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転生したら伝説の魔女でした

作者: Tokyo Secession

「うわ、どうしよ。ぎりぎり遅刻しないよね?」

25歳の佐藤真理は、その日も朝から焦っていた。東京の狭い路地を足早に歩きながら、スマートフォンで時間を確認する。

「まだ大丈夫。電車に乗れば間に合うはず」

真理は、まさに横断歩道を渡ろうとした時、目の前で轟音と共に自動車同士が正面衝突した。

悲鳴を上げる間もなく、跳ね飛ばされた車体が彼女に直撃した。鈍い痛みを感じたかと思うと、意識は次第に遠のいていった。

目を覚ますと、そこは深い森の中だった。木々の間から射し込む日差しに目がくらみ、頭を抱えながら起き上がる。

「一体ここはどこなの?事故で私は死んだはずでは…?」

森の奥から、ゆっくりと人影が現れた。金髪に白いドレス姿の美しい女性だった。

「おや、お目覚めか?よくぞ我らの世界に来てくれた」

女性が微笑みながら言った。しかし真理はただ戸惑いを深める一方だった。

夢なのだろうか、それとも...?そう考えるうちに頭がぼんやりとした。目の前がにじみ、森や女性の姿が次第にゆらいできた。

「リリアーナ、私の姿を見ればわかるはずだ」

夢でもなく現実でもなく、ただ記憶の中を漂っているような感覚に襲われた真理。

リリアーナ...その名前に思わず夢中になり、次第に意識が遠のいていく。そして見覚えのある光景が目に浮かびはじめた。

中世ヨーロッパを思わせる、城塞に囲まれた村。

そこで真理は、がらんどうのワンピース姿の少女として暮らしていた。

リリアーナと呼ばれるその少女は、のちに魔法使いとして活躍することになる。

しかし、やがて魔王ザラトラスの野望によって未曾有の戦乱に巻き込まれていく。

目まぐるしく記憶が駆け巡る中で、真理はついに前世のすべてを思い出した。

「カール師匠...私はリリアーナの生まれ変わりとして、この世界に転生したのですね」

老魔法使いの男性が微笑みながらうなずいた。

「そうだ、お主はリリアーナ。かつてこの世界を守ろうと戦った勇者そのものなのだ」

カールは真理の前世の師匠だった。そしてすぐ隣に佇んでいたのは、騎士マーカスの姿だった。

「リリアーナ、よくぞ目覚めた。しかし、まだ前世の力を取り戻す修行が残されている」

カールの言葉に、真理こと前世のリリアーナは力強くうなずいた。


リリアーナは前世の記憶を取り戻すべく、師匠のカールと恋人のマーカスに導かれ、日々修行に精を出した。

初めは単なる呪文の暗唱からスタートした。

しかし、徐々に前世の技や知識が蘇り、本来の力を取り戻していった。

そしてある日、ようやく前世の力の手ごたえを感じ始めた頃、突如として邪悪な魔法使い集団の襲撃を受けた。

「リリアーナの生まれ変わりがこの世にいるということか!ならばお前たちこそ、我らの懐に飛び込んでくれたも同然だ!」

一行を見下す魔法使い集団の男の声が響いた。彼らは魔王復活の陰謀に加担していた者たちだった。

突如、魔法の光弾が飛んできてリリアーナの額に命中する。勢いにのまれ、リリアーナは吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。

「ぐっ...このままではリリアーナの力を取り戻せない!」

周囲の凄まじい魔力に怯えるリリアーナ。それでもマーカスは落ち着かせようと言った。

「リリアーナ、落ち着け!今は一旦退こう」

一行は城に退いた。リリアーナは深く反省し、自らの心の内を見つめ直そうとした。

「私には確かに前世の力が戻りつつあったはずなのに、なぜこんな有様になってしまったのだろう」

そうこころなやむ中、リリアーナはある重要な記憶を思い出した。 前世で魔王に倒された最期の日のこと。魔力の源泉であった青い宝石を、魔王に破壊され奪われてしまったのだ。

「そうか、リリアーナの力の源は、あの宝石にあったのね」

その瞬間、リリアーナの中に眠っていた前世の記憶と力が一気に呼び覚まされた。大切にしていた青い宝石を奪われたことで、魔力が著しく低下し、やがて命を落としてしまったのだった。

