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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
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005 逃亡中


「ホッホッホッホッ」


 タピオは自由を感じ、足取り軽く走っていた。ただし、見た目は重量級。背は平均より高いぐらいだが、はち切れんばかりのマッチョな体をしている。

 この体では、装備している皮の胸当てが申し訳なさそうにしている。歳もそれなりにいっており、見た目通り無精ヒゲのオッサンだ。


 目的地は、誰も自分のことを知らない町。そうして軽やかに走っていたら、目の前に襲われている馬車を発見した。


「オークか……ま、俺には関係のないことだ」


 見て見ぬ振り……二足歩行の大きな豚、オーク2匹に馬車が襲われていても、タピオはスピードを落とさずに軽やかに走り、馬車の横を抜けようとする。


「ひぃぃ! た、助けてくだされ~!!」


 しかし、馬車の後ろから顔を出した老人は、必死の形相でタピオに助けを求めて来た。


 その顔を見たタピオは悩む。


 悪い老人には思えない。

 しかし、騙して来る可能性は考えられる。

 かといって、見捨ててしまっては寝覚めが悪い。


 タピオは悩んだ結果、オークに突撃した。いや、タピオの走る道を塞いだオークと衝突した。


 オークはタピオより大きい。

 力負けするわけもない。

 簡単に押し潰せる。


 誰しもがそう考えられる状況で、結果はまったく別となった。


 タピオに倒されたのはオーク。それもぶつかった衝撃で遠くに飛ばされた。

 仲間のオークがそんな目にあわされたならばもう一匹は怒り、走って近付くタピオに棍棒を振り下ろした。


 木っ端微塵。タピオの頭ではなく、棍棒がだ。


 オークが驚いたのも束の間、タピオの体当たりによって吹き飛ばされる。そこにトドメ。まだ息のあるオークに、タピオは顔を踏み潰して走り去り、もう一匹も踏み殺したら、カーブして馬車の前にて止まった。


「じいさん。もう大丈夫だ」


 馬車に戻って一声掛けると、恐る恐る老人は外に出て来た。


「あ、ああ……もう命がないものと諦めていました。このご恩、どうお返ししていいか……」

「別に返さなくていい。それより、俺に近付かないでくれ」


 杖をついてヨロヨロと近付く老人に、タピオは制止を求める。人間不信なので、近付かれたくないようだ。


「しかしあなた様は冒険者でしょう? オークを簡単に倒したところをみると、立派な職業の高ランク。そんな人にお礼をしないわけには……あ! お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「名乗る名など……いや、もういいのか?」


 老人の質問に、タピオは何やらブツブツ独り言を呟いて答えを出した。


「俺は、ヤ……タピオ。職業もたいしたことはない。じゅ……武道家。最近、冒険者登録をし直したから、ランクは一番下だ」


 タピオは三回も強姦罪で逮捕されているので、何やら歯切れの悪い自己紹介をしてしまう。現在は、隣の隣の国から逃亡中でもあるので、致し方ないことだろう。名を変え、職業を偽り、ひっそりと暮らす予定なのだ。


 老人もタピオの説明に何か引っ掛かっていたが、命の恩人にあれやこれや聞くのは失礼と感じ、それ以上の詮索はしなかった。


「私はヨーセッピと申します。本当に有り難うご……」

「ああ。礼はいい。それより、オークは俺が貰っていいんだよな?」

「は、はい。もちろんでございます」


 タピオは手際よく解体すると、高値で売れる部位と自分が食べる肉、魔石だけをアイテムボックスである腰袋に入れる。

 残りは道から離れた場所に、スコップで大穴をあっと言う間に掘って埋めていた。そうして作業を終えたタピオは、走り出すのであっ……


「待ってくだされ!!」


 いや、ヨーセッピに止められて、タピオは仕方なく近付く。


「まだお礼が終わっていません。どうかこれを受け取ってくだされ」


 ヨーセッピは金貨の入った皮袋を手渡そうとするが、タピオは手の平を前に出して止める。


「いらないと言ってるだろ」

「そういうわけには……」

「馬もいないんだから、ここを通った人に助けてもらうのに必要だ。大事にしまっておけ」

「で、では、冒険者として雇わせてくだされ! 実は……」


 ヨーセッピがタピオを引き止めていた理由は、馬車の積み荷を心配していたからのようだ。高価な品も乗っているので、もしも盗賊に襲われたならば命も失うが、息子に譲った店の信頼も落ちる事態になるので、タピオを雇いたいらしい。


「それなら最初から雇っておけばよかったんじゃ……」

「そうしたのですが……」


 どうやら雇った冒険者は、傷んだ魔物肉を食べて途中下車。元々それほど危険な道ではないので強行したら、この始末となったようだ。


「しかし……護衛依頼なんて受けたことがない。馬も無しとなると……」

「一晩か二晩だけでいいのです。それだけ待てば誰かが通りますし、馬を用立てられるはずです」

「そんなに時間が掛かるのか……面倒くさい……」

「そこをなんとか!!」


 必死に頭を下げるヨーセッピを見てタピオは悩み、面倒くさくなって渋々受ける。


「わかった。ただし、俺の要求を聞いてもらうぞ?」

「はい! なんでも言ってくだされ!!」

「じゃあ、行き先は……」


 ヨーセッピの行き先はタピオと同じだったため、大金を貰うのは気が引けたようで、金貨一枚を前払いで要求するのであった。


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