ゆいこのトライアングルレッスン・スピンオフ 〜続 ゆいこが転生したら〇〇だった件〜 「転生したら未来で性別が変わりました」
下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオの人気コーナー「ゆいこのトライアングルレッスン」のスピンオフに応募した作品です。
女性を演じる男性声優さんもいるのだから、巽さんのちょっと低めのお声で男性を演じるのを聞いてみたい!という思いから生まれた作品です。
「あっ起きた?そろそろ本番始まるぞ!あーひろし、お前もこんな時間まで小説読んでないで準備しろよ。」
「わかってるよ。」
(たくみもひろしも、なんか大人になってない?格好も制服じゃない。本番って何?)
あたりを見渡すとどうやら楽屋らしい。机には重厚感のある冊子が置いてある。ふと鏡を覗き込むと知らない男性がいた。
(誰だろう…?ん?鏡に写っているってことは私っ?)
「えっー!」
(あれ?声も低い。あっそうか女子高生じゃなくて、この見た目だったら当然か。いやいやいや?納得してる場合じゃないでしょ?)
「どうしたぁ?なに、自分の顔見て驚いているんだよ。」
「寝ぼけてんだろ。大丈夫か?ほら、台本忘れるなよ。」
ひろしから、机にあった冊子を渡される。
「あっあぁ。ありがとう。」
(大丈夫じゃないよっ!何この厚さ?何するの?)
ページをめくり、蛍光ペンのラインや色ペンの書き込みを見て、これから自分が朗読劇に出演をするということを理解する。
(今、初めて台本見るのに、いきなりお客さんの前に立つってこと??演技なんてしたことない!ムリーッ!)
そう思っている間に、たくみとひろしはすたすたと舞台へ出ていってしまう。
(あーもー。どうにでもなれー!)
台本を携えて、照明の光の中へと歩んでいく。
拍手の渦に包まれて朗読劇は終わった。不思議なことに体が覚えているようで、初見のはずなのに、セリフもすらすらと出たし、クライマックスでは感情もノッてこぼれそうな涙を堪えて演じきった。
楽屋に戻ってきたら、ぐったりしていた。目覚めてから、わけのわからぬまま舞台に立ち、登場人物に感情移入して、今はたくみとひろしが片付けをしているのをぼーっと見ながら、少しずつ状況を把握してきた。どうやら、たくみとひろしと自分は、そこそこ知名度のある、男性声優グループらしい。
「おーい。どうした?放心状態?なぁ、ひろし、こいつになんとか言ってやって。」
「悪い。ゆっくり相手してやりたいんだけど、今夜中に、俺とたくみは墓参りにいかなきゃいけないんだ。お前も一緒にこいよ。話はそのあと聞くよ。」
(まさか、自分の墓参りをすることになるなんて、複雑…。)
私は、10年前のこの日、塾が終わってたくみとひろしを待っているときに事故にあったとのことだった。
「今さら、ああしたらよかったとか、こうすれば違っていたかもしれないなんて言っても仕方ないことはわかってる。それでも俺はゆいこが好きだった。これだけは譲れない。ひろしだってそうだろう?」
アルコールが回ったたくみは若干呂律があやしくなりながら、ひろしに振る。
「そうだな。10年経った今でも変わらない。」
日本酒を啜りながら答えるひろしは、あの頃と同じように口数は少ない。そこにたくみが口を挟んでくる。
「それにしても。今日、お前なんか変だっだじゃん。それが何故かゆいこを思い出したんだよなぁ。」
「そうかな…?」
(だって、私、ゆいこだもん。でもそんなことは答えられない。今の私にできることは、この身を借りて生きていくことしかないんじゃない?あの頃、3人でずっと一緒にいたいと思った気持ちは、転生した今も変わらない。)
「まぁ。これからもよろしく。」
「何だよ、それ?」
「よくわからないけど、まぁいっか。よろしくな。」
ひろしのツッコミと、たくみの受け入れに心地よさを感じながら、新たなトライアングルの幕開けを予感したのだった。
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