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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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078 カーボエルテの魔王1


「今回は楽だったな」


 リッチエンペラーのドロップアイテムを拾いながらタピオがボソッと呟くと、クリスタは肩を落とす。


「私は全然……役に立てなかった」

「まぁ本来三人で戦う敵じゃないし、いい経験を積めただろ」

「そうだけど……タピオさんみたいに戦える気がしない」

「別に俺のマネをする必要はない。自分に合った戦い方をすればいいだけだ。それでおのずと形はできあがる」

「タピオさん……」


 クリスタの頭をポンポンと叩いてタピオはイロナの元へ向かい、クリスタも遅れまいと歩き出したらオルガが隣にやって来た。


「ちょっと顔が赤くなってますよ? まさか……」

「なに言ってるのよ!?」

「ウフフ……からかったお返しです」

「もお~~~」


 何やらキャピキャピして出口に向かうクリスタとオルガであったとさ。



「あとは魔王だ! その前に、勇者はあいつを倒せ!!」


 魔王の間に続く門の前に立ち塞がる石でできた怪物、ガーゴイルを前にイロナは命令する。


「うわああぁぁ!!」


 するとクリスタは一人では無理と思いつつも特攻して行った。

 クリスタは素早く動いて攻撃。だが、レベル差がありすぎてダメージは小さく、反撃を喰らう。なんとか盾で防御は間に合うが、力の差もあるので簡単に吹き飛んでダメージを受ける。

 オルガがすかさず回復してくれて拮抗しているように見えるが、長い戦いになるとオルガにも疲れが見えて来た。


「タイムアップだ。俺が出るけどいいか?」


 タピオのタイムアップの理由は、クリスタを気遣っているわけでなく、四天王が復活して門が開かなくなる心配をしている。


「う~む……四天王をもう一巡するのも手だが……」


 戦闘狂のイロナはそれもアリかと悩むが、魔王とも早く戦いたいようだ。


「四天王なんてたいして強くないし、まぁいいか。やってくれ」

「う~い」


 結論の出たイロナから許可が下りたので、タピオは「それ、イロナだけだからな?」と思いながらガーゴイルに突撃するのであった。



「もういいぞ。下がれ」

「ゼェゼェ……はい」


 ガーゴイルの攻撃を受け止めたタピオは、限界の来ていたクリスタを下がらせて一人で戦う。

 クリスタとの戦闘でガーゴイルのHPは半分近く減っていたということもあり、すぐに決着となるのであった。



「うぅぅ……私はあんなに苦労したのに……」

「だからすぐに終わったんだ」


 魔王の間へと続く長い階段を下りていると、クリスタがまた自信喪失していたのでタピオは慰めながら歩く。ただ、クリスタの目的は慰めてもらうことだったらしく、タピオに頭をグイグイ押し付けていた。


「ちょっ、近いって。転がり落ちるぞ」


 しかし、タピオには乙女心は通じない。これまで自分に近付く女は騙して来ると思って距離を取っていたので致し方ない。モテキが来ても気付かないのだ。


「頭ポンポンしてもらえませんでしたね」

「そ、そんなんじゃないから!」


 またオルガに、クリスタはからかわれて進んで行くのであったとさ。



「さてと……30分だけ休憩して入るか」


 魔王の間の扉の前で、軽く休憩。イロナもお腹がすいていたから反対はしなかった。タピオと共にガツガツ食べて、クリスタたちを引かす。


「そんなに食べて大丈夫?」

「腹がへってはなんとやらだ。お前たちの出番はないのだから、いくらでも食え」

「はあ……」


 激しい戦闘の前には大食いしないと聞いたことのあるクリスタが心配しても、イロナは止まらない。タピオも止まらないので、あの話は迷信なのではないかと思うクリスタであった。

 でも、今回はイロナからの無茶振りが来ないと知って、食が進むクリスタとオルガであったとさ。



 タピオとイロナは腹八分目。15分ほど横になり目を閉じて体を休めると、むくりと起きて戦闘の準備を始める。

 各々鎧が外れないようにしっかりと付け直し、剣の耐久度の確認。その二人の姿を見るクリスタとオルガに緊張が走る。


 タピオは今までに増して険しい顔となり、本気度が(うかが)える。


 イロナは今までに増して綻んだ顔となり、その笑みは怖すぎる。


 ぶっちゃけイロナの顔は参考にならないし怖いので、タピオの精悍な顔を見て、恐怖よりも緊張感に持って行くクリスタとオルガ。


「よし。行くか」

「おう!」


 イロナの合図でタピオは男らしい声で返事し、クリスタとオルガは無言で続く。そうしてタピオが大きな扉を開き、魔王の間に足を踏み入れた。



「よく来たな。勇者よ……」


 魔王の間……2メートルを超える大男は、マントをひるがえしながら振り向き、イロナとタピオに声を掛けた。


「リザードマン? いや、ドラゴンニュートだぞ主殿!!」

「え? 魔王って喋るの??」


 だが、イロナは強い魔王が出たと喜び、魔王初挑戦のタピオは喋り掛けて来たから驚いてスルー。


「聞いているか? 勇者よ??」


 なので、魔王は再度問いかけると……


「勇者はあっち。俺たちはただの冒険者だ」


 イロナは目が爛々として答えようとしないので、タピオが部屋の隅にいるクリスタとオルガを指差して教えてあげた。


「はあ? こういう場合って、勇者が余を殺しに来るんじゃないのか!?」


 どうやらダンジョンから勇者が来るからと教育を受けているらしいが、イレギュラーには生まれ立ての魔王では対応できないのであった。


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