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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
83/330

083-1 魔王が誕生した王都の様子


「あ! タピオさん、イロナさん……帰って来てたんですね!!」


 ここは王都の町外れにあるウサミミ亭。タピオたちが食堂で食べ物を漁っていたら、ウサギ耳女性エイニに見付かってしまった。


「ああ。ただいま」

「二人がいない間、王都は凄いことになって大変だったんですよ! 帰りが遅いから、まさか上級ダンジョンに潜ってるんじゃないかと心配で心配で……」

「中級に潜ると言っただろ。てか、地上に戻ったら外が騒がしくて買い食いもできなかったんだ。何か作ってくれ」

「は、はい! 腕によりをかけて作らせてもらいます!!」


 エイニの泣きそうな顔を見たタピオは嘘をつく。本当は上級に潜ったのだが、ダンジョンに向かう前日にエイニが勘違いしていたのでそのまま伝えていた。

 それからテーブルに料理が並ぶと、いつものようにエイニと共に夕食を美味しくいただくタピオとイロナ。お腹がへっていたのかガツガツ食べている。


「いつ見ても、いい食べっぷりですね。作った甲斐があります」

「うまいし安いからな。もう少しで携帯食に手を付けていたよ」

「今日はお祭り騒ぎでしたもんね……そうそう! タピオさんたちがダンジョンに向かったその夜、大変だったんですよ~」


 エイニは先ほどしようとしていた話を思い出す。


 深夜にスタンピードを知らせる鐘が鳴って王都は大わらわ。避難所に走ったエイニはアルバイト先の店長たちと合流したら、王都から逃げ出そうとの話になったのだとか。

 冒険者も騎士も総当たりで上級ダンジョンを囲み、出て来るモンスターを処理はしてくれていたが、この先どうなるか避難所で不安な夜を過ごしたらしい。

 しかし、朝方にはスタンピードは止まり、上級層の弱いモンスターしか出て来なかったと聞いて、避難民に希望が生まれたそうだ。


「運良く前日に、勇者様が上級ダンジョンに潜っていたんですって!」

「運良くねぇ~……はは」

「フフ。確かに運は良かったな」


 エイニが興奮するなか、タピオとイロナは目配せして笑い合う。エイニはその微笑に少し引っ掛かったようだが、話したいことがいっぱいあるのでそのまま続ける。


 勇者クリスタが潜っていると聞いて、避難民は盛り上がったそうだ。クリスタがスタンピードを止めてくれたと……

 しかし、魔王が発生したのではと噂が流れ、また心配になって静まり返り、祈るように時間が流れる。

 そうして祈りながら待っていたら賢者ヨウニが地上に戻り、こう言ったそうだ。


「勇者様と聖女様が魔王を倒しに向かった。必ず魔王を倒して戻ると約束してくれたから安心するがよい!」


 と……


 ヨウニの力強い言葉を聞いて民は歓喜の声をあげたが、すぐに不安な声に代わった。「たった二人で何ができるんだ」とか「どうしてお前たちは逃げ帰って来たのだ」だとか……

 しかしヨウニは、頑として「必ずやり遂げる」の一点張りで、城にも呼び出されても説明はそれだけであった。


 また眠れない夜が訪れ、朝になっても夜になっても新しい情報が出て来ない。エイニもクリスタとオルガが死んだと思ったらしい。


「でも、賢者様の言っていたことは本当だったんです! 勇者様は魔王を倒して帰って来てくれました! あの空色の鎧を着た勇者様のはにかんだ笑顔……一生忘れることはできません~」


 うっとりと英雄譚(えいゆうたん)を語るエイニであったが、タピオとイロナは苦笑い。

 事実は、クリスタははにかんで笑っていたわけではなく、自分の手柄ではないのに大勢に感謝されて苦笑いしていただけ。タピオたちもクリスタの何とも言い難い顔を見ていたのだが、その混乱にまぎれて逃げて来たのだ。


「ふ~ん……地上はそんな感じだったんだな」


 タピオはあまり興味はないのだが、ヨウニが自分たちのことを秘匿にしてくれたと知ってひと安心。ただ、他人事に聞こえたエイニはテンション高くタピオを非難する。


「ふ~ん……て! 勇者様がいなかったら、今ごろ王都はモンスターだらけになっていたんですよ!!」

「かもな~」

「タピオさんは、もっと勇者様に感謝するべきです! 勇者様のおかげで、こんなに美味しい料理にありつけたんですからね!!」

「わかったわかった。そう熱くなるな」


 エイニが面倒になったのでタピオは適当に相手するが、適当すぎてまたエイニが熱くなる。なので、タピオは風呂に入ると言って逃げ出した。



「ふぅ~……極楽極楽」

「見た目はアレだが、メシとこの岩風呂だけは格別だな」

「ホント、いい拠点だ。店主はちょっとうるさいがな」


 タピオとイロナは湯に浸かり、ダンジョンの疲れを落とす。そうしてゆっくりとした時間が流れていたのだが、急に立ち上がったイロナは仁王立ちで大声を出す。


「さて……魔王討伐記念だ。今日は何をしてほしい!」

「えぇぇ~~~」


 エイニの説教から逃げ出せたタピオであったが、イロナの夜の奉仕からは逃げ出せないタピオであったとさ。


次話『 083-2 』は性的な描写が含まれていますのでアルファポリスにて『 R-7 』のサブタイトルで公開します。

18歳以上でもしも読まれたい方は、アルファポリスにてしばしお待ちください。

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