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4話 - ポテトチップス

「今日はどんな料理を作るんだみらい!」

「んー、そうだな〜……」



私がこの世界に来て半月が経過した。

聖女召喚の儀に巻き込まれ、隣に居た聖女はあの時に居た王子とよろしくやっているそうだ。

あの女性が何者なのか、はたまた何を知っているのかは分からない。

それでも、私がする事は一つだけ



「最近油っこいもの食べれてないから……ポテトチップスを作ろう!」

「ポテトチップス?前に作ったフライドポテトとはまた違う物か?」

「そうだね。まぁまずは作ってみよ〜!」



そう。料理だ。

リードさんから異世界の知識を学ぶ時に何かつまめるものが欲しかったのだ。

今揃っているもので簡単に作れると言えばポテトチップスだからだ。もう少し調味料があれば問題ないんだけど…

まず、用意するものは三つ。 油・ジャガイモ・塩の三点。

家にお菓子がない時、よく作って一人で食べたりしたっけ……



「さあ!料理長の出番ですよ!」

「俺か!どうする?!」

「ジャガイモ……あぁ、えっと、ポッカルの皮を剥いで皮と中身に分けてください。」

「任せとけッ!!」



【ポッカル : 通称ジャガイモ 状態:良好 保存用の野菜の一つ。芽には毒が含まれている。知らずに食べて毒に侵される人が稀に存在する。 何にでも使える。】


料理長にポッカルの処理は任せ油の準備をしていると、厨房入口の方がガヤガヤと騒がしくなり始める。



「みらい!なになにッ!今日は何作ってるのー?!」

「また勝手に入ってきたの、フラン。」

「みらいが居るだろうな!って思って!」



この女性の名前はフラン。

この国の女騎士で、数日前に料理を作っていた私の所に突然来てお皿からかっぱらった人物。

それ以来何かと厨房に来ては私の料理をせがんでくる、なんだかんだ仲のいい初めて出来た女友達の一人だ。



「私お腹空いたぁ〜!」

「今作ってるから待ってなさい」

「みらいの料理?!俺も食いたい!」

「あ!私も私もー!」

「えっ、ちょっ……!」



フランの声が響いたのか、一緒に居たであろう騎士の人達が厨房に押し入ってきてあっという間に人だらけになる。

日本の料理は異世界の人達に刺さったらしい。

食べたいコールが始まり、ある意味テロ感が強くなり始める、私は机を強くバンッと叩いた。



「働かざる者食うべからず!作って欲しいなら作るのを手伝う!出来ない人には食べさせません!さっさと手を洗ってきなさい!!」



外の水汲み場を指を指すとバタバタと厨房を出ていく姿を見てフゥーと息を吐いた。

それと同時にため息が出そうになるも抑え込んだ。

今の人数的にかなりの量を作らないといけない。その場合ポッカルを大量に用意しないといけない。

量は問題ないが、その為に皮を全部剥き、その後に全て均等に、それも薄く切らないといけない事になる

こういう時魔法が使えたらどれだけ……

実は異世界に来てから、私自身の鑑定はして貰っている。

その時に、私には魔力が少ない事を告げられた。この世界の調理器具を動かせるほどの魔力はあるみたいだが、魔法は使えないらしい。

厨房でよく使われている火魔法、水魔法、雷魔法を使えない私は、初めはリードさんの手を借りて使っていたけれど、今では魔石を使った魔法具を作ってもらいそれを使っている。



