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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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079 カーボエルテの魔王2


「ン、ンン~! よく来たな。冒険者よ……」


 ドラゴンニュートから進化した魔王は、気を取り直してタピオたちに話し掛ける。


「ちなみに勇者もいるようだが、余と戦わないのか?」

「ああ。あいつらは見学だ」

「なるほど……少々待たれよ」


 魔王は後ろを向くと何やらブツブツと呟いて、イレギュラーを頭の中のメモに書き加えている。その間、魔王に返答したタピオはイロナに質問していた。


「魔王って、何か喋らないといけない決まりがあるのか?」

「うむ。故郷のダンジョンでは、必ず『トゥオネタル族の猛者よ』と出迎えてくれるぞ」

「なるほど……よく倒しに来る者がダンジョンに記憶されるわけか」

「まぁ何を喋ろうと、やることは一緒だがな」


 タピオは初体験なので予想を付けるが、イロナはいつものことなので魔王の言葉なんて、早送り(スキップ)して早く戦いたいらしい。


「よし! もういいぞ」


 二人が喋っていたら、アップデートした魔王はマントをひるがえして振り返る。


「無謀にも余の前に立ったことを後悔しながら死ぬがよい!!」


 シナリオに戻った魔王は、三つ叉の槍、トライデントを召喚して構える……


「ちょっ! はやっ……」


 そこに、イロナが突撃。魔王はなんとかイロナの剣をトライデントで受けて耐える。その頃タピオというと……


「俺も試しに戦いたかったんだけど……」


 乗り遅れてしまい、イロナと魔王の激しい戦闘を見ながら愚痴るのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方、部屋の隅で観戦しているクリスタとオルガは……


「うっわ……圧倒してる……」

「私、まったく見えないのですけど……」


 イロナの強さに、驚愕の表情を浮かべている。


「私もギリギリだよ。目の前だったら、一瞬でミンチになってる自信がある」

「はぁ……受ける魔王と攻めるイロナさん。どっちが凄いんだか……」

「まぁイロナさんが確実に倒してくれるから、どっちでもいいんじゃない?」

「そうですね! ……と、言いたいところですけど、私と勇者様、これでいいのですかね?」

「それは言わない約束でしょ~~~」


 人々を救う役目の勇者と聖女がただの見学で、本来の務めを果たせないのならば、お互い情けなくなるのは当然のことであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



「くそっ! なんて強さだ!!」


 笑いながら剣を振るイロナの猛攻を、高いHPと高い防御力、トライデントでなんとか耐える魔王。まるで挑戦者側のような愚痴が漏れるが、このままではじり貧なので、剣を受けるタイミングで口を開ける。


「喰らえ! 【灼熱炎】!!」

「フン!」


 魔王の口から火炎放射器のような炎が吹き出すが、イロナは一刀両断。


「おっと」


 できたのだが、魔王はそれを予期していたのか長時間吐くので、イロナは何度も剣を振りながら距離を取る。


「あっちっちっ」


 そこに盾を構えたタピオが合流。イロナを後ろに招き入れて声を掛ける。


「ちょっとぐらい俺にも戦わせてくれよ」

「フフ。主殿も戦いたかったのか。ならば、しばらく代わってやろう」

「え? 盾役は任せろってことなんだけど……」

「まぁ一人で戦うには、主殿には早いと思うがな」

「聞いてる? 二人でってことだよ?」

「行ってこい!!」

「くそっ!」


 タピオにも、イロナの洗礼。イロナブートキャンプの生徒はイロナ軍曹には逆らえないので、覚悟を決めて前進するしかない。


 タピオは盾を前に構えて突撃すると、炎は圧力を増して若干の熱のダメージが入る。しかし、タピオは電車道。力業(ちからわざ)で一気に押し込んだ。


 ドンッ!


 すると何かに衝突したかと思ったら、圧力が無くなって炎が途切れた。


「なんなんだお前たちは!!」


 タピオに撥ねられた魔王は激オコ。イロナの強さといいタピオの力といい、イレギュラーが続いて地団駄を踏んでいる。

 しかし、タピオはチャンスとみてそのまま突撃。魔王が苛立っているうちに剣を振り下ろす。


「なんだ。さっきの女ほどではないな。フッ」


 タピオとイロナでは、ざっくり力は半減。スピードは到底及ばない。魔王とは力では張り合えてはいるが、スピードは半分ってところ。これでは魔王に余裕が生まれるので、鼻で笑われても仕方がない。

 タピオの強さを把握した魔王は、トライデントを振るって反撃だ。


「え? あれ??」


 しかし、幾度トライデントを振るってもタピオの盾は崩せず、魔王はとぼけた声を出して攻撃が雑になってきた。


「よっと!」

「わっ!!」


 そこを狙ったタピオの崩し。トライデントの突きで押された瞬間に盾を引くと、魔王は前のめりになる。


「オラッ!!」

「ぐわっ!!」


 そこに、タピオの剣。ぶん殴るような衝撃は体勢の崩れた魔王では耐えられず、腹を地面に打ち付ける。


「オラオラオラ!!」


 さらに追い討ち。無防備な背中に剣を振り下ろし、振り上げる際には踏み付け。魔王は立ち上がれずに、ダメージが積み重なるのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方、タピオの戦闘を見ていたクリスタとオルガは……


「なんで互角以上に戦えてるんだろ?」

「さあ? 勇者様でわからないなら、私もわかりません」


 クエスチョンマークが頭の上に乗っていた。


「さっきまで攻められていたよね?」

「ええ。イロナさんと違って負けると思っていました」

「イロナさんは助けに行かないし……」

「タピオさんが勇者様みたいに無茶振りされたのはわかりますね」

「うん。でも、その無茶振りにタピオさんは応えられるんだ……」

「勇者様も頑張っていますよ!」


 今度はクリスタだけへこんで、オルガに励まされるのであったとさ。


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