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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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060 スタンピード2


 地下41階……階段を下りた先には、広々とした空間が広がっていた。


「おあつらえ向きのシチュエーションだな」

「そうか? 天井が高いから、上からの攻撃が面倒だ」

「来たぞ!」


 イロナはデートスポットでも発見したような顔をしていたが、タピオは心配事があるらしい。しかし、スタンピードが再開してツッコンでいる場合ではなくなったので、二人は武器を構える。


 スタンピード第二波は、大型モンスターが多く占め、走るだけで地面が揺れる。


 タピオは例の如く、安全策で叩き飛ばすように倒す。一撃では倒せないが、吹っ飛んだモンスターが別のモンスターにぶつかって隊列を乱すので戦いやすい。

 何度も繰り返せばHPの減っているモンスターは勝手に倒れるので、ちょっとは楽ができるのだ。


 逆にイロナは一刀両断。跳んで走って踊っているかのようにモンスターを倒している。SSS級の剣で、どんなに大きなモンスターでもぶつ切りにできているからイロナの笑いが止まらない。

 その怖い光景を見たせいで、タピオは夢にでも見そうと思っていた。


 それから一時間。イロナの頑張りでドロップアイテムの拾う余裕のできたタピオは、約8割は回収できてご満悦。スタンピード第二波も終了するのであった。



 少し時間が取れたタピオとイロナは、階段に腰を下ろして携帯食を腹に入れながら語り合う。


「これで、何階分のモンスターが上がって来たのかな?」

「知らん。そういうのは、主殿の得意分野だろ」


 経験者のイロナに聞いても、数には興味がないのでタピオ任せ。


「う~ん……第一波は混乱してたからな~。二波の感じだと、10階分……いや少なすぎるか。20階分はいたのかな?」

「知らん。我に聞くな」


 ただの独り言だったのだがタピオの独り言は大きかったので、イロナに聞こえてしまっていた。


「となると、あと、二回から三回は波が来そうだな。到着時間が問題か……」


 タピオがブツブツと地下の深さと到着時間を計算していたが、イロナは無視。それよりも、長い戦いになるから休憩を優先している。



 二人が休憩して一時間……ついにスタンピード第三波が見えて来た。


「ワイバーンにキラービー……マジか~」


 残念ながら、第三波はタピオが危惧していた飛行モンスターだらけ。何故こうなったかというと、下の階層に飛行モンスターだらけのフロアがあったので、まとまって来てしまったのだ。


「ちなみにイロナは、遠距離攻撃スキルは持っているのか?」

「いちおう斬撃は飛ばせるが、距離があると弱くなる。主殿こそ、何か持っているのか?」

「あるっちゃあるけど……しんどいから切り札だ。上に戻って階段で戦おう」


 タピオは地の利を活かしたいので階段を上がろうとするが、イロナに肩を掴まれて動けなくなる。


「ちょっと痛いんだけど……」


 振り向いたらイロナが不穏な顔で笑っていたので、怖くなるタピオ。


「主殿の切り札、見てみたいぞ!」


 どうやら切り札が気になって止めていたみたいだ。


「いや、切り札はMPの減りがめちゃくちゃ早いから、ちょっとな」

「MP? 主殿は戦士なのに、魔法も使えるのか??」

「戦士じゃなくて、重戦車な。あと、魔法も使えない」

「なんのためのMPなんだ! 気になる! 早く見せろ!!」


 タピオの切り札は意味不明すぎて、ますます気になるイロナ。モンスターが迫るなかぐわんぐわんと揺らされたタピオは、酔いながら渋々切り札を使うと言ってしまうのであった。



「ちょっと変だから、変な目で見ないでくれよ?」

「うむ」

「嫌いにならないでくれな??」

「さっさとやれ!!」


 なんだか乙女みたいにお願いするタピオ。その女々しい態度が気に食わないイロナにこづかれてタピオは切り札を使う。


「地対空モード移行」


 タピオの呪文とは思えない言葉に、イロナは首を傾げて見ている。


『オッケーマスター。地対空モードニ移行シマス』


 タピオの声ではない甲高い機械音がどこからか聞こえ、イロナはますます傾いて行く。


「なんだ今の声? 主殿が言ったのか??」


 イロナの質問に、正座をしたタピオは集中しているから答えられない。


『モード変更。20%……40%……』


 機械音がカウントを告げるなか、徐々にタピオの姿形が変わって行く。


 太ももがパカッと開いたかと思ったらキャタピラが現れ、タピオの折り曲げた足を包み込む。

 そして両手の指全てに空洞が開き、手の平からは穴の開いた棒が伸びる。心なしか鎧の肩に開いている隙間に見える筋肉は四角く膨らんで来た。


『地対空モード移行完了。ロックオン開始』

「主殿? 主殿よ? いったい主殿の体はどうなっているのだ??」


 タピオの体が変形が終わると、さすがにイロナも驚きを隠せない。


『発射準備完了。ロックオン完了。イツデモ撃テマス』

「ファイアー!」

『ファイアー』


 ようやくタピオが声を発すると肩の蓋が開き、何十発ものロケット弾が飛び出す。

 最初はスティックのり程度、少し離れると500ミリペットボトル、さらに離れると2リットルのペットボトルぐらいの大きさのロケット弾になる。


 ドーン! ドカーン! ドンドン! ドッカーーーン!!


 こうしてタピオから放たれたロケット弾は、迫り来る飛行モンスターに命中し、爆風を撒き散らすのであった。


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