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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
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006 ハミナの町


 護衛依頼を面倒くさそうに受けたタピオに、馬車に乗せられたヨーセッピ老人は頭にクエスチョンマークが浮かんだ。


「あの~……何をなさるのでしょうか?」

「誰かを待つのも時間の無駄だからな」

「はあ……でも、馬も無しでは……」

「大丈夫だ。行くぞ!」

「うっ、うわわわわわ……」


 ヨーセッピの驚きと共に馬車は動き出す。


 それは何故か……タピオが馬車を引いて走り出したからだ。


 しかし、最初は驚いていたヨーセッピだったが、すぐに安心する。


「馬車と速度はさほど変わらないんですな」


 そう。タピオの走る速度は、馬が引く速度と変わらないのだ。本気を出せばもう少し速く走れるのだが、ほんのちょっとなので、自分の疲れない速度をキープしている。


 安心感のある速度だったので、ヨーセッピは御者台に座ってタピオの姿を眺める。しかし、人を馬車馬のように走らせるのはバツが悪いのか、あれやこれや話し掛けてしまう。

 タピオは自分のことになると口を閉ざし、ヨーセッピの話には相槌を入れるだけ。だが、ずっと喋り続けるヨーセッピに乗せられ、タピオはうっかり自分の情報を漏らしてしまった。


「その歳で、一回も結婚したことがないのですか!?」

「ま、まぁな。人見知りだから、こうやってじいさんと話すのも億劫(おっくう)なんだ」


 タピオはやんわりと話すことを拒否したのだが、ヨーセッピは逆に武勇伝を饒舌(じょうぜつ)に語る。

 やれ五股をしたことがあるだとか、やれ愛人は七人いただとか……タピオは辟易(へきえき)と武勇伝を聞いていたのだが、あるワードに反応して足が止まった。


「どうかなさいましたか?」

「さっきの性奴隷ってのは、どこに行ったら買えるんだ?」

「おほっ。タピオさんも好きですな~」

「ち、違う」


 タピオは三度もでっち上げの強姦罪で捕まったこともあり、極端に女性を避けている。なので普通の女は恐怖の対象。商売女も怖くて近付けない。

 一度男色に目覚めたこともあったが、それはあくまでも女に見えたからであって、もしも抱けるなら、迷わず女を抱くだろう。


 しかしヨーセッピの性奴隷発言で、お金さえ払えば孤独の淋しさを埋められると考えたタピオ。いや、性奴隷と聞いて諦めていた童貞喪失を叶えることができると考えて、やや前傾姿勢で走り続けるタピオであった。



 目指していたハミナの町に着くと、タピオは門の前で馬車を停車する。門の前にはそこそこの人だかりがあり、かなり変な目で見られていたのでヨーセッピを降ろすと、ここでお別れをする。


「あとは、誰かに馬を用意してもらえばいいだろう。それじゃあな」

「待ってくだされ。これをお持ちになってくだされ」

「手紙??」

「これは、その……読んでもらえばわかります!」

「?? まぁあとで読むさ」

「本当に助かりました。有り難う御座いました!!」


 深々と頭を下げるヨーセッピをあとに、タピオは門へと向かう。そこで門兵に、冒険者カードを見せて中に通してもらった。


 ハミナの町は栄えすぎず、かといって寂れているわけではなく、ほどほどの活気があり、タピオは冒険者ギルドで聞いた情報通りだとホッと胸を撫で下ろす。

 そうして町並みを見て歩き、ケモミミ姿の人間の多さに驚き、何軒か宿屋を見てから、二番目に安い宿に入って部屋を取る。


 夕暮れ時とあり、一階の食堂で夕食をいただくと、部屋に戻ってベッドで横になる。タピオはこのまま眠ってしまおうかと思ったが、ヨーセッピから受け取った手紙を思い出し、ゴソゴソと取り出した。


「手紙だけか……」


 タピオは、ヨーセッピがどうして焦りながら手紙を渡したのかと不思議に思いながら目を通す。しかしその理由はすぐにわかることとなった。

 その手紙にはお勧めの宿屋と簡単な地図が書いてあり、それだけでなく、お勧めの奴隷館の名前が書いてあったからだ。さすがに大勢の目のある場所で、奴隷館の話はできないとヨーセッピは自重したようだ。


「ほう。明日は、この宿に行ってみるか。それとこの奴隷館にも……。あのじいさん、思ったより顔が利くみたいだな。まぁさっさと寝てしまおう。ふぁ~」


 と、独り言を呟いて眠るタピオ。いや、性奴隷に興奮して、一人でゴソゴソしながら何時間も眠りに就けなかったタピオであったとさ。



 そして翌朝……


 タピオは目を血走らせて宿を出た。道行く人も、ズシズシと歩くタピオを見ては道を開ける。そうしてヨーセッピから教えられた奴隷館に辿り着き、舘の前を何往復もしてから扉を開くタピオ。

 奴隷館に入ったタピオは応接室に通され、かつてないほど緊張している。性奴隷を買えば、三十年以上も掛かっていた童貞という呪いを解除できるのだから致し方ない。ズボンの一部がテントになってしまっても仕方がないのだ。


 しばらく待っていると応接室の外が騒がしくなり、ドアが開く。


 その瞬間、タピオは恋に落ちた……


 一番始めに入って来た女性の、揺れる白い髪、白い肌、綺麗な顔立ち、歩く姿に目を奪われ、息を吸うことも忘れるタピオであった。


『アイムキャット❕❕❓』好評……かどうかわかりませんが連載中!!

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