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解決策を探して

 部屋を出るとマリナと俺はどちらともなく目を合わせる。


「リタ、苦しそうだったな」


「うむ」


「解決策を探さないとな」


「そうじゃな。じゃが、その前に…」


「その前に?」


「お前はネリアに謝ってこい!全く、ずいぶん気にしておったぞ」


「あ、そうだよな。俺が勝手に沈んでる間もなんとかしようとしてくれてたもんな。悪い、行ってくる!」


「ああ」


 マリナに見送られながら、俺はネリアの住んでいる使用人棟に向かった。



 コンコン


「はい」


「ネリア、居るか?」


「ロウ様!今開けます」


 ガタガタン


「ご、ご用ですか?」


「あ、ああ。大丈夫か?」


「はいっ!それでどのようなご用件でしょうか?」


「要件っつーか、その…一言謝りたくてな。済まない、帰ってきてからあんな態度取って」


 リタの病状が分かると、何も説明せずに俺はネリアを部屋から出してしまった。ネリアの方は何が起こったか分からなかったのに。


「構いません。何が起きたかも聞きましたから。誰でも辛い時があるんです。ロウ様を責めるものはおりません。騎士たちも感謝しておりましたよ。体調を崩したものは下がっていなければ、間違いなくその場でやられていたと言っていましたし」


「でも、ネリアにひどい態度を取ったのは俺が悪い」


「ロウ様の気が済まないというのであれば、今後は何があっても私は部屋に入れて下さいませ。お話を聞くことならできますから」


 そう言って、俺に笑顔を返してくれるネリア。今回の事で心配もかけたし、ここはお言葉に甘えるか。


「今度何かあったらそうする」


「それと…」


「それと?」


「お風呂に入りましょう。臭いますよ!」


「えっ!?本当か?さっき、リタに会って来たんだけど…」


 さっきまで真面目な話だったのに、急にネリアが話題を変えて来た。っていうか、そんな臭うのか俺?


「いけません!今すぐお風呂に入りましょう。リタ様がかわいそうですよ」


「そうだよな。こんな臭いした男、嫌だよな」


 どうやらこの2日間、風呂に入っているせいで俺は少し臭うらしい。リタには悪いことしたな。


「違います!自分を助けてくれた男性が会いに来てくれたんですよ?嬉しいに決まっています!でも、そこに臭いがしたらケチがついてしまいます。思い出は綺麗になるようにしなければなりません!」


「お、おう?」


「さあ、すぐにお湯を用意いたしますから」


 ぐいぐいとネリアに部屋から出され、お風呂に連れていかれた。ネリアって結構ロマンチストなのか?シチュエーションにこだわるんだな。



「全くもう、こんなに汚れているのによく部屋にいられましたね」


「まあ、特に気にならなかったし」


 大体、男が自室で適当に暮らししても誰も何も言わないしな。


「いけません!ただでさえロウ様は姫様に仕えておられるのですよ。姫様にまで悪い評判が流れてしまいます!」


「…言われてみればそうだな。今後は気を付ける」


「それに姫様やリタ様も嫌がりますよ?」


「さっき、リタは俺に会えてうれしいって言ってなかったか?」


 話がかみ合わないぞ?


「それとこれとは別です。逆の立場で考えてみて下さい。いつも変な臭いを気にもせず近寄ってくるんですよ?いくら好意を持っていても嫌でしょう?」


「うっ、それは嫌だな。でも、好意っていうほどか?」


「では、ロウ様はお二人がお嫌いですか?」


「嫌いじゃないけど…」


「でしょう?ではそれは好意ですよ」


「そう…なのか?」


「そうです!ですから、ロウ様はそんなお二人に恥をかかせてはなりません!隣を歩いている男性が身なりもきちんとしていないなんて絶対にダメです」


「わ、分かったから。偉く力説するなネリアは」


 今までは半歩どころか2歩も3歩も下がっている感じだったのに、やけに今日のネリアは積極的だな。


「それぐらい、お二人は素晴らしい方ということです。もちろん、ロウ様も!」


「俺も?」


「ええ。先ほども申し上げましたが、皆様言っておられますよ。姫様を助けた上に今度は騎士団でも敵わない魔物を退治したって」


「でも、あれはアラドヴァルが凄いだけで、俺の力じゃないぞ」


 俺自身は大した能力がない普通の一般人だしな。


「何を言われているのですか?私だったら例えどんな武器を持っていても逃げ出していました。立ち向かわれたからこそ、今があるんです。その勇気は間違いなくロウ様のものですよ」


「ネリア…ありがとう。ちょっと元気が出たよ。必ずリタを助ける方法を見つける」


「その意気です!」


 風呂でネリアと話をして、やる気を出した俺は風呂から上がり、頭もすっきりしたところでスーツ姿に着替えさせてもらうと、図書室へと向かった。


「お、来たのう」


「マリナもいたのか」


「当たり前じゃ」


 図書館に行くと既に先客がいた。マリナがいるなんて珍しいな。ひょっとして…。


「今、どこまで探した?」


「その棚は終わったぞ」


「はえぇな」


「お前と違って普段から本を読んでおるからのぅ」


「耳が痛いぜ」


 意外にもマリナは普段から書物には触れているようだ。あえてそれは口には出さないが。俺も情報を集めるため、本を探して読んでいく。



「…どうじゃ?」


「ねぇ。というか、呪いってやつの説明を扱ってる本自体が少なすぎる」


 あれから1時間ほど探し続けたものの、2人とも成果は得られなかった。


「そうなんじゃよな~、そもそも呪い自体が禁忌の術じゃし、普通に本は出せんしの~」


「まあそうだろうな」


 そんな本が市中に出回ったら、何が起こるか分からない。現代じゃともかくこっちは魔法も普通にある世界。その影響は計り知れないだろう。


「はぁ~、物体じゃないから体外に出すこともできんしの~。壊したりできんもんかの~」


 その時、行き詰ったマリナがふと呟いた。


「ん?今なんて言った?」


「じゃから、呪いを壊せんもんかと…まあ、その方法も分からんのじゃがな」


「それだぜ!」


「へっ!?」


 あることを閃いた俺はマリナの手をむんずとつかむと、ある場所を目指し走り出す。


「マリナ、来い!」


「ちょ、待て、待つんじゃ…」


「待てねぇよ、リタに会いに行く」


「いや、放せ!服が破れる!」


「あっ、悪い」


 閃きに意識を集中するあまり、マリナの状態を全く見ていなかった。反省反省。


「全く、お主ときたら…まあ、それだけリタのことを大事に思ってくれるのはうれしいがの」


「当たり前だろ?あいつは…」


「あいつは?」


「だ、大事な仲間だからな!」


 何か他の言葉が浮かびかけた気がするが、俺にはそれが何なのか分からなかったので、仲間だとマリナに伝えた。


「…そうか」


 にやにやするマリナを連れてもう一度、リタに会いに行くため俺は部屋へ入った。




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