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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
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009 カミングアウト1


 性奴隷を買った翌朝……


(女!?)


 目覚めたタピオは、腕の中で眠るイロナに驚くこととなった。


(……あ~。そっか。性奴隷を買ったんだった。ビックリした~。てか、本当に美人だな。でも、あんなに力が強いとは……俺じゃなかったら大事な物が取れるのは頷ける。結局、たいしたこともできなかったし……)


 タピオは昨夜の出来事を思い出し、初めての行為での気持ち良さよりも受けた痛みが勝って、タピオのタピオを触りながらホッとしている。


(本当に美人だ……キ、キスぐらいしてもいいかな? 俺が買ったんだからいいよな? 寝てるところを襲うようで気が引けるが、美人局(つつもたせ)じゃないから文句を言われないはずだ。よし!)


 タピオはホッとしたのも束の間、欲望のままに唇を尖らせ、イロナの唇に近付ける。その瞬間、イロナの両目が見開いた。


「モーニングキスというヤツか……よかろう!」


 タピオが驚いて逃げる前に、イロナはタピオの口に吸い付いた。


「ずぼぼぼぼぼぼ」


 タピオのタピオがもげるほどの吸引力で吸われたタピオは、モーニングギブアップ。タップして、なんとか離してもらうのであった。


「ゲホッゲホッゲホゲホ……」

「どうした? キスを要望していたのではないのか?」


 舌を吸い取られるどころか、肺まで吸い取られる程のバキュームキスを喰らったタピオは虫の息。いくら防御力が高くとも、内側の攻撃は(こた)えたようだ。


「そうですけど、こう……チュッという感じでいいんです。触れるぐらいで……」

「なるほど。フレンチキスというヤツだな。練習してみよう」


 ガッキーン!


「なんで~~~!!」


 フレンチキスイコール、ほぼ頭突き。スピードとパワーの乗った、イロナの尖った唇を人中に喰らったタピオは鼻血ブー。しばらくのたうち回っていた。

 そんなタピオを見下して見ていたイロナは、上から発言する。


「それにしても主殿は頑丈だな。我のテクニックに耐えるとは、本当に人間か?」


 そっくりそのまま返したいタピオ。だが、ダメージが酷く、タオルで鼻を押さえながら返事は待ってもらう。そうこうしていたらノックの音が聞こえ、イロナが裸のまま出ようとするので、ズボンだけ穿いたタピオが対応する。

 思った通り、朝食を運んで来た宿屋の従業員だったので部屋には入れず、自分で運ぶと言って追い返していた。その時「昨日はお楽しみでしたね」って目で見られていたが、タピオは気付かなかった。


 そうしてイロナにもドレスの様な服を着るように頼んだタピオは、二人でテーブルに着いた。


「温かい内に食べましょう。お話はそのあとってことで」

「ふむ。だが、口調には気を付けよ。昨日の夜から敬語になっているぞ」

「あ……わかった」


 イロナは小言を言ったが腹もへっていたらしく、バクバク食べる。どちらもマナーには疎いようだが、美味しく食べ終えた。



「さて、俺が何者か……だったな。もちろん人間だ。ただ、職業がちょっと変なんだ……」


 タピオは奴隷相手だからか、自分の過去を包み隠さず話す。三度の強姦罪で捕まったこと。全て冤罪であったこと。15年もの間、鉱山送りになったこと。

 その過程で重戦車という謎の職業についたこと。現在、勇者殺害の冤罪で逃亡中まで……


 黙って聞いていたイロナは、紅茶を飲み干してから口を開く。


「なるほどな。その職業のせいで防御力が高くなっているわけだ。合点がいった」

「……へ?」

「どうした?」

「俺の犯罪歴に触れないから……」


 呆けた顔をするタピオに、イロナは言い放つ。


「冤罪なのであろう? ならば何も問題ない」

「信じるのか?」

「我としては、主殿の言葉は絶対だからな」

「そういうことか……」


 奴隷だからの答えだったと知ったタピオは肩を落とす。だが、イロナは微笑みながら、次の言葉を発する。


「出会って一日だが、主殿が嘘を言っていないことぐらいはわかるぞ。だから信じる」

「え……」

「我は主殿に買われてよかったと思うぞ」

「うっ……うぅぅ」


 タピオは涙する。(いわ)れの無い罪で何年も服役したタピオに、その言葉は救いだったのであろう。

 その姿を見たイロナは、テーブルに突っ伏して泣いているタピオの隣に移動して、優しく頭を撫でるのであった。


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