第45話「崩れ落ちる旧体制」
魔力の奔流が玉座の間を満たしていた。
サイモン=クレイブ――かつての魔王軍参謀長。
腐敗と支配の象徴となった男が、いま必死に抗っている。
「この程度で、私を、私を倒せるとでも……!」
叫びながら、サイモンは無数の黒い鎖を生み出した。
だが、かつて彼が支配していた部下たちはもう、動かなかった。
鎖は空しく宙を打ち、優たちの結界に弾かれる。
「終わってるんだよ、あんたの時代は」
優が静かに告げた。
その声は、怒りでも憎しみでもなかった。
ただ、終わるべきものが終わるのだと、受け止める覚悟の声だった。
「サイモン、あなたは……!」
エルヴィナが叫ぶ。
彼女の剣が、過去に仕えてきた組織への未練を断ち切るように、サイモンの防壁を貫いた。
バチン、と音を立てて結界が崩れる。
「ぐっ……!」
サイモンの膝が、とうとう床に沈む。
それでも彼は、諦めきれない目でこちらを見た。
「私は、世界を守ろうとした……! 混沌を、秩序へ導こうと……!」
「知ってるよ」
優は、まっすぐサイモンを見据えた。
「だけど、あんたが作った秩序は、ただの搾取と支配だった」
守るべきだった者たちを、疲弊させ、縛り付けた。
「それじゃ誰も、幸せになれないだろ」
言葉とともに、優は一歩、サイモンに近づく。
背後には仲間たちがいた。もう一人じゃない。
──UI画面に、最終判定が表示された。
【リスクマネジメントミッション:成功】
【黒幕の影響力:消滅】
ポン、と優の頭上に軽やかなアラート音が鳴る。
けれど彼は、それすら意識しなかった。
いま、目の前にいるのは、かつて誰よりも高みを目指した男。
だが、間違いを認められなかった男の末路だった。
サイモンは、膝をつきながら、かすれた声で呟く。
「……なら、お前が……証明してみせろ。正しい未来を……」
「ああ」
優は、迷わずうなずいた。
「絶対に、やり遂げる」
その誓いに、誰よりも強い覚悟がこもっていた。
──玉座の間に、静かな風が吹いた。
腐敗の象徴だった黒幕が、ついに崩れ落ちた。
だが、戦いはまだ終わっていない。
未来を作るのは、これからだ。
優は振り返り、仲間たちを見渡した。
「ここからが、本当の始まりだ」
その言葉に、誰もが無言でうなずいた。
新しい時代の幕開けが、静かに、しかし確実に訪れようとしていた。




