ユーモア
どうでもいい、が口癖になりつつある私は、洗い立てのマフラーに香るフローラルな香りに、くしゃみをした。十月の風は、どこか寂しい。ゆっくりと、確かめるつもりで、靴の裏を見る。別に何もないけれど、手持無沙汰だから、そうした。バス停でのことだ。
猫が喋る夢を見た。つい、昨日のことだ。猫は私にこういった。
「喉が渇いた」
仕方なく私は、ミルクを皿に注いで、提供した。猫は、うみゃいと言って、満足そうに頷いた。そこで私は目が覚めた。
最近は、多重夢仮説にハマっている。つまり、人は目が覚めると、さらに深い夢の世界に入ることになる、という仮説だ。そんなの、あるわけない、と思いつつ、そうだったら、おもしろいな、とも思う。
靴の裏。大地との接地面。リアリティの条件は、ここにあるのかしら。よく、地に足のついた、と言うし。
こうしているあいだにも、世界には飢えに苦しむ人がいるわけで、そんなことに思い巡らす私の残酷さを、空の伸びやかさが代わりに贖ってくれる。