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髪と雑談

 会話中もネリアは俺の着替えを手伝ってくれており、服装に関してはまるで別人のようだった。


「これ本当に俺か?」


 鏡の前に立つと髪はそのままだが、きりっとした格好の俺がいた。なんか変な気分だな。


「後は御髪を整えさせていただきますので、こちらにお座りください」


「分かった」


 俺が座るとネリアが髪を梳かし、セットしてくれる。


「分け方はこれでよろしいですか?」


「ああ」


「では、後は整髪料を塗らせていただきますね」


 やや右寄りのセンターに分けると、ネリアが整髪料を塗っていってくれる。いい匂いだし、気持ちいいな、これ。


「ネリアってマリナ付きだからこういうのも女性だけかと思ってたけど、男性の髪のセットもできるんだな?」


「はい。メイドは様々な状況を想定した訓練をいたしますから」


「練習は誰でしたんだ?」


「恐れながらセドリック様に」


「セドリックに?大変じゃなかったか?あいつ、いいやつだけど口数が少ないだろ?」


「そうですね。口数は少ない方ですが、重要なことに関してはきちんと言っていただけましたので問題ありませんでした」


「う~ん、それにしてもセドリックとネリアか」


「どうかなさいましたか?」


 俺は2人が今の俺たちのようにいる光景を思い描く。


「いや、あいつも堅物だしでかいだろ?ネリアと並んでも違和感ないな~って思ってさ」


「そ、そうですか。そう言っていただけると光栄ですね。相手は親衛隊の騎士様ですし」


「やっぱり、親衛隊の騎士って偉いのか?」


 俺からすれば、王女付きのネリアも変わらないと思うんだが。


「もちろんです。精鋭ぞろいで王家に忠誠を誓った方々の集まりですから」


「そういや、リタの奴も騎士学校の首席卒業とか言ってたな。エリートばっかりならそりゃそうか」


「リタ様は今や女性騎士のあこがれですよ。間近で姫様をお守りされておりますし、視察の際もついて行かれますから」


「別に見た感じ普通なのにな」


「きっとそれはロウ様が特別だからですよ。男性の騎士でも中々リタ様には近づけませんから」


「なんだよ。騎士ってのは案外ヘタレてんだな」


「ふふふっ、王宮の騎士たちもロウ様にかかれば形無しですね。ですが、あまり外では…」


「そうだな。気を付けるよ」


「さあ、これでセットは完了です。お飲み物はよろしいですか?」


「そう言われるとのどが渇いた気がするな。頼むよ」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 ネリアは余った服を片付けて部屋を出ていく。それから少しして、ティーセットを持って戻ってきた。



「ではお入れいたします」


「ん?ネリアの分は?」


「私は使用人ですので、仕えている方と一緒には取りません。どうぞお気遣いなく」


「う~ん。そう言われてもなぁ。こういう扱いには慣れてないんだ。慣れるまで頼むよ」


「…よろしいのですか?」


「ああ、できればそうして欲しい。せっかくのお茶の味も分からなくなる」


 メイドさんに見られながら自分だけ飲むなんて絶対、味も分からないだろう。


「クスッ、ではすぐにカップを持ってまいります」


 ネリアはササッと部屋を出ていくとすぐに戻ってきた。



「それではいただきます」


「ああ」


 俺もお茶に口を付ける。多分紅茶だろうけど、香りからしていいんだよなぁ。


「ん?そういえば、どうしてカップを入れ替えたんだ?」


「ロウ様のものは注いでから時間が経っておりましたので。紅茶には最適な温度がありますから」


「それぐらいなんでもないのに」


 大体、紅茶と言えばコンビニか自販機で売ってるやつしか飲まない俺には違いが分からないのにな。


「いいえ、おもてなしをするのに手は抜きたくありませんから」


「ネリアは真面目だなぁ。にしても、このお茶美味いな」


「ありがとうございます。まだ、習って少しなのですが…」


「そうか?十分だと思うけどな」


「普段は姫様も召し上がっておられますし、きっと茶葉のお陰ですね」


「どうだろうな?今度マリナにも飲んでもらったらどうだ?」


「私がですか?ミスティア様を差し置いてそれはできません!」


「そこはこだわりがあるんだな…」


「もちろんです。ミスティア様は何年も姫様に仕えておられます。あの方を差し置いてなどとてもできません」


「メイド同士、仲がいいんだな。マリナに仕えるのに権力争いとかないのか?」


「ないわけではありませんが、姫様に仕えるのにそれを出すものはおりません。できるだけ中立になるように考えられてもおられますし」


「それならよかった。あいつ、結構気を遣うみたいだしな」


「はい。私たちにもよくしてくださいって素晴らしい方です」


「後は無茶をしなければいいんだけどなぁ」


「そうですね。王族としての責任感が強いお方ですので、心配です。ですから、ロウ様にはこれからも姫様をお願いします」


「これからと言われてもな。俺は旅人だし」


「ですが、その鎧の傷は姫様をお守りになられたものでは?」


「守ったっていうか、マリナを狙っていた魔物と出くわしたって感じだな」


「そうなのですか。ですが、どちらにせよ助けたいただいたことには変わりありません。どうか、お願いします!」


 急に立ち上がり頭を下げてくるネリア。


「うっ、そう頼まれてもな。マリナが言ってきたらだぞ?こっちはただの平民なんだから…」


「ありがとうございます。願いを聞き届けて下さった恩は一生忘れません!」


「いや、やるとも決まってないし」


 このネリアの反応の方がよほど親衛隊っぽいなと思う俺だった。


「いいえ。こちらの部屋に姫様が案内されたことといい、きっとそうなります!」


「断言されてもなぁ」


 そんな会話をネリアとしながら、紅茶のお代わりも貰いつつ時間は過ぎていった。




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