072 魔王討伐4
キマイラエンペラーを倒したタピオパーティは、地下80階のセーフティエリアで夜営の開始。どうやらこのエリアは温泉が湧き出ているらしく、食後に入ることとなった。
「では、行こうか」
「お待ちください!」
イロナはタピオを誘い、首根っこを掴んで引きずって行くが、オルガに回り込まれた。
「なんだ?」
「だ、男女でお風呂に入るなんて、不潔です!」
「不潔? 不潔だから体を洗うのだろ??」
「そういうことじゃなくてですね。裸の男性と女性が一緒に入るということは、その、体の関係が……」
「夫婦なら裸で抱き合うのは当然だろう」
「うっ……」
「お前の話は何が言いたいのかさっぱりわからん。行くぞ」
オルガの純潔論は、イロナに論破されて何も言えなくなる。ただ、タピオは言いたいことがわかっていたので、引きずられながらも手を合わせてペコペコ詫びを入れていた。
「さあ! 今日は何をする!!」
全裸で湯船のそばに立つイロナは今日も通常運転。いつも通り押し売りが始まる。
「いや、今日はいいかな? ほら、明日は魔王と戦うだろ? イロナも全力を出せないと困るし……」
タピオは自分がダメージを受けた状態で地下に潜るのは嫌なので、イロナの体調を心配する体でやんわりと断った。
「フフ……主殿は優しいのだな。うむ。今日は洗いっこだけで勘弁してやろう!」
「ぎゃあぁあぁ!!」
いちおうタピオの策略は成功したのだが、結局は肌を削られて痛い思いをするのであった。
* * * * * * * * *
一方その頃、クリスタとオルガは……
「また拷問されてる……」
「今日もなしですか……」
温泉の近くにある岩陰に隠れて、また覗いていた。しかし二人の望んだことは起こらず、残念そうにしていた。
「なんで聖女様まで残念そうにしてるの?」
「違います! これは取り締まりですからね!」
「聖女様のエッチ~」
「違うんです~~~!」
そしてムッツリ聖女オルガは、クリスタにからかわれ続けるのであった。
* * * * * * * * *
肌のヒリヒリは温泉の効力で収まったタピオは、イロナと共にゆっくり浸かり、疲れを取って上がる。
それからクリスタとオルガの元へ戻ると、オルガは風呂上がりのように顔が真っ赤。クリスタにからかわれ続けていたところに、タンクトップ姿のタピオが現れたから体温が急上昇したみたいだ。
そのことにタピオが触れると、「お風呂を覗いたら神様に往復ビンタされますよ!」と逆ギレ。タピオは覗きなんて犯罪行為をするつもりはなかったのだが、割と軽い罰なので、オルガの巨乳を見に行こうかと考えてしまった。
そこにイロナの締め付け。プラス反撃。
「お前たちは覗いていたのに、神とやらは往復ビンタしないのか?」
「「へ……?」」
「我が気付いてないとでも思ったのか? 主殿の体をいやらしい目で見ていたじゃないか」
「「なななななな……わああああ~!!」」
イロナに気付かれていたと知って、クリスタとオルガは言葉にならない。反論もできずに逃げて行くのであった。
ちなみにタピオは、不甲斐ないところを見られていたと知ってしょんぼり。裸を見られるより、イロナほどの美人を前に男らしさを見せられなかったことがプライドを傷付けたようだ。
この日はこのまま、各々のテントから一歩も出ない一同であった。
ぐっすり10時間眠った皆はテントから這い出し、静かな食事。昨夜のこともあり、恥ずかしすぎて声も出ないようだ。
それからお昼寝を三時間して、眠気を飛ばそうとタピオとイロナは温泉に。そしてお約束。
「「キャーーー!!」」
「す、すまん!!」
クリスタとオルガが入っていたので悲鳴があがり、タピオは目を塞いで逃げ出す。だが、イロナに首根っこを掴まれて、温泉に投げ込まれてしまった。
「何するんだ!」
「主殿があとから入ると出発が遅れる」
「こいつらに被害届を出されたら俺が捕まるんだよ~」
タピオは捕まりたくない一心で温泉から上がろうとするが、イロナに蹴り飛ばされて湯に浮かび、ピクピクしている。
「主殿の裸を勝手に見ておいて、拒否権があると思うなよ」
「「はい……」」
こうしてイロナの脅しに屈したクリスタとオルガは、タピオとの混浴を渋々了承するのであった。まぁタピオは気絶中なので、見られる心配はないので安心して体を温めるのであったとさ。
気絶中のタピオは、イロナに支えられて溺れずに済んでいるが、クリスタとオルガにジロジロと見られている。その視線に負けじと、イロナはオルガの近くで浮かぶ二つの物体を凝視しているので、さすがにオルガも気付いた。
「あの~? 何か怒ってます??」
「いや、何を食ったらそんなに大きくなるのかとな」
「私も知りたい!」
気絶しているタピオの前で巨乳談義。美乳のイロナだけでなく、微乳のクリスタも気になるようだ。
「教会で出されている物しか食べてないのですが……」
「それなら私も食べていたんだから、大きくなっていないとおかしい!」
「ふむ。食べ物ではないということは、その体に秘密があるというわけだな」
「な、なんですかその手は……」
「「いいではないかいいではないか」」
「きゃああぁぁ~~~!!」
こうして胸の大きさで負けたイロナと胸にコンプレックスのあるクリスタに、オルガは胸を揉まれまくるのであった。ただ、イロナの攻撃は痛すぎて、オルガをマジで泣かせてしまうのであったとさ。