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食事とベイルン伯爵領

「飯っていっても、そこまででかい店じゃないんだな」


「ああ、ここは知り合いがやっておる店なのじゃ。融通が利くのじゃよ」


 魔物と遭うこともなく街に到着した俺たちは、あるレストランの前に来ていた。大きくない店だが、知り合いがやっているなら納得だ。マリナに続いて俺たちも店に入る。


「いらっしゃいませ!あら、どうぞ奥へお入りください」


 店に入るとマリナを見た途端、店員が奥へ入るよう勧める。どうやら知り合いの店というのは本当らしい。


「マリナ様、ようこそいらっしゃいました。こちらの方は?」


「新しい護衛じゃ。こう見えて腕が立つのじゃよ」


「そうでございましたか。私はてっきり…」


「てっきりなのじゃ?」


「いえいえ、どうかごゆるりとお過ごしくださいませ」


「ありがたいのう。しかし、少し急いでおってな。食事だけ取りに来たのじゃ」


「そうでございますか。残念ですが、心を込めて作りますのでお楽しみください」


「うむ!」


「さっきの爺さんが知り合いか?」


「ああ、爺やは少し前まで、わしの世話役だったのじゃ。しかし、体を壊してしまってのぅ。隠居したあとはここでレストランをしておるのじゃよ。案内してくれたのが爺やの孫娘じゃ」


「へ~、それで親しげだったんだな」


「うむ。やめてしまっては中々会えないからの。こういう機会には利用しておるのじゃよ」


「なるほどな。で、うまいのか?」


「当たり前じゃ!わしは身内贔屓はせんからな」


 マリナの言う通り、運ばれてきた料理はどれもおいしかった。正直、晩餐の時に食べた料理と変わらないぐらいだ。一体何者なんだ、あの爺さん。


「爺やが何者かとな?普通の執事じゃが?」


「執事が何で料理がうまいんだよ」


「さあ?じゃあ、切るのは得意とか言っておったのう」


「うっ…」


 なんだかこれ以上聞くのは不味い気がしたので、それ以上は突っ込まないでことにした。


「さて、出発じゃな。また来るぞ!」


「いつでもお待ちしております」


「うむ!」


 こうして食事も済ませた俺たちはいよいよ伯爵の邸を目指し進んでいった。




「マリナ様、草原を無事に抜けました!」


「ご苦労だったの。けが人は?」


「けがをしたものはおりません!これも新しい護衛騎士殿のお力添えのお陰です」


「いや、みんなが体を張ってくれたからだ。俺は攻撃しただけだしな」


「しかし、あれだけ早いブリッツキャットなどを見事な腕前で仕留められましたし…」


「褒められておるのじゃ。素直に受け取れ」


「そういうことなら」


 草原は安全と言っても魔物に出くわさない訳ではなく、街を出ると2度ほど魔物がやってきた。その中でもブリッツキャットという魔物は大型の猫型の魔物で、鋭い爪と牙に素早い動きで騎士の剣を寄せ付けなかった。しかし、アラドヴァルの弾丸の速度には反応できず、射程ギリギリから一撃で仕留めたのだ。


「アラドヴァルといったの。本当にいい武器じゃな」


「射程の限界まで進むことを考えなければな。弾の残りは11発か」


 昨日使った分は俺の魔力を使って補充されたから朝の時点で弾は装弾数MAXの13発だった。ブリッツキャットに2発使ったから残りは11発。


「こう考えるとちょっと少ないよなぁ」


「何がじゃ?」


「アラドヴァルが1日に撃てる回数だよ。魔物が多いと直ぐに撃てなくなる」


「そういえば、城下に出てないからまだサブウェポンを持っておらんのじゃな。帰ったら一緒に見に行くか!」


「いいのか?マリナも城下町に行って」


「うむ!それにわしがおった方がロウにもいいぞ。王女の紹介をむげにはできんからの」


 なるほど。確かにマリナが店にやってきてこんな若造に…なんて言えっこないよな。


「それは正直助かる。でも、サブ武器って言ったらやっぱり騎士だし剣か?」


「普通はそうじゃな。それに剣だとリタやセドリックに稽古をつけてもらえるぞ?」


「セドリックはともかくリタに稽古か…しばかれそうなんだが」


 これまでのやり取りを思い出して、俺は寒気を感じた。


「それはお主の普段の行動の結果じゃろ。諦めよ」


「帰るまでにもう少し考えてみる」


「諦めが悪いのう…」


 それから2時間ほど進むとさっきより大きな町が見えてきた。




「おっ、見えたか。あれがベイルン伯爵領の領都ビスチャートじゃ」


「へ~、城壁も立派だし問題がありそうには見えないな」


「まあ、領地はあそこだけではないからの。さあ、もう少しじゃ。皆の者、気を抜くでないぞ!」


「はっ!」


 マリナの呼びかけに騎士団が返事をする。う~ん、こういうところを見るとこいつも立派な王族なんだだよな。


「なのじゃ、じろじろ見て」


「いや、たまに威厳があるなって思ってな」


「たまには余計じゃ」


「おっ、もう町に入るぞ」


「そうか。では、ちょっと鏡を見てと…」


「なんだ、セットが気になるのか?」


「当たり前じゃろ?ベイルン伯爵に失礼じゃからな」


「そっちか。俺も見てやるよ」


「お主に分かるのか?」


「あんまりわからん」


 そもそも、銃に生きてきた俺に異性の服装を見ろというのが無理難題だ。せいぜいできることと言ったら、アホ毛が出来ていないかぐらいだろう。


「正直じゃな。まあ、確認はしてもらった方が良いじゃろ」


 そんなわけで馬車の中でセットの確認をしてから俺たちは町に入った。


「ベイルン伯爵の邸って直ぐなのか?」


「いや、確かここは街の奥じゃ。10分はかかるじゃろう」


「そんな奥に作ってどうするんだ?」


「有事の際は避難所にもなる、最後の砦じゃからな。奥に作るのが理にかなっておるのじゃよ」


「ふ~ん」


「気のない返事じゃのう…」


「俺に戦争する気はないしな」


「そりゃそうじゃな」


 そもそも俺はマリナの護衛騎士だ。王族の護衛が戦争にかり出されることなんてないだろう。


「マリナ様。ベイルン伯爵邸に着きました。門番に取次ぎをしますがよろしいですか?」


「うむ」


 ほどなくして、伯爵が出迎える準備を済ませたということで馬車は敷地に入っていった。




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