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プールサイドサイコロジー  作者: 双鶴


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7/10

7話

浅田哲也視点


放課後の練習


 放課後のプールは、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。

 水面に反射する夕陽が赤く揺れ、塩素の匂いが少し強く漂っている。

 水をかく音だけが響き、仲間たちの息づかいが重なっていた。

 沈みかける夕陽が水面に揺れていた。その揺れは、俺の心の不安定さを映しているようだった。

 同時に、その光は終わりを告げるようであり、新しい始まりを予感させるようでもあった。


---


 最初は期待で胸が膨らんだ。

 ――美代子に特別だと思わせたい。

 その気持ちが強すぎて、自然に振る舞えない。

 フォームを意識しすぎて、腕の動きがぎこちなくなる。

 焦りが泳ぎに滲み、思うように進まない。


「浅田、肩に力入りすぎだぞ」

 コーチの声が飛ぶ。

 俺は返事をしながら、心の中で苦笑した。

 ――俺は何をしているんだ。こんな泳ぎじゃ、彼女に伝わるはずがない。


---


 練習の合間、美代子の笑い声が聞こえた。

 振り返ると、彼女が別の男子選手と楽しそうに話している。

 その笑顔が、胸に突き刺さる。


 ――俺には興味がないのか。

 胸が締めつけられて、タオルで顔を拭うふりをした。

 けれど、震える指先は隠せなかった。

 呼吸を整えるふりをしてタオルを強く握ったが、手の震えは止まらない。

 拳を握りしめて水面を見つめたが、視線は何度も彼女の方へ逸れてしまった。

 笑顔を隠したはずなのに、胸の奥では痛みがじわじわと広がり続けていた。


---


 練習が終わり、プールサイドでタオルを肩にかけていると、美代子が近づいてきた。

「今日の泳ぎ、安心したよ。やっぱり浅田くんがいると心強い」


 その言葉に、胸が跳ねた。

 喉が乾いて声が出ない。

 呼吸が浅くなり、鼓動が耳の奥で鳴り響く。

 ほんの一瞬なのに、永遠に続くように感じた。

 逆に、彼女が視線を外した瞬間は、刹那で消えてしまった。

 時間が伸び縮みする錯覚に包まれ、彼女の視線の残像が瞼の裏に焼きついた。


 ――俺には興味がないと思ったのに。

 その矛盾が、心臓をさらに揺らす。


---


 夕陽が沈みかけ、プールの水面が金色に染まっていた。

 俺はタオルを握りしめながら、心の中で誓った。

 ――次こそ、彼女に自分の想いを伝える。


 水滴が落ちる音が、決意のリズムのように響いていた。


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