075 魔王討伐7
ダンジョンで手に入ったアイテムで装備を整えたタピオパーティは、地下99階に足を踏み入れた。
「広い一本道……モンスターの姿すらない」
「でも、威圧感が凄いですね」
クリスタとオルガが喋っていると、タピオが説明する。
「ここは四天王のフロアだ」
「四天王……やっぱり生まれていたんだ」
「タピオさんも魔王討伐に参加したことがあるのですか?」
「う~ん……一度だけな。その時は仲間が弱すぎて逃げ帰った」
タピオは言うかどうか悩んだが、説明するには言わないと進まないかと思い、少しだけ自分の情報を出す。
「魔王討伐に参加したってことは……やっぱりタピオさんも勇者パーティに属してたんだ!」
「どうりで強いわけです」
「いや、属してない。道案内しただけだ」
「「え??」」
「そんなことより、このフロアの説明をするぞ」
タピオはクリスタとオルガの追及は無視して、四天王フロアの説明を開始する。
このフロアは一本道で、途中によっつの大きな扉があり、その中には四天王が一体ずつ待ち構えている。無視して直進したら巨大な門があるのだが、その前に鎮座するモンスターを倒したとしても巨大な門は開かない。
四天王が門の鍵となっており、全員倒してようやく開く作りになっているのだ。
ちなみにタピオが挑戦した時は、門番を一人で倒し、門が開かなくて勇者パーティから非難轟々。
一人で四天王を倒して来いと命令されて、二体目を必死に倒して一本道に戻ったら門番が復活。追われる勇者パーティに「助けろ」と言われてまた門番を倒し、残りの四天王を倒したら、またまた門番復活。
倒すのが遅いと叱責されても、タピオは疲れきって言葉が入って来なかった。
クリスタたちに説明を終えると、タピオはイロナを見る。
「門番は……」
「うむ。一匹目は我が相手しよう」
「近付かなければ動かないと思うけど……」
「行くぞ!」
勇者パーティでも二回で学習したことなのに、何度も倒しているイロナは先々進み、門番のガーゴイルを一刀両断。二度倒すことは、イロナの楽しみだから致し方ないのかもしれない。
「ちょっとだけ休憩して行こうか」
「休憩などいらん!」
イロナのために言ったのではないのに却下されてしまっては、四天王の扉を開くしかない。クリスタとオルガは休憩して気持ちを落ち着かせたかったようが、続くしかなかった。
「阿修羅ドクロか……アレは我がもらうぞ!」
「「「どうぞどうぞ」」」
四天王一戦目は、和風の鎧を着たガイコツ。ただのガイコツではなく、三面六臂の巨大なガイコツで、魔王の加護を受けているから通常の阿修羅ドクロより10倍以上強いのだ。
イロナは鼻息荒く突撃して行くので、タピオたちの答えはひとつしかなかった。クリスタは投げ込まれなくて心底ホッとしていたけど……
イロナが突撃すると、阿修羅ドクロは六本の手に持つ六つの違った種類の武器を一気に振り下ろす。それだけで爆発のような衝撃が起こり、地面にクレーターが作られた。
「ふむ。やはりいい剣だ」
クリスタとオルガが心配するなか、イロナは阿修羅ドクロの後ろに回って剣をジッと見ていた。
その声に反応して阿修羅ドクロが振り向くと、一本の腕が落ちる。驚くことにイロナはファーストコンタクトで、阿修羅ドクロの鎧の隙間に剣を入れて斬り落としていたのだ。
「アレって簡単に落ちる物なの?」
その光景を見たクリスタは、タピオに説明を求める。
「俺も知らん。ただ、俺がやったとしても、同じ結果にならないのは間違いない。てか、四天王、半端なく強いからな?」
「イロナさんが化け物ってだけ?」
「うん。あんなにあっさり倒せない」
「「へ??」」
タピオたちが雑談しているうちに、阿修羅ドクロは撃沈。あっという間の出来事で、クリスタとオルガはとぼけた声を出していた。
いちおうイロナがどうやって倒したかというと、六本の腕を鎧の隙間から斬り落とし、口から放たれた炎を避け、足も斬り落とし、胴体も真っ二つ。首まで斬って、そこで阿修羅ドクロのHPは尽きたのだ。
「フフン。久し振りに戦ったけど、楽勝だったな」
上機嫌で戻るイロナに、タピオたちは掛ける言葉を探す。
「「「お疲れ様です!!」」」
もう舎弟。いや、魔王の配下。絶対に敵に回してはいけないとタピオたちは再確認するのであった。
「次、行ってみよう!」
「「「はい!!」」」
こうして上機嫌なイロナに続き、隣の部屋に移動するタピオパーティであった。
「カイザードラゴンが四天王だと!? 我はなんてついているんだ! アレも我がやるからな!!」
「「「どうぞどうぞ」」」
またしても、イロナ一人で突撃。タピオたちの返事を聞かずに行ってしまった。
「あの……イロナさん、空を飛んでるんですけど?」
青白い炎を吐くカイザードラゴンとイロナが激しい空中戦を繰り広げるなか、オルガから質問が来る。
「まぁ……イロナだから……」
「うん……イロナさんだから……」
一度見たことのあるタピオとクリスタでも、答えはこれしかない。
「イロナさんですもんね……」
しかし、それだけで通じ合う三人であったとさ。