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晩餐を終えて

 コンコン


「誰じゃ?」


「私です」


「リタか。入れ」


「失礼いたします。ロウの食事を持ってまいりました」


「ん?俺だけここで食うのか?」


「さっきも伯爵はお主の事だけ聞いておったじゃろ?興味を持たれておるからのう。できるだけ、外には出ぬようにな」


「まあ、出る気もないけど…」


 あんな会話を一人でいる時にされたらうまく対処できる自信がない。


「そういえば、ロウは美術品とかには興味がないのか?」


「美術品?このつぼとかか?」


 リタのやついきなりなんでそんな質問をしてくるんだ?


「うむ」


「特にないな。割ったらアイテムが出るかは気になるけどな!」


 こういう異世界に来たら一度ぐらいはやってみたいよな!


「はあ?なんじゃそりゃ」


「うっ、いや。他人の家のタンスを開けたり、つぼを壊したりしてアイテムを入手する勇者がいるんだよ」


「なんと!お前の地方の勇者は野蛮じゃのう。それでは野盗ではないか!」


「う、でも、魔王を倒してくれるんだぜ?」


 ゲーム世界の勇者とはいえ、一応フォローしておく。


「その場合、魔王を討伐したらどうなるのだ?ただの野盗に成り下がるのか?」


「い、いや、流石に倒したら王様から褒美も出るし、しねぇんじゃないかな?」


 流石に褒美をもらったらしないよな?


「大商家や貴族の邸なら金では買えぬものも眠っておるがの」


「た、多分しないと思うぞ。まともな人間なら」


 しないよな?俺は信じてるぞ。


「まともな人間ならそもそも人の家のものを壊したり、開けたりしないだろう。ロウ、もう一度常識を学んだ方がいいぞ」


「リタのくせに痛いところ付いてくるな」


 リタに諭される日がこようとは。やっぱり俺はさっきの会話で疲れてるんだな。


「お前はいちいち私を脳筋扱いするな…」


「まあ、最初に会ったイメージがな」


「私はオーガか何かか?」


「いや、しいて言うなら狼か?ちょっと人を寄せ付けない感じとか」


「狼か…」


 割と適当に言ったのだが、リタとしてはそこまで嫌ではなかったらしい。


「リタよ。なにまんざらでもない顔しとるんじゃ」


「殿下!いえこれは違うのです、誤解です」


「誤解であればいいんじゃがの。リタは、ちょっとカッコつけるからのう」


「そ、それは…」


 思い当たる節があるのか言葉に詰まるリタ。まあ、騎士学校主席でプライドもあるだろうし、しょうがないよな。そう思って俺はリタの肩を叩く。


「まあ、そんな時もあるよな」


「貴様は何を触っておるのだ~!」


 俺が肩を叩くと瞬時に体をひねり、パンチをキメてくるリタ。


「ぐぇ…やめろ、俺は別に体を鍛えてる訳じゃないんだぞ…」


 そう呟くと俺の意識は闇に吸い込まれていった。



「ん?」


「お、起きたか?」


「リタ?どうしたんだ?俺は…」


 うっ、さっきまでの記憶がない。何をしてたんだっけか?


「す、済まない。私がお前を殴って気絶させてしまったのだ」


「そういや、そんなことがあったような…いてて」


 確かに殴られた所を触ると痛みがあるな。


「動くな。一応、治癒魔法をかけておいた。しかし、私はそこまで得意ではないから、完全には治っていないのだ」


「ん?でも、ヴァリアブルレッドベアーの傷を治した時は?」


 あの時の怪我は割と深かったし、治るのも早かったはずだが…。


「あの時はセドリックがいただろう?2人で使うと相乗効果で効力が上がるんだ」


「そうだったのか。しかし、流石は伯爵家のベッドと枕だな。いい寝心地だぜ」


 体の方もだが枕の感触も柔らかくて俺好みだ。もちろん王宮のやつも豪華だったが、野宿した身としては、やはり高品質なのはいいよな。


「ば、馬鹿を言うな。いいから寝ていろ」


「お前はどうするんだ?」


「今は殿下の見張りをセドリックがやっているからお前が寝たら交代する」


「いいのか?俺がやらないと明日寝不足になるんじゃないのか?」


 いくら俺を気絶させたからってそこまでしてもらわなくてもいいのによ。


「ふっ、心配するな。我々は元々騎士なのだ。野営にも慣れているし、この程度では差し支えない」


「そうか。なら遠慮なく…」


 まだ体が重いと感じた俺は気持ちの良いベッドと枕で再び眠りについた。



「まったく何が寝心地のいい枕だ。人の膝をなんだと思っている…」


 ロウが寝付いたのを見届けると、私は膝からロウの頭を離して枕に持っていく。


「さて、セドリックと交代しないとな。面倒をかけるやつだ全く…」


 その面倒を作ったのが自分なのを棚に上げて、気分良くリタは隣の部屋へと向かった。



「ふわぁ~」


「起きたか?」


「リタか、おはよう」


「うむ。おはよう、ロウ」


「へ?」


 まさか、こいつが普通に挨拶を返すなんて明日は雨か?


「もうすぐ、食事の時間だぞ。早く用意をしろ」


「あ、ああ」


 戸惑いながらもリタに言われて、俺は鎧を着こむ。食事の後は直ぐに邸を出発するからだ。



「はぁ~、今日も疲れたわ」


「殿下。お疲れ様です」


「うむ、伯爵はよほどお前が気になるようじゃの。朝もなぜおらんのかと聞いて来たわ」


「何と答えられたのですか?」


「初めての護衛で疲れておるから休ませておると言っておいたわ。間違いではないしの」


「そりゃあ、ありがたい。ついでに飯は?」


「もうすぐ持ってくるはずじゃ。リタも一緒に食うじゃろ?」


「はっ!」


 それから、3分ほどでセドリックが俺たちの飯を運んできてくれた。


「ありがとな、セドリック」


「問題ない、リタも持って来たぞ」


「悪いな」


 伯爵家の朝食はサンドイッチだった。まあ、野菜と肉を一緒に取れるし悪くないな。


「ん?どうした?」


「いや、案外よく食べるんだなと思ってな」


「まあこれでも育ち盛りだからな!」


「そうか」


「なんじゃお前ら、仲がいいのう」


「殿下!」


「別に護衛同士の仲が良いのはいいことじゃろ?それより、手が止まっておるぞ」


「も、申し訳ありません」


 こうして朝食も終えた俺たちはベイルン伯爵に軽く挨拶をして、調査に向かった。




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