、赤いよ?」

「……これは夕陽のせい」


 友達のからかいに慌てて否定する。

 でも、声が震えていたのは、彼の視線を意識していたからだ。


---


 夕陽が沈みかけ、教室の影が長く伸びていた。

 紙花を折る手を止め、私は心の中で誓った。

 ――次こそ、彼に近づく。誤解なんて怖くない。


 文化祭の準備のざわめきが、決意のリズムのように響いていた。


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