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第1話 異世界召還…僕じゃなく!?

どうも、珠扇キリン(あきあかね)と申します。

この作品は3年前に投稿した作品の再々編集版です!まだ1話目ですが、よろしくお願いします!

 ここに平日の昼間からベッドの上で仰向けになり、スマホの提携サイトでテレビに映したアニメを観ながら、片手間にゲームの周回をしている怠惰な男が居た。


 男の名前は茅野築かやの きずく、一人暮らしをしながら専門学校に通う学生だ。バイトはしていないし、最近は学校にも行かずに本格的に親の脛を齧っているクズ…悲しきかな、僕である。


 そんな僕の人生を変える衝撃の出来事が起ったのは、4月15日の10時55分…──いきなりだが、今から約32秒後の事だった!

 ──────。


「なっ!?…何だこれ!?」


 突如として床が燦々と輝き始めたのだ!…良く見ると部屋の床全体に謎の紋様が浮かび上がっている。まるでそれはアニメやゲームで出てくる魔法陣の様で…──もしかして今観てたアニメみたいに僕も異世界に!?…


「…──はがァッツ?!」


 そんな期待に思いを馳せてベッドから身体を起こした瞬間、僕の腹部に突如として強い衝撃が走った。声も出ない程、不快で強烈な痛みに僕は目を閉じて堪らずうずくまる。…なんだ!?腹の上に何か落ちて来た!?


「イタタタっ…何だよもう、痛いなぁ…ここ何処だよ~…」


 僕が腹部の痛みに耐えていると、部屋から聞こえる筈のない女の子の声が聞こえた。それに驚いて目を開けると、あの輝きも魔法陣も幻だったかの様に消えていて…俺の部屋の床に白髪はくはつの美しい少女が座り込んでいた。


「あー…えっと、お前誰ぇ?…」


 いや、それはこっちのセリフだ。…というか、僕の部屋に謎の美少女がいる?…今ままで男友達ですら入れた事の無い僕の今の部屋に女の子が…


「あの、聞いてる?…私の顔をじっと見てないでさ、質問に答えて欲しいんだけど~?…」


 全く状況は分からないが、自分の部屋に女子が居るという奇跡に感動していると、目の前の美少女が僕に話しかけてきた。どうしよう…長いこと女子と話してないせいで、一言を口にするだけなのにめちゃくちゃ緊張する。


「あのさ、黙られたら不安になるんだが?…といか、ここ何処?どっかの建物の中みたいだけど…」


 どうやら目の前のこの子は、如何いかにして自身が此処に居るかも分かっていない様だ。まさか僕がさらったと思われてないか?…


「…いやっ、君を連れて来たのは僕じゃない!…というか気付いたら君が僕の部屋に…!」


「いや、それは知ってるんだけど…へぇ、此処はお前の部屋なのか」


 あれ?…この子、あまり動じてない?…というか、僕に攫われた訳じゃない事を理解している様だ。もしかして、この場所が何処かは知らないみたいだけど、自分が何故ここに居るかは知っているのか?


「あの、君はいったい…誰?」


「私?…私はユシリア、そっちは?」


「えっと、僕は茅野築だけど…」


「カヤノ・キズク?…変な名前、じゃあ私の事はユーシーで良いよ、皆んなはそう呼んでるから」


「えっと…じゃあ、僕の事も築で良いよ」


 ナチュラルに距離を詰められた!?…何か普通に自己紹介とかしちゃたし…というかこの子、普通に日本語喋ってるけど明らかに日本人じゃないよね?ハーフ?…てか冷静になって考えてみたら、あの魔法陣の後にこの子は現れたんだよな?…えっ、つまり彼女は異世界人?…マジで!?


 いや、まだ決めつけるのは早いか?…そういやローブを羽織っているので全体像は見えないが、下に何か変な格好…というよりはコスプレらしき服を着ている。これがコスプレじゃないとしたら…その場合はもう状況的にそれしか説明が付かないけど…


「それで?キズク、此処は何て名前の国なの?何か部屋も見た事のないタイプの内装だけど…」


「えっと…ここは日本って国で都市よ」


「ニッポン?…聞いた事のない国だな。まぁ、それもそうだよね〜、ここって異界ってやつでしょ?」


 えっ!?…この子、もしかしなくても此処が異世界だって知ってる?…つまり自分でこの世界に…異世界転生して来たって事か!?


