054 上級ダンジョン3(王都)
先客の騎士7人がオーガジェネラルの群れに押されて倒れるなか、タピオとイロナは戦闘に飛び込んだ。
倒れて無防備な騎士に飛び掛かるオーガジェネラルを数匹吹き飛ばしたら、しばらく戦闘はイロナに任せ、タピオはまだ立っている二人の女性と老人に近付く。
「先を急ぐから、俺たちが倒してしまっていいか?」
「た、助かります! お願いします!!」
「別に助けるわけではないから気にするな」
声を掛けると、一番若そうな軽鎧を装備した女剣士クリスタが助けを求めて来たので、タピオはぶっきらぼうに返して戦闘に戻る。
緊急事態ということもあり、タピオも剣を使って斬り飛ばして進み、何匹も相手取っていたイロナと背中を合わせる。
「ボスはやったか?」
「まだだ。だが、主殿が来たということは、ここは任せていいのだろ?」
「ああ。好きに動いてくれ」
イロナもいちおう先客に気を使ってオーガジェネラルを引き付けるように戦っていたらしく、タピオが来るのを待っていたようだ。
なのでタピオと言葉を交わしたら、イロナは一際大きなオーガキングに突撃。一直線に突き進み、飛び掛かるオーガジェネラルを斬り捨てる。
その間タピオは、弱って動けない先客を標的にするオーガジェネラルの処理。盾で吹き飛ばし、剣で薙ぎ払い、手数が足りなければケンカキックで押し戻す。
それを何度も繰り返せばオーガジェネラルは次々と脱落し、数が減って行く。
その頃には、道を塞ぐオーガジェネラルを斬り倒していたイロナも、巨大なオーガキングに辿り着いていた。
その戦闘も一方的。振り下ろされたイロナの身長ほどある棍棒は、右腕と一緒に斬り落とされ、ぶっとい右足も体から離れる。
そして倒れる前に、頭から下半身に掛けての一刀両断。イロナは剣の切れ味に感心していて、オーガキングの倒れる姿を見ずに決着となった。
「もう少し残っているぞ。俺がやってもいいのか?」
掃討戦の移行したタピオは、剣を眺めているイロナに追い付いた。
「剣の錆びにしてくれよう!」
「そう言うと思った。あとは任せるよ」
イロナがオーガジェネラルを追い出すと、タピオは「新品の剣だから錆びさせないでほしいな~」と思いながらドロップアイテムを集める。
そうして最後のオーガジェネラルにトドメを刺したイロナに追い付いたタピオがドロップアイテムを回収して、戦闘は完全に終了するのであった。
戦闘が終了するとタピオとイロナは、治療をしている冒険者と騎士の集団に近付く。
「助けていただき、ありがとうございました」
「いいって。それと、これな」
タピオは頭を下げる黒髪ショートの女剣士クリスタの前に、先ほど手にいれたドロップアイテムの全てを積み上げる。
「これは??」
「横取りしたからな。それは全てお前たちの物だ」
「い、いえ! 助けてもらったのに、こんなのもらえないわ!」
「じゃあ、口止め料だ。いま見たことは、全て忘れてくれ。それじゃあな」
いくら無理矢理であっても、冒険者が自分の稼ぎになる物を受け取ったからには口が固くなるのは目に見えているので、口止めには多少の効果はある。
タピオは自分の情報を流さないことを祈りつつ、踵を返すのであった。
「待って!!」
しかし、クリスタが待ったを掛けたので、タピオは無視。聞こえないふりをして、イロナと腕を組んで足早に離れる。
「待って! 待ってよ~~~」
残念ながら、クリスタはタピオの腕に絡み付いて来たから引きずり続けるわけにもいかず、タピオも止まるしかなかった。
「まだ何か欲しいのか? あれだけのアイテムがあれば十分だろ……わかった。金を払うから、それで勘弁してくれ」
「違うの~~~」
タピオは半分わざとで的外れなことを言ったのだが、そのせいでクリスタは涙目になってしまった。
「取り分のことだろ? 正直、俺たちのことを忘れてくれることが、一番の取り分になるんだ。だから気にせず収めてくれよ」
「それもそうだけど、違うのよ~~~」
クリスタが引き止めている理由は、もらい過ぎだとは合っていたのだが、タピオの答えは半分しか正解ではなかった。しかし、クリスタは引き止めている理由をなかなか語らず、タピオの腕から離れないので困ってしまう。
そこに、騎士の手当てを終えた修道女のような姿の女性オルガと、軽装で杖を持ったネズミ耳老人ヨウニが走って来た。
「どうか、お話だけでも聞いてくれませんか!」
オルガがタピオに声を掛けると、タピオは顔に目が行き、次に大きな二つの揺れるものを凝視する。
「わかった」
そして何故か即答。
「私の時と対応がちっが~~~う!!」
「主殿、我はそんなに小さいのか?」
「いたっ! 痛いって!!」
そして胸を判断基準にしていると思われて、クリスタとイロナに腕を締め付けられるタピオであったとさ。