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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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066 スタンピード8


「なかなかいい運動になったな」


 スタンピード第四波が途絶えると、イロナはタピオたちの元へ戻って来た。


「マジか……俺でもかなりしんどかったのに……」

「ゼェーゼェー……私なんて、生きてるだけで奇跡だわ……ゼェーゼェー」


 イロナにしてみれば、この程度の敵は運動程度。タピオはフルマラソン。勇者クリスタは生死を懸けた戦い。疲れ方はそれぞれだが、イロナの化け物っぷりはクリスタだけでなくタピオも驚かされた。


「さて……どれぐらいレベルが上がった? 我は1だったが、お前たちならかなり上がっただろう」


 ここで、イロナ先生に通知表の提出。


「俺は4……」


 タピオは100を超えていることもありあまり上がらなかったので、イロナから叱責が来るのではないかとビクビク報告する。


「私は30! こんなに早くにレベル50を超えるなんて信じられない!!」


 逆にクリスタは嬉しそう。一般的な冒険者ならば、職業レベルが50もあれば中堅を抜け出せるのだから当然なのだろう。だが、一般的ではないイロナは別だ。


「レベル50で何を喜んでいる! 主殿もたったの4とは、いったい何をしていたのだ!!」


 イロナは激怒した。クリスタがこんな喜び方をしなければ、タピオの4はこんなもんだと受け取られていたかもしれないが、比較対象が十倍近くの数字を言ったからには怒りが湧き上がったようだ。

 しかし二人のレベルアップがイロナの思ったような結果にならなかった原因となるキラーワードはひとつある。


「「半分以上ひとりで倒したのに、たったの1??」」


 そう。こんなに倒しても、レベル300を超えるイロナは1しか上がらなかったのだ。こんなに倒したから、タピオとクリスタに行く経験値も少なかったのだ。


「わ、我はレベルが高いからいいのだ……」


 二人にジト目で見られたイロナは、珍しく言い訳してバツが悪くなるのであった。



「とりあえず、アイテムを拾って来るよ」


 タピオは少し休憩すると立ち上がる。


「主殿。我も行くぞ」

「イロナが?」

「何かいい剣が落ちてるかもしれないからな」


 これまた珍しいことがあるものだと思ったら、イロナは剣狙い。どうせ探すなら、ドロップアイテムも拾ってくれるようだ。


「じゃあ、私も……」

「無理しなくていいぞ」

「もう動けるよ!」


 クリスタは疲れているものの、イロナが集めているからには動かないと怒られるかもしれない心配をしながら、ドロップアイテム拾いに加わる。


 タピオとイロナは、階段から遠く離れたイロナの戦闘区域を走り回り、まだ残っていたドロップアイテムをアイテムボックスに根こそぎ入れる。

 クリスタは階段周りを重点的に歩きながら自身のアイテムボックスに入れ、二人が戻って来たら一緒に拾う。

 そうして全てを拾い集めたら階段に集まってお茶休憩。タピオとクリスタは分け前の話し合いをする。


「全部いらないって……本当にいいのか?」

「これだけレベル上げを手伝ってくれたんだから、対価で支払わせて」

「あまり倒してなかったし、取り分は少ないからまぁいっか」

「うっ……それは言わない約束でしょ~」


 せっかくかっこをつけても、巨大モンスターの群れを一割も倒していないクリスタでは、取り分は少なすぎて支払いが足りないぐらい。そのことをわざわざ指摘されてクリスタは涙目になっていた。


「それよりスタンピードは、いったいいつ終わるの? まだまだ続くのかな??」

「俺も経験したことがないからな~……でも、予想では、もうそろそろ終わると見ている」

「本当!?」

「予想だと言っているだろ。もう少し様子を見たら、一度睡眠を取るからな」


 終わりと聞いて目を輝かせるクリスタは、大事なことを思い出した。


「その……魔王討伐は……」

「寝て起きたら向かう予定だ」

「やった! でも、早くしないと四天王も誕生してしまうかも??」

「いまの疲れた状態で進んだら、どっちみち遅くなるから変わらないだろ」

「なるほど……勉強になります!」


 ベテラン冒険者から攻略法を聞くことはいい勉強なので、いろいろ質問するクリスタ。


「それで~。タピオさんの職業は~??」

「………」

「うそ! 冗談だから貝にならないで~!!」


 たまにタピオの情報を聞き出そうとして来るので、その都度タピオの機嫌を損ねるのであった。



「たぶんアレで最後かな?」


 しばし喋っていたら、巨大なレッドドラゴンと巨大な四本首のキングヒュドラがのしのしと歩いて来た。


「ぐっ……どちらも斬り甲斐のあるモンスターだ。我はどちらに行けば……」


 イロナはどちらとも戦いたいらしいが、倒すには少しは時間が掛かるので、どちらか片方は一時見逃さなくてはならない。


「あ~……俺が押さえておくから、すぐに戻って来たら斬れるんじゃないか?」

「うん。私の攻撃も効かない気がする」

「それだ! ならば、我はドラゴンから仕留めるぞ!!」

「「は~い」」


 作戦が決まると、イロナは生き生きとしてレッドドラゴンに突撃して行くのであった。


「てか、私にレベル上げしろとか言ってたけど、回してくれないんだ……」

「もう諦めろ。イロナはああいう性格だ」


 あとから続く二人は、イロナの行動に呆れながらキングヒュドラに突撃するのであったとさ。


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