花咲社
花に絡めた短き歌です。
一つ一つに関連性はないので、
それぞれ別のものとしてお読みください。
『花咲社』
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月恋し 仰ぐも叶わず 満天星の花
地に輝けど 愛しきは何処
宵闇の 社に灯る 花明り
散る花びらに 重ねる姿
時経てど 瞼に浮かぶ その笑顔
囁くように 名前呼ぶ声
八重と咲く 寄せた想いを 山と振り
寄せる想いは 実を結ぶことなく
華やかに 黄金に染まる 連翹の
伸びゆく様に 子らを重ねて
露に濡れ 霞晴れれば 空に溶け
共に在りたい 勿忘草
春の陽に うつらと揺れる 眠花
俯く花弁に 肩を寄せて
桜花 鶴の舞う丘に 咲く盛り
白く彩れど 君は彼方へ
【解説】
『つきこいし あおぐもかなわず どうだんのはな
ちにかがやけど いとしきはいずこ』(満天星躑躅)
どれほど星のようと言われても、私の想うあなたは彼方にあって仰ぐ事すら叶いません。
『よいやみの やしろにともる はなあかり
ちるはなびらに かさねるすがた』(桜)
暗い夜の中にあってもそこだけが明かりが灯ったように見える、桜のようなあなた
散りゆく花びらが見せる儚さもまた、少し目を離せば消えてしまいそうなあなたそのもののようです。
『ときたてど まぶたにうかぶ そのえがお
ささやくように なまえよぶこえ』(勿忘草)
どれほど時が過ぎても、あなたの笑顔も、その声も
忘れることが出来ないままでいます。
『やえとさく よせたおもいを やまとふり
よせるおもいは みをむすぶことなく』(八重山吹)
どれほど多くの方が想ってくださろうとも、私が想う人はただ一人なのに、その方が私を振り向いてくださることはないのです。
(八重山吹は花を咲かせても実はならない)
『はなやかに こがねにそまる れんぎょうの
のびゆくさまに こらをかさねて』(連翹)
春先にまっすぐに伸び黄金色の花を咲かせる連翹は、これから育ちゆく子供たちの眩しさにも似ている。
『つゆにぬれ かすみはれれば そらにとけ
ともにありたい わすれなぐさ』(勿忘草)
湿地に咲く勿忘草は、朝靄が晴れれば空の色に溶けてしまいそうで、私も勿忘草のように空の中に溶けていくことが出来れば、いつでもあなたのそばに居られるだろうか。(そうすれば、忘れずにいてくれるのに)
『はるのひに うつらとゆれる ねむりばな
うつむくかべんに かたをよせて』(海棠)
春の暖かさに誘われて眠たくなってしまった君。そのまま倒れてしまわないように、俯き加減の君の頭に肩を寄せよう。
(ほろ酔いになった楊貴妃が少し眠たそうになったのを見て、玄宗皇帝がその姿を海棠の花に喩えたことから、海棠は眠花とも呼ばれるそうです)
『さくらばな つるのまうおかに さくさかり
しろくいろどれど きみはかなたへ』(桜)
鶴の訪れるこの地にも桜が咲く季節がやってきた。池の周りは鶴が羽を広げたように白く美しく染まるけれど、鶴(君)はもう空の彼方へと飛び立ってしまって、共に見ることは叶わないんだね。