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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
50/330

050 自由行動4


 鍛治屋でイロナの剣の支払いを終えたら、タピオとドワーフのスロは世間話に変わる。


「あ、そうだ。明日からダンジョンに潜るから、引き取りは一週間ぐらい先になると思う」

「それって上級か?」

「ああ」

「変な噂があるから気を付けろよ」

「うわさ?」


 スロが言うには、最近勇者が立て続けて代替わりしており、その勇者が上級ダンジョンのラスボスを倒していないのではないかと噂が流れているらしい。


「ふ~ん……国が管理してるんだから、そんな不正はできないだろ?」

「俺も剣を作ってやったんだが頼り無さそうだったんだよな~……まぁ証拠は持ち帰っているから嘘だとは思う。でも、地下30階より下で見たって奴がいないらしいんだ」

「それだけクリア速度が早いってだけだろう」


 タピオたちの世間話に、おニューの剣を素振りしていたイロナが入って来る。


「勇者か……どれだけ強いか、剣を合わせてみたいものだ。クックックッ」


 スロはイロナに勝てないと言おうとしたが、ある程度の実力は剣を見てわかったので、もしかしたら瞬殺してしまうのではないかと考えてしまう。

 タピオも同じことを考えていたが、不適に笑うイロナの顔が怖かったので、止めざるを得ない。


「頼むから勘弁してくれ。俺は静かに暮らしたいんだ」

「まぁひと目見て弱そうだったら勘弁してやる」

「いや、それ、強かったら戦うってことだろ?」

「強そうだったらな。ちなみに、いま一番戦ってみたいのは主殿だ。せっかくいい剣が手に入ったんだ。手合わせしてみないか?」

「ぜったい死ぬから嫌だ!!」


 鬼に金棒。イロナに銘刀。タピオがフル装備ならば素手のイロナに殺されないかもしれないが、SSS級の剣を持ったイロナでは確実に殺される自信のあるタピオ。

 必死に殺さないでくれと頼んでいたので、タピオとイロナの関係がわからなくなるスロであったとさ。



 タピオとの真剣勝負は、いまのところイロナと夜の相手を務められる男がいないからひとまず保留となり、鍛治屋をあとにする。

 その足で冒険者ギルドに向かい、タピオは受付にて情報を仕入れようとする。


「あ、はい。書庫の鍵ですね。金貨50枚になります」


 犬耳受付嬢に頼んだら、ぼったくり価格。タピオはまた一から面倒なやり取りをしなくてはいけないのかと思ったが、イロナから銀貨を貸してくれと言われたので、ここは任せる。


「すみませんでした! 本当は金貨1枚です! 折り曲げないで~~~!!」


 イロナが銀貨を四つ折りにするだけで解決。しかし、イロナはまだ納得していない。


「まだ高いな。この国では三度のやり取りが必要だったか……」

「ヒッ……」

「イロナ! これが適正価格だ! これ、料金な。迷惑かけてすまない」


 イロナが銀貨を戻しながら脅すので、タピオは慌てて止めて謝り、書庫の鍵を受け取って移動する。そうして最近発行された攻略本を見付けたら、テーブル席に着いた。


「本を読むだけで、金貨1枚は高すぎないか? いま泊まっている宿ならいつまでだって泊まれるぞ」

「イロナもある程度の価値がわかって来たんだな。ここの本は貴重だから、高いことは覚えておいてくれ」

「こんな物がか……何が書いてあるのだ?」

「上級ダンジョンの情報だよ」


 タピオは分厚い本をペラペラと捲り、イロナに説明する。

 攻略本には、上級ダンジョン内の地図、フロア事の出現モンスターとドロップアイテム、宝箱から出て来たアイテム、ボスの種類と弱点も書かれている。


 攻略本のほとんどは、上級ダンジョンに挑戦した勇者が記録したもの。そもそも勇者の役割は、冒険者では難しいダンジョンに潜り、定期的にダンジョンボスを倒して、ダンジョンエネルギーを消費をさせること。

 これを(おろそ)かにするとエネルギーが溜まりすぎて、ダンジョンレベルが跳ね上がる。階が増えるだけならいいが、100階を超えると魔王が発生してしまう確率がグッと上がるので、上級ダンジョン制覇は勇者の大事な仕事なのだ。



「なるほどな。人族とは無駄なことをしているのだな」

「まぁ半分以上当てはまらないから、無駄っちゃ無駄か。でも、傾向と対策なんかは立てやすいから、全てが無駄ではないぞ」

「前回は主殿も読んでいなかったじゃないか?」

「俺は自分の足で進んで、頭の中に記憶してしいるから読む必要がないだけだ」

「ん? ならば、何故、わざわざ高い金を払って読んでいるのだ?」


 イロナの質問に、タピオはまた攻略本を捲って答える。


「たしか最後のほうに……ここだ。このページに、勇者がクリアした時の日付とダンジョンボスの種類が書いてあるんだ」


 タピオが指を差すと、イロナは目を輝かせる。


「おお! ドラゴンの上位種が何匹も出て来ているぞ。グリフォンに、これは……レジェンドドラゴンまで出たのか!!」

「昔は強いモンスターがよく出たみたいだな」

「昔? あ、確かに、中盤からは弱くなっているな。どうしてだ??」

「勇者が潜る回数を増やしたんだろう。それで他の冒険者もクリア可能な時期もあったようだな」


 タピオはダンジョンボスの名前を指でなぞり、イロナに説明して行くが、後半になるとピタリと止まる。


「むぅ……なんだかこの辺、変じゃないか?」

「イロナも気付いたか?」

「ああ。最近のものは弱すぎる。その直近と比べると急激に弱くなっているし、今までこんな弱いボスではなかった」

「だよな~。たぶん……」


 タピオが予想を告げると、イロナの目が先程よりもさらに輝く。


「さっそく乗り込もう!」

「ダンジョンは逃げないから~」


 こうしてイロナを止めることに多大な労力を使うタピオであったとさ。


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