黒 い 記 憶 と 赤 い 果 実
外は相変わらず雨が降っている。
慄「ほんとに何も思い出せないのか…?」
秋「はい…ごめんなさい…」
慄「いやいや…そっか。」
秋「慄さん…ですよね。」
慄「慄君、でいいよ。」
秋「慄君…あの…私は…なんで記憶がないんでしょう…」
慄「…」
秋「…あ…ちょっとトイレにいって…き…ま…‥」
立った瞬間、秋は倒れてしまった。
慄「千草!!」
抱きかかえると、ただ気絶しただけだと分った。
慄「でも、なんで気絶?」
小部屋で片づけをしている由紀先輩達の所に行ってみた。
慄「由紀先輩!!庄まで…一体…」
全員が気絶していた。体をゆすっても、起きる気配がない。
慄「なんで俺だけ無事なんだ?」
?「あなたに話があるからよ。」
慄「おまえ…だ…誰だ!?」
そこには小さな子供がいた。
子供、というよりは妖精、と言ったほうが早い。
?「私に驚いているようね。私はカシス。この世界の全ての
人々の記憶をつかさどる神。」
慄「で…なんなんだ、話って。」
カ「実はね…この子、秋さんの事なんだけれど。」
慄「…?」
カ「秋さんね…ただの人間じゃないのよ。この事はこの子も、
この家族にも知られていないわ。」
慄「ただの人間じゃ…ない…?」
外の雨音だけが力なく部屋に響いていた。