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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
55/330

055 上級ダンジョン4(王都)


「ひとまず、こちらはお返しします」


 両手に花で、クリスタとイロナに腕を締め付けられていたタピオの元へ、オルガからドロップアイテムが戻される。

 そのおかげでまたタピオの目がオルガの巨大な二個の球体に行き、イロナに腕を折られ掛け、十分な罰を受けていた。


「つつつ……さっきも言ったが、口止め料だから、受け取ってもらったほうが助かる」

「いえ、これがなくても、私たちは口外しないと約束します。命を救ってもらえただけで十分ですので」

「まぁ、それでいいなら……」


 オルガから目を逸らし、先ほどまでのやり取りが決着すると、タピオはイロナの顔を見ながらオルガと喋る。


「で……それだけか用件じゃないんだよな?」

「はい。お二人を、護衛に雇わせて欲しいのです」

「護衛? それだけ引き連れているんだから……」


 タピオは10人の大所帯パーティだから大丈夫だと言いたかったようだが、それでも全滅し掛けていたので言い淀む。だが、オルガは嫌な顔ひとつせずに、タピオの言い掛けた先を喋る。


「全員、役立たず……ですかね?」

「そ、そんなことは思ってないぞ」

「いえ、私を含めて、実力不足だと実感しておりました。ですので、お二人を頼りたいのです」


 タピオは面倒事は避けたいようだが、ニッコリと微笑むオルガの顔がチラッと目に入り、続いてポヨンとした物も目に入り、イロナの締め付けが強くなる。


「ぐっ……わかった。どうせもう三階も下りたらセーフティエリアだ。勝手について来て、そこから転送魔法陣で帰ればいいよ」


 イロナの締め付けを耐えながらオルガを見ないで答えるタピオ。護衛を受けるというより、寄生プレイをすれば無事に地上に帰れると示唆する。


「それでは困ります」

「なぜだ? タダで帰れるじゃないか??」

「私たちの目的は、ダンジョンボス討伐だからよ」


 オルガとタピオの会話に、ようやくタピオの腕を離したクリスタが入る。


「いや、その実力じゃ、途中で死ぬぞ」

「だからオジさんに護衛をしてほしいのよ」

「あ~……なるほど」


 ようやく合点のいったタピオ。自分たちの弱さを認めて、恥を承知で頼んでいるのだと察した。


「でもな~……ラスボスに挑んだところで役に立たないんじゃ邪魔だし、分け前も取られるんじゃやってられない。やっぱ護衛は受けられないな」


 タピオは総合的に判断して結論に至るのだが、クリスタは引くつもりはないようだ。


「分け前なんていらない! 護衛料も弾む! 邪魔にならないようにするから、お願いします!!」


 深々と頭を下げるクリスタの必死さが伝わったタピオは問う。


「まだ若いんだから、レベルを上げてから挑めばいいだろ。なんでそうまでして無理をするんだ?」

「ゆ……だから……」

「ん?」


 クリスタは何か呟いたが、声が小さすぎてタピオは聞き返す。


「勇者だから……私が、勇者クリスタ・テイッティネンだからよ!」

「「はい??」」


 まさかの女勇者の登場。こんなに弱い女性が勇者だとはこれっぽっちも思っていなかったタピオとイロナは、突然の発表で驚きの声が重なる。


「私は聖女をしているオルガです。そして、こちらが賢者のヨウニ・ラハデです」

「「………」」


 上級職の揃い踏み。これだけ揃ってあの(てい)たらくでは、イロナは言葉が出ない。しかし、タピオがガタガタ震えているので気になるイロナ。


「主殿。どうかしたか? 顔色も悪いぞ?」

「な、なな、なんでも、なない」

「いや、おかしいだろう……少しこいつらと距離を取ろうか?」

「う、うん」


 イロナはタピオの様子がおかしいので、クリスタたちには話し合って来ると言って、タピオを担いで離れて行く。



「いったいどうしたと言うのだ?」


 クリスタたちから離れた位置にタピオをドサッと下ろしたイロナは問う。いまだに震えているタピオは、アイテムボックスから水筒を取り出してガブガブ飲んで、息を整えていた。


「はぁはぁ……すまない。ちょっと嫌なことを思い出して」

「嫌なこと?」

「俺の国の聖女にハメられたことを話しただろ? その時の聖女の顔とかを思い出してしまったんだ」

「あ~……そんなことを言っていたな」


 タピオのトラウマは、イロナはあまり気に掛けていなかったようだ。


「まぁ主殿は無実なのだから、忘れるのが一番だ」

「俺もそうしたいんだけど……」

「わかった。もしもその聖女とやらが現れたら、我が一片の肉も残さず消してやろう。それで万事解決だ」


 イロナはナイスアイデアのように怖いことを言うので、タピオは聖女よりもイロナのほうに震えてしまう。


「や、やりすぎだ……」

「フフ……冗談だ。だが、聖女と我とでは、我のほうが恐ろしいとわかっただろ?」

「う、うん……」


 そんな怖い女をそばに置いていると知って、ますます怖くなるタピオ。しかしそのおかげで、トラウマは少しは解消されるのであった。


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