「つまり、勇者が死ねば別世界に飛ばされるってのは本当だったわけか〜…」


「えっ、勇者?…ユーシーって勇者なの?てか、死んだって…」


「…改めて自己紹介するよ。私の名前はユシリア・メルベルク・ラ・フォーリ、剣聖の家系にして今世の勇者だ」


 そう言って彼女は白く美しい長髪をなびかせて立ち上がった。白い肌に煌めく眩しい程の金色の瞳が僕を見つめて…翻ったマントからは青い服と銀の鎧が顕になる…本当に彼女は、異世界から来たんだ。


「という訳で…──これから私、どうしよ〜…」


 さっきまでの凛々しさと覇気は何処へ、彼女は先程とは打って変わってだらしなく…そして許可無くベッドに倒れ込んだ。えっと…これが、勇者?……


「ねぇねぇ、キズクこれ何?」


「えっ?これ…これは、ポテチだけど…」


 ユシリアが指を差したのはベッドの前にあった机の上のポテトチップスだった。ちなみに僕は薄塩派だから、当然ながら彼女が指差したそれも薄塩味だ。


「ポテチ?…これは軽いけど、武器じゃないよね?」


「塩味のお菓子だよ、コーラって飲み物と飲むと更に美味い」


「うまっ…何これ!?何処で売ってるの!?」


 気付いたら勝手に開けて食べていた。どうやらお気に召したらしい…でもベッドの上には無理矢理開けた反動でポテチが散乱していた。もうやりたい放題だな、この子…


「コンビニとかスーパー…というか普通の店なら売ってあるけど…それ片付けてね?」


「こんびに?…そこ行きたい!連れてって!」


 ◇


 …という訳で何故か僕は、異世界から来た勇者らしい美少女と何故かコンビニに来ていた。この子の容姿やローブ姿せいもあるけど、めちゃくちゃ目立つ。


「この世界って凄いね!…見た事無い物ばかりだ!…──これは何?キズク!」


「えっと、カップラーメンって言ってお湯を入れると3分で食べられる『麺』?ってあるのそっちには?…てか、声は少し抑えて欲しいかな…」


「3分で…まるで魔法だね。それよりポテチと、さっき言ってたコーラは?」


 異世界から来た君がそれを言うのか…こんな感じで家を出てずっと質問攻めされていた。結局、コンビニでもそれは続いた上、気になる物を沢山買わされた。


「それでさ、はっきりさせておきたいんだけど…ユーシーは他の世界から来た…って事で良いのかな?」


「うん、勇者だから死んでも他の世界に転生できる。古くからの言い伝え…」


 部屋に戻って来てから僕はユシリアに付いて気になっていた事を聞いていた。さっきは色々あって聞けなかったからな。


「…答えたくなかったら無理に話さなくて良いんだけど…その死んだってやっぱり魔王討伐で?」


「うん、そっ…仲間と一緒に魔王退治に行く旅の最中にぽっくり逝っちゃった」


「思ったより軽く言うんだね…いや、実際は軽くないんだろうけど…」


「まぁ、仲間は逃げきれたでしょ…何せ私が庇ったんだしさ」


 本当に思ったより気にしてないのか?…つまりユシリアは勇者として選ばれて、それで魔王討伐の旅の最中に死んで僕達の世界に来たって訳か。


「ん?…そういえば剣聖の家系って言ってなかった?」


「うん、私って剣聖の家の出身だから。勇者は必ず、王族、剣聖、賢者、聖女の家系から産まれるからね〜…たまたま私も選ばれたってわけ」


 王族、剣聖に勇者…そして聖女ってマジでファンタジーだよな。何はともあれ目の前のこの子が、その異世界ファンタジーの存在を証明している。


「う〜ん!コーラ美味い!ポテチとの組み合わせでグイグイ行けるッ!…」


 本当に異世界ってあるんだなぁ…というか、何で僕じゃないんだ?…あの魔法陣の流れは明らかに僕のターンだったろ!ズルい、僕だって異世界に一度良いから行って…み?


