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アラドヴァル、その性能

「しっかし、本当に何にもねぇなぁ。仮にも王都に繋がる道なんだろ?なんで何にもねぇんだよ」


「お主ひょっとして城塞都市は初めてなのか?」


「ん?そういや、西洋は壁に覆われた住まいだっけか」


「せいよう?それが何かわからんが大体の国はそうじゃぞ。魔物がどこからやってくるかわからんからのう。城や町は大きい壁で囲われておる。村でさえ、木製の杭で囲っておるのじゃ」


「うへぇ~。それじゃあ、町を広げる時大変そうだな」


「まあのぅ。先に囲いを作って繋げてから中を壊すんじゃよ」


「逆にやれば資材の費用とか浮きそうなのにな」


「安全には代えられん。お主のように誰でも戦えるわけではないんじゃ」


「そうだろ、そうだろ。もう一回、ヴァリアブルレッドベアーを倒した攻撃を見せてやろうか?」


 マリナが俺を持ち上げて来たのでちょっと乗ってみる。


「ほ、本当か!?実はあの時、わしは馬車の中に居ったから見てないんじゃ!」


「いいぜ!まだ弾数もあるしな!見てろよ…」


 俺はアラドヴァルを構えると、その先に生えている一本の木に狙いを定める。


「いっけーー!」


 ヒュン


 あの時と同じ様に再び銃口が光り、アラドヴァルから弾丸が放たれる。そして、その弾丸は木を貫いて…。


「貫いて!?」


 奥にあった大岩の中心もくり抜き、しばらく進んだ後に消えた。


「おい!貴様どういうつもりだ。木の向こうに人がいたら大変なことになっていたぞ!」


 すかさずその光景を見ていたリタが怒り出す。いや、俺だってさっきの結果は想定していなかったから不可抗力なんだが。


「あ、いや~。おっかしいな~。普通、弾丸っていうのは障害物に当たったら止まるはずなんだが…」


 確かに女神には全てを貫く能力を頼みはしたが、それは分厚い皮や鎧を貫通するって話だしなぁ。とりあえず、どれぐらい飛んだか測ってみるか。


「万一のこともあるしな。え~っと、一歩、二歩…」


 俺は弾が消えたところまで歩数を数えながら歩いていく。


「大体、90歩ぐらいか?そういや、女神が銃の性能を元になったブローハイパワーに合わせるとか何とか言ってたな。まさか!?」


 あの自称女神、有効射程を必ず飛ぶ距離とか思ってねぇよな?


「でも、この距離はビンゴか?とりあえず、もう一発いっとくか」


 俺は穴の開いた石の手前から、さっきよりわずかに歩幅を狭めて90歩歩く。


「これで俺の予想が正しかったら…うりゃ!」


 ヒュン


 今日3発目のアラドヴァルだ。そして俺の予想通り弾は最初に目印にした木で消えた。


「うっわ!マジかよ。本当に50m射程限定なのかよ…」


「ん?さっきからどうしたんじゃ。別に何発も見せんでもすごいことは分かったぞ?」


「い、いや、ちょっと言いにくいんだが、俺の銃…この武器はどうしてもこの距離を攻撃するらしい」


「は?いやいや、そんな武器あるわけないじゃろ。大体、ロウの言っておることが真実ならあの時車輪を撃ち抜いた攻撃は…」


「よかったな、マリナ。射線上にいたらお前も貫通してたわ」


「…いいわけあるか馬鹿者~~~~!!」


 辺りにマリナの魂の叫びが響くとともに、リタまで話しかけて来た。


「貴様のような素性の知れない男がそのようなものを持っているのは危険だ。貸せ!」


「お、おい、奪うなよ。大体、お前に使い方が分かんのか?」


 まあ、構えて引き金を引くだけだけどな。


「そ、それは…これを引けばいいのだろう?」


「ちょ、さっきの話を聞いてただろ。こっち向けて引き金を引くな!」


 俺は咄嗟のことに焦ってリタに叫んだ。


「す、すまん。ん?だが、何も起きないぞ?」「ほらな。言った通りだろ」


 何度もリタが引き金を引くが、弾は一向に発射されない。これは安全だと思い、俺は堂々と言ってやった。


「リタ、貸してみろ」


「ああ」


「あっ、お前もかよ」


 今度はこれまでだんまりを決め込んでいた男の騎士が銃を持った。


「ふむ。これはさっきの威力から見ても魔道具だろう。それも恐らくかなり高度な付与をされている。得てしてそういうものは所有者登録がされているものだ。所有者とその血縁ぐらいしか使えんだろう」


「む、そうなのか。せっかくこいつから奪えば私でも使えるかと思ったのだが…」


「リタは野盗かよ…貴族の中から選ばれた親衛隊のプライドはどこへ行ったんだよ」


「それはそれだ。殿下を守る武器はあって困ることはない!」


 断言しやがったよこいつ。まあ、プライドよりマリナを守るという辺り、信頼は置けるやつなんだろうが。


「ま、俺専用だから諦めろよ。使い方は気を付るから」


「そうじゃな。流石にほいほい使われたらかなわんわ。王都に着いたらそれ以外の武器も買うんじゃぞ」


「俺が使えるものがあればな」


「あれば?貴様はそれ以外使えんのか?」


「そりゃあそうだろ。これがあって他の武器を持つ気になるか?」


「それにしては射程すら分かっていなかったが…」


「い、いやぁ、それはだな…」


 この女、面倒なところで鋭い突っ込みすんな。銃の性能を知らないことをリタに突っ込まれた俺は必死に言い訳を考えた。


「いやぁ、これは住んでるところから出る時に貰ったんだ。でも、変わり者の人でさ一切説明もなかったんだよ。その後は運よく魔物にも出遭わなかったから、今日初めて使ったって訳」


「貴様、本当にそんなことがあるとでも…」


「リタ!あまりロウを責めるな。これでも命の恩人じゃ」


「しかし、殿下。あの武器は危険です!ヴァリアブルレッドベアーを一撃で仕留めるなんて」


「それでもじゃ。それに考えてもみるんじゃ、ロウが本気になったらわしらもあいつと同じ運命じゃぞ?」


「いや、流石にそれはしないが…」


「合わせろ、馬鹿もん」


「いでっ!」


 かかとで足を踏みつけてくるマリナ。かばう気なら暴れんなよな…。


「リタ、姫の言うことも一理ある」


「ぐっ!…しょうがない。だが、扱いには気をつけろ」


「言われなくてもそうするぜ。こっちは平民だからな。人を撃ったらどうなるか分からねぇし」


 2人に言われて不満ながらも納得するリタ。ふぅ、何とかなったな。


「盗賊なら無罪じゃぞ。国のためにそれなら許可しよう」


「許可しようって言われてもな。弾には限りがあるし、規模も分からないところには突っ込めねぇよ」


「そんなに少ないのか?いや、あれだけの威力じゃ。そうそう使えんか」


「そういうこった。しっかし、あれからは魔物も出ねぇなぁ」


「当たり前じゃ!ここは王都へ続く交通路じゃぞ。そんなに魔物だらけでどうやって移動するんじゃ!」


「でも、さっきは出ただろ?」


「むぅ。それを言われるとのう…」


 歩きながらも俺の一言が気になったのか、考える仕草をするマリナ。ちょっと、言いすぎたか?




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