「よし、行くぞ!今こそリリアーナの力を取り戻す時が来た!」

リリアーナは強い決意を胸に刻んだ。一人で敵の根城に乗り込もうとしたが、マーカスが同行を申し出た。

「リリアーナ様は一人で行かせない。共に戦おう!」

リリアーナはそれを快く許可した。二人は手を取り合い、根城の奥へと足を踏み入れていった。

幾つもの魔法の障壁が現れるが、リリアーナの応酬する呪文が苦もなく物凄い威力で障壁を打ち破っていく。爆発と轟音が響き渡る中、ついに奥の広間に辿り着いた。

そこで待ち受けていたのは、黒魔術師バルトロだった。彼こそがこの世界に魔王復活を企てた首魁だったのである。

「ハハハ!よくぞここまで踏み込んでくれたな!リリアーナの生まれ変わりめ!」

バルトロはリリアーナの姿を認め、狂気じみた笑みを浮かべた。復活させようとしていた魔王の力を、リリアーナの生まれ変わりから吸収しようと考えていたのだ。

「黙れ邪悪なる者よ!リリアーナの魔力を以て、お前を倒してみせる!」

リリアーナはバルトロに宣戦を布告した。熾烈な魔法バトルが始まった。

リリアーナの呪文の数々をバルトロはなんなく防いでいく。

しかし、リリアーナの手にした青い宝石から、徐々に強力な魔力が放たれ始めた。

「な、なんと凄まじい魔力じゃ!しかし、まだ私には言っておくことがあろう」

バルトロは残り少ない体力を振り絞り、リリアーナに重要な事実を告げた。

「魔王復活の儀式はもうすぐそこで行われる!お主らがしつこければ、その目で見届けることになろうてな!」

バルトロの告げた場所を手掛かりに、リリアーナとマーカスは即座に仲間たちと合流した。


「みなさん、魔王復活の陰謀は、この先にある古代遺跡で実行されようとしているわ!」

仲間を復帰させた一行は、早速遺跡へと乗り込んでいった。そこで待ち受けていたのは、魔王軍の総長ザガートだった。

「おっとそこの若い魔女よ。私に何の用だね?」

ザガートに冷たい視線を向けられながら、リリアーナは恐れずに答えた。

「私こそかつて魔王に倒された勇者リリアーナ。今こそ主の復活を阻止すべく、この身を賭してでも戦う!」

「ふん、勇者リリアーナの生まれ変わりがここにいるとは。だが、お前に何ができようか」

ザガートはリリアーナを挑発するように、魔王復活の儀式の場である巨大な魔法陣を示した。魔法陣は既に活性化され、明滅を始めていた。

「魔王ザラトラス復活の時がついに来たわけだ。貴様らの力など、とても及ばん!」

リリアーナの前に、マーカスをはじめとする仲間たちの姿が浮かんだ。前世で魔王に敗れ去ったあの時の記憶と、仲間たちの絶望に打ちひしがれた表情が脳裏を去来した。

「あの時は私が無力だったが、今こそチャンスがある!今度こそ貴殿を止めてみせる!」

リリアーナは自らの決意を新たにして、秘められたすべての魔力を解き放った。青い宝石から放たれる強力な光に、リリアーナの魔力が増幅されていく。

「邪悪な魔王ザラトラス!リリアーナの最後の力を以て、今こそ貴殿を永久に封印せん!」

天地が揺らぎ、大地は引き裂かれるほどの強烈な魔法が、ザラトラスの魂を直撃した。この魔法の前に、ザラトラスの魂は抑え込まれ、やがて完全に封印されていった。

一方、リリアーナの魔法はザガートの肉体にも命中し、敵の首魁を吹き飛ばしてしまった。

「うわあああっ!リリアーナの化身め、何をするっ!」

ザガートは逃げ惑うものの、マーカス率いる騎士団に追撃され、ついには力尽きた。

「くっ、ザラトラス様は必ず....必ずや...」

そう言い残し、ザガートは遂に命を落とした。魔王ザラトラスの復活を企んだ陰謀は、ここに完全に終止符が打たれた。

リリアーナたちの活躍により、世界に平和が戻った。やがて都に凱旋したマーカスは、リリアーナに対してある質問をした。

「リリアーナ、実は前世で私たちは恋人同士だった...」

マーカスの言葉に、リリアーナは驚きを隠せなかった。前世の記憶がよみがえり、二人のマーカスの言葉に、リリアーナは驚きを隠せなかった。

前世の記憶がよみがえり、二人の出会いや恋愛の日々が走馬灯のように蘇ってきた。

「マーカス、あなたが前世で私の恋人だったことを今更ながら思い出しました。私たちはずっと一緒にいたのですね」

リリアーナの目から涙が零れ落ちた。マーカスもまた感極まった表情で頷く。

「そうです、リリアーナ。あなたこそが私の唯一の恋人であり、この世界の守り手なのです」

別れた日々を取り戻すかのように二人は抱き合った。しかしリリアーナには、まだやらなければならないことがあった。

「マーカス、私にはまだ務めがあります。世界中に魔法を広め、次の世代を育てる役目があるのです」

「それならば私も同行させてくれ。二人三脚で新たな道を切り開こう」

しかしリリアーナはそれを静かに断った。

「いいえ、今はまだ一人で旅立たなくてはなりません。前世の過ちを繰り返さぬよう、自分自身を磨かねばならないのです」

前世で魔王軍に屈し、仲間を守れなかったことが、リリアーナの大きな過ちだった。今こそその過ちを正すべく、自らの力を高める必要があった。

「分かりました、リリアーナ。しかし必ずまた会えると信じています。その日まで私は貴女を待ち続けましょう」

マーカスはそう言って微笑んだ。リリアーナも同じく微笑みを浮かべ、新たな旅立ちに思いを馳せた。


数年の歳月が経った。

リリアーナは前世の後悔を乗り越え、見事に魔法の心得を体得していった。

世界中を巡り歩き、多くの者に魔法を伝授した。時に厳しく、時に優しく、次の世代に勇気と希望を与え続けた。

そうした活躍が実り、魔法は世界中に広く浸透し、人々に欠かせないものとなっていった。

やがてリリアーナは高齢を重ね、隠者の生活に入った。だが決して一人ではなかった。

マーカスをはじめ、かつての仲間たちが最期の時を見守っていた。

「私は誇りに思う。前世で魔王に屈し、仲間を守れなかった過ちを、今生では正すことができたことを」

「リリアーナ様、私こそが貴女をこの世界に呼び戻したことを光栄に思います」カールがそう言った。

「戦いを共にした絆は永遠に続く。次の世代がさらにその絆を紡いでいくだろう」マーカスが力強く言う。

リリアーナの冒険譚は世界中に語り継がれ、多くの人々に勇気と感動を与え続けた。邪悪な力に立ち向かい、愛する者を守り抜いた、伝説の女魔法使いの物語は、永遠に消えることがない。

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