表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
65/330

065 スタンピード7


「お前は上に戻っていろ」


 上級ダンジョン最下層のモンスターの大群では、クリスタでは足手まといになると思い、タピオは逃がそうとする。


「じゃ、じゃあ、私はこの辺で……」


 さすがに見たこともない巨大モンスターの大群では、足手まといになると思ったクリスタ。というより、イロナの無茶振りが来そうなので、タピオの言葉に甘えてペコペコ頭を下げて逃げる。


「何を言っている。お前もここに残って戦うのだ。それとも何か? お前は強くなることが嫌なのか??」

「い、いえ! 戦わせてもらいます!!」


 残念ながら、イロナに睨まれたからには逃げることも許されない。タピオと共に、イロナブートキャンプの餌食となるクリスタであった。

 といっても、一人だけレベルが段違いに低いクリスタ。これでは満足にレベルアップはできないし、あっという間に死ぬとタピオが説得すると、なんとかイロナも折れてくれた。

 なんだかイロナが「倒す前に死なれると困る」的なことを言っていたから、生きて戻れたとしても地獄が待っていると悟ってしまうクリスタであったとさ。



 作戦の概要はタピオに全て丸投げ。イロナは巨大モンスターの群れに辛抱堪らなくなって走り出してしまった。

 残されたクリスタとタピオは……


「ははは。強敵に臆せず突っ込むって、アレこそ勇者の姿みたいね」

「アレは蛮勇だ。絶対にマネするなよ?」

「だよね! タピオさんが常識人でよかった~」


 陰口を叩いていた。


「とりあえずパーティ申請な。あと、俺の背中に隠れておけ。チャンスがあれば声を掛ける。いまのお前なら、倒せなくても多く経験値が入るだろ」

「神ですか! タピオさんだけが私の味方です~」

「いいからさっさと準備しろ。遅れるとイロナに怒られるぞ」

「はい!!」


 イロナブートキャンプの難易度が高そうだと覚悟していたクリスタは、タピオに守られてレベル上げができると聞いて、感謝しかない模様。しかしイロナの名前が出たので、急いで準備をするクリスタであった。



「じゃ、命を大事に」

「はい!」


 タピオは勇者を背中に隠し、自分より遥かに大きな巨大モンスターの群れに突撃。次々と吹っ飛ばすと少し下がって、突撃して来た巨大モンスターを弾き飛ばす。それを繰り返し、タピオは勇者を守りながら階段まで後退した。

 ここから先は、一歩も通さない背水の陣。というわけではなく、今まで(まば)らにダメージを与えた巨大モンスターを一ヶ所に集めただけだ。


 巨大モンスターにはある程度のダメージはあるので、クリスタの出番が作れる。MPがあるだけ攻撃魔法を撃たせれば、タピオに削られて瀕死の巨大モンスターならば、運が良ければトドメを刺すことができる。

 クリスタのMPが尽きれば剣に切り替え、タピオが弾き返して、かつ、単体になった巨大モンスターに突撃。何度か剣を振るい、これまた運が良ければクリスタにも倒せる。

 ただ、レベル不足のクリスタでは、時間が掛かるしたまに反撃も受けてしまうので、その場合はすぐにタピオの後ろに戻り、巨大モンスターはタピオがまた吹き飛ばす。


 こうしてクリスタは、タピオに守られながらも着々とレベルが上がって行くのであった。



 一方、巨大モンスターに我先に突っ込んだイロナは、縦横無尽に走り回り、空を駆け、笑いながら剣を振っていた。ただ、最下層のモンスターということもあり、一撃とはいかず、何度も斬り付けて倒す。

 一部は仕留めきれずに抜けられるが、そこにはタピオが待ち構えているし、逃げる手負いのモンスターを追うよりも、次々現れる強敵と戦うほうが楽しいようだ。



 戦い始めて30分。ついに……


「きゃっ!」

「オラッ! 一旦下がれ!!」


 クリスタの限界が来る。いくらレベル爆上げ中と言っても、スタミナは無限ではない。巨大モンスターの攻撃を受けたところをタピオのケンカキックに助けられ、階段を少し上がったところでクリスタは腰掛ける。


「はぁはぁ……情けない……」


 クリスタは次々と吹き飛ぶ巨大モンスターを見ながら自分の不甲斐なさを嘆く。そうしてタピオが用意してくれていたポーションやMPポーションを飲みながらしばしの休憩。


「てか、どうやったらあんなに強くなれるのよ!」


 疲れが取れて来ると、尋常ではない二人の強さに八つ当たり。本来ならばパーティで協力して倒すモンスターを、実質一人で倒し続ける二人に追い付けるか不安なようだ。


「はぁ……行かないとイロナさんに怒られるし……行くか!」


 こうして一通り愚痴って体力の戻ったクリスタは、渋々立ち上がるのであった。



 クリスタが戻り、必死に巨大モンスターを攻撃しているとタピオから声が掛かる。


「お~。調子が上がって来たじゃないか」


 クリスタは最初よりレベルが上がり、それに伴い動きが良くなって来たようだ。


「そうかな? 自分ではわからないけど……」

「段違いにいいぞ。もう少しレベルが上がれば、キングでも相手になるかもな。この短時間で成長するなんて、さすが勇者だ」

「あ、ありがとう!」


 タピオに褒められたクリスタは、嬉しそうに剣を振る。そもそも巨大モンスターの大群はタピオでもしんどい相手だったのだが、クリスタがトドメを刺すのに攻撃回数が減って来たので、無駄話をできる時間が作れたようだ。


 そして数が減って来たら二人で協力して倒したり、時にはクリスタひとりに戦わせたりと、タピオならではの訓練を施す。



 こうしてスタンピード第四波が終わる頃にはクリスタのレベルは爆上がりとなり、自信を持つ結果になるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