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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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084 パレード


 イロナ先生の性的耐久テストを受けたタピオは、翌日は昼まで爆睡。魔王討伐に加え、イロナに瀕死の重傷を負わされては、いくらタピオの体が強靭でも全快までにはそれ相応の時間が必要なのだ。

 その間イロナは、タピオの腕の中で目覚め、朝食を優雅に食べ、エイニのお小言はひと睨み。またタピオの腕の中に戻って眠っていた。


「ふぁ~……つつつ。取れてない!!」


 大きなあくびと共に目覚めたタピオは股間の痛みで昨夜のことを思い出し、心底ホッとする。


「いまからするか?」


 その声で目覚めたイロナは、タピオが股間をイジッていると勘違いして手を伸ばした。


「大丈夫! 昨日ので、当分出ないから!!」

「男というのはそんなものなのか?」

「そんなもんだ。無理したら不能になってしまうんだよ」

「ふむ……立たないと我の仕事が無くなるな」


 起死回生。タピオの嘘はイロナに通って、なんとか昼からダメージを受けずに済んだのであった。



 それから食堂に顔を出すと、エイニが配膳している姿が目に入り、タピオは声を掛ける。


「あれ? アルバイトはどうしたんだ?」

「今日は勇者様の凱旋パレードがあるから、みんな見に行くらしいのでお休みです。もうすぐできますので、少々お待ちください」


 タピオとイロナが席に着くと、エイニはお茶を入れてから離れる。そうして三人分の食事の用意が整うとエイニも座った。いつものことなので、タピオは気にせず雑談しながら食べている。


「パレードか。これじゃあ鍛冶屋もやってないかな?」

「さっき外に出たら、屋台とかはやっていたんですけどね。店の場合は行ってみないことにはわからないです」

「そっか。ま、お祭りみたいなものだし、散歩がてら行ってみるよ」


 そうして食事を終えると、タピオだけエイニにチョイチョイ呼ばれて建物裏に連れて行かれた。


「こんなところでなんだ?」

「昨夜はお楽しみでしたね……」

「はい??」

「お風呂でずっと騒いでいたでしょ!!」

「あ……」


 どうやらエイニは同時刻にお風呂に入っていて、タピオたちの夜の営みに聞き耳を立てていたようだ。


「お風呂で暴れるなんてマナー違反です! 他のお客様にも迷惑になるので、今後は気を付けてください!!」


 ビシッとタピオを叱るエイニ。イロナには睨まれて一言で終わったので、その分も常識人のタピオにぶつけているらしい。


「他のお客様……」


 残念ながらこの宿にはタピオたちしかいないのだが、エイニは勢い余って「こんな時に言いいたいセリフ集(宿屋バージョン)」の中から言ってしまったのでツッコミが入った。


「いませんけど~。いませんけど迷惑になるんですよ~」

「わかった。わかったから泣くな」


 経営状況を思い出したエイニは泣いてすがるので、タピオも折れるしかなかったのであった。実際、爆発したみたいな物凄い音が鳴ってたし……



 部屋に戻ったタピオとイロナは出掛ける準備。今日は装備も外し、二人ともラフな服装で町に繰り出す。


「フンフンフン♪ おっ買い物~♪ おっ買い物~♪」


 何故かついて来たエイニと共に……


「いつまでついて来るんだ?」

「そんな寂しいこと言わないでくださいよ~」

「買い出しなら一人でもできるだろ」

「お祭りにお一人様じゃ寂しいじゃないですか~」


 タピオが何を言ってもついて来るので諦めて、三人は屋台で買い食い。エイニがいるおかげでこの国のガイドなんかもしてもらえるから、タピオとイロナも楽しく歩いている。

 もちろん支払いはタピオ。エイニが親切に教えてくれるので、ガイド料金を取られるぐらいは気にならないようだ。


 そうして三人で歩いていると、騒ぎ声が大きな通りに入った。


「勇者様が来たみたいですね」


 どうやら勇者一行が馬車に乗ってこちらに向かって来ているらしく、タピオたちの方向に騒ぎ声が徐々に大きくなって来ている。


「じゃ、俺たちは鍛冶屋に行くよ」

「え~~~! ここまで来ておいて勇者様を見ないのですか!?」

「別に興味ない」

「見て行きましょうよ~」


 タピオがエイニと揉めていると、馬車がもうそこまで近付いていたので、渋々見学することになった。


「勇者様~~~!!」


 エイニも周りの民衆と同じように興奮して手を振るなか、イロナとタピオは冷めたもの。腕を組んで屋根の無い馬車を見ている。


「なんだかあまり嬉しそうにしていないな」

「そりゃ、俺たちにおんぶに抱っこだったからな」


 馬車の上にいる勇者クリスタは苦笑い。隣に聖女オルガもいるのだが、苦笑いで手を振っている。その二人は、エイニの声に応えようとタピオたちの方向を見た。


「フフ……礼儀はわきまえているようだ」

「別にいいのに……こっち向くな。バレるだろ」


 タピオたちに気付いたクリスタとオルガは両手を合わせてペコペコしていたので、タピオは片手を振ってシッシッと追い払うような仕草をしていた。

 その頃には馬車はタピオたちの前を通り過ぎ、人々は追うように移動して行くのであった。


「なんだか勇者様たち、タピオさんとイロナさんに合図を出してませんでしたか?」

「さあな~。知り合いでもいたんじゃないか? さてと、俺たちは鍛冶屋に行って来る」

「あっ! 待ってくださ~い」


 戻って来たエイニの質問は適当に流し、タピオたちは人混みに消えるのであった。


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