「みらい!洗ってきたよ!」

「俺もー!」

「………よし。よく出来ました。それじゃあ、この中で手先が器用な人とか居れば挙手!」

「手先が器用ならシードァさんじゃね?」

「僕?人並みだとは思うけど…。オリバーも手先は器用だよ。」



シードァさんとオリバーさんはこの街の警備をしている人物だ。

シードァさんは物腰柔らかく、異世界(ここ)では珍しい僕っ子で、女性からもだが男性からも人気がある。例えるなら、学校の生徒会長って感じ。

そして、オリバーさんはツンデレタイプの男性。メイドに聞く所特殊なアレでかなり人気が高いらしい。

王宮内ではシーリバーが萌えるだとか萌えないだとか……



「みらい!二つとも皮が………ふ、増えてる!!」

「あっ。料理長ありがとう!皆も食べたいんだってさ」

「みらいの料理は美味いからな……。でも量足りねえんじゃねぇか?」

「う〜ん……だから食べたい分は皆にさせるかな。皮むきは皆で、切るのは私と料理長、シードァさんとオリバーさんでするからね。という訳で、食いたきゃ手伝えー!」



一人一つポッカルを渡し皮を剥くのは個人でどうにかしてもらおう。

皆が皮を剥いている間、私は油の用意と料理長が剥いてくれたポッカルを薄く切るとしますかっ

ポテトチップスを作るに当たって一番重要なポイントだ。

厚すぎるとデンプンを取る際、上手く取れずあのパリッと感が無くなってしまう……

ポテトチップスは噛んだ瞬間パリッといい音を鳴らすのが醍醐味なんだよ!!それがなきゃポテトチップスなんて言わないんだよ!!!

作り方は簡単で、誰でも作れるような物なんだけど、気をつけて作らないと上手く作れない。私も最初はそうだった。



「え、えっと…、無終わったやつってどうやるんだ?」

「ん?そうだね。反対側がうっすらと見える程度で均等に切って………こんな感じ!」

「おぉーっ!」



一枚切って見せると目をキラキラさせながら私の切ったポッカルを取り食い入るように眺める。

料理の腕がいい人はすぐに取得できるから料理長には期待してる。

私も残りを全て切り終えた所で周囲も皮を剥き終えたらしく、さっきの四人で薄切り開始ッ!



「…………これ、時間かかるね…」

「あぁー…まぁ……。元々は私のお菓子分だけだったけど、増えちゃったので…」

「なんだかごめんね…」

「いえいえ。思うなら倍切ってくださいねっ。シードァさん」

「が、頑張るよ」



黙々と全てのポッカルを薄く切り終え四人全員で息を吐いた。

すぐに油で揚げたい所だけど、ここは焦らずゆっくりと

薄く切ったポッカルを水に浸し十分前後放置する。

水が濁りだしたら何度も水を交換し、時間が過ぎればペーパー、またはティッシュで水分を吸い取る。

そして再び、十分前後放置。



「みらいまだーー?」

「お腹すいたーー!!」

「もうすぐだからちょっと待ってなさい!」



野次馬を一喝し、乾いたポッカルを用意していた油に投入っ

温度計がこの世界には存在しないからここは微調整して何度も見てきたこの目で見極める

表面に薄く色が付いたら裏返し同じように揚げる。いい色が付いたら軽く油をペーパーで吸い取って透明の袋に入れて塩を少し加え、ポテトチップスが割れないように軽く振れば……



「出来た!ポテトチップスの完成!」

「すげぇいい匂い…」

「じゃあ一番の功労者の三名は口を開けてください」



私の言う通りに口を開けた三人の口に揚げたてポテトチップスを放り込んだ。

周りが狡いとかちらほらと声が聞こえてくるけど、「どう?」と三人に聞くと料理長はいつも通り味を噛み締めているし、二人は驚きつつもずっと噛んでるし。

感想もないな。なんて思ったのは内緒。



「じゃあ私も味見〜っと」



一つ手に取り口に放り込む。

パリッと口の中でポテトチップスがくだけ、ポテトの風味と塩の味。

温度の調節が出来なかった分上手く出来るかどうか分からなかったけど、いい揚げ具合だし、塩も効きすぎずで丁度いい

今度は塩の代わりに新種のパウダー作って新しい味にも挑戦してみようかな〜



「みらいー!早く私にも!!」

「そうだそうだ!オリバー達だけずりぃー!!」

「贔屓だー!俺達も頑張ったんだぞー!!」

「あぁもう煩い煩い!じゃんじゃん揚げるから揚がったやつから食べてよし!!」



言い放ったと同時に揚げたばかりのポテトチップスに皆が群がる。

私は袖を捲りあげ山積みにされた揚げる前のポテトチップスに向き合い箸を伸ばした。


その後、私が食べる前にポテトチップスが全て食べられたのは言うまでもない……

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