「なあ…ユーシー!…頼みがある!」


「な、何だよ!急に肩を掴むなよ!コーラ零れるだろ!?」


 僕はポテチとコーラを堪能している彼女の肩を強く掴んだ。しかし可能性があるなら…いや、ユシリアは死んでこっちに来たのだし、ダメ元なんだが…


「一度で良い!…僕を異世界に連れてってくれないか!」


「はぁ!?無理に決まってるだろ!私、死んでこっちに来たんだぞ!」


「異世界があるならこっちから行く方法だってある筈だ!…それを異世界から来た勇者の君にも一緒に探してほしい!…」


「嫌だよ、めんどくい!…そりゃ可能性はゼロじゃないけど、だいたい何で私がそんな…」


「これからどうしようか…って言ってたよな!?うちは両親が共働きで海外だし、姉ちゃんだって上京してる!…だから自由にこの家に住んでくれて構わない!この世界の事も教える!…──だから僕をお前の世界に連れてってくれェ!!」


「…何なんだよ、お前のその執念はさ。分かったよ…面倒だけど、この世界の事も色々教えてもらったし…まだ知りたい事もあるからな」


 そりゃ異世界には行ってみたいだろ…本当に異世界があると分かれば尚更だ。男の子は多かれ少なかれ、剣と魔法の世界や英雄ヒーローに憧れるものなのさ…


「あら〜…昼間から女の子を連れ込んで大胆ねぇ…」


 全身に悪寒が走った…背後の扉が開いた音と、その後に聞こえたその声に危険信号が鳴った。まさか、何故…だって奴は今……


「何で姉ちゃん!帰って来てんの!?」


「そんな事より、その子は同じ学校の子?彼女?」


「いや違う、彼女じゃない…てか聞いてた?」


「うん、ばっちり。『お前の世界に僕を連れてってくれぇー』…ってプロポーズ」


 最悪だ…死にたい、死んで異世界転生してしまい。何で、僕がこんな目に…というかユシリアの事をこの姉になんて説明しよう。


「私は茅野紲かやの きずな、そこにいる君は誰なのかな〜?」


「私はユシリア、異世界から来た勇者だよ」


 馬鹿正直に何で異世界とか勇者とか言ってんの!?…とは思ったが、普通は信じないから別に良いか…なら普通にクラスメイトとか言って…──誤魔化せねぇ…ユシリアって、こっち世界の人間じゃないし、家に住ませるって約束しちゃったし…


「そうか〜、異世界から来たなら住む場所無くて困ってるでしょ?うちに住みなさい」


「えっ…良いの!?いやいや異世界とか勇者とか訳分かんないこと言ってるコスプレ少女だよ!?」


「良いんじゃない?私も今日からこっちで暮らすし」


 そういや、そうだった…この姉、昔からオカルトとかUMAとか宇宙人みたいな類も簡単に信じる人だった。まだ治ってなかったのかその悪癖…


「…てか姉ちゃん、仕事はどうしたの?」


「私、仕事辞めたよ?結婚したから」


「へぇ、仕事辞めたんだ…はぁ!?仕事辞めっ…いや、結婚した!?…いやいや聞いてないし!」


「まぁ、言ってないからね。ちなみに母さんと父さんにも言ってない」


 マジかよ!?てか、それは大丈夫なのか…父さんはブチギレそうだけど…──正直、異世界から勇者(美少女)が自分の部屋にやって来ました!…なんていう、とんでもビックリイベントが起きたから、もう人生で大抵の事では驚かない自信あったのに普通に驚いてしまった。てか今日の僕、驚いてばっかりだな!


「じゃ私、この家で今日からお世話になるよ」


「うん、今日からよろしくね。ユシリアちゃん」


 そんなこんなで異世界から来た勇者・ユシリアとの出会いが僕の人生と運命を大きく変えて行く事になるのだが…この時の僕は、異世界産美少女と一つ屋根の下で暮らせる奇跡に気を取られて知る由もないのだった。


第1話 異世界召還…僕じゃなく!?《END》

最初のキャラ設定で築くんは超天才な変人だったんだけと何か色々あって普通の子になりました。

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