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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
04 カーボエルテ王国 王都1
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047 自由行動1


 ウサミミ亭の自室にて目覚めたタピオとイロナは食堂に行くと、すでに食事は用意されていた。


「お、おはようございます……」

「お、おはよう……」


 ぎこちなく挨拶を交わすエイニとタピオ。

 タピオは昨夜の岩風呂で、エイニの裸を凝視していたことがバレて気まずいらしい。エイニも、タピオたちの行為を覗いていたところで不本意に乱入した経緯もあり、ツッコめないでいる。


「ああ。おはよう。うむ、今日のメシもうまいな」


 イロナは通常運転。エイニの乱入には多少怒っていたが、昨夜のプレイをタピオに褒められたのでチャラ。ひょっとしたら、うまい料理を作るからエイニは生かされているのかもしれないが……


 二人が食後の紅茶までいただくと、エイニがおかわりを持って近付いて来た。


「お二人は冒険者さんですよね? あと何泊して行くのですか??」

「え? 一泊の予定だったんだが……」

「そんな~~~」


 しれっと連泊を促すエイニであったが、タピオはこんなボロ宿は出て行きたいようだ。しかしエイニに涙目で見られたタピオは、エイニの心の声が聞こえていた。


「あんなに私の体を舐めるように見ていたのに~~~」

「わかった! わかったから言いふらすなよ!!」


 いや、エイニは口にも出したので、何度も冤罪で捕まったことのあるタピオには、事故であっても脅しのネタにはもってこいなのだ。


「おい……主殿を脅すとは、どういう了見だ」

「すみません! 覗いていた私が悪う御座いました!!」


 ただ、最強の味方イロナがいるので、もう使えない脅しのネタであった。だって、その殺気だけで、エイニはチビりそうなんだもん。



「えっと……泊まる分の料金は先払いしてほしいのですが……」


 イロナに睨まれていては、下手に出るしかないエイニ。恐る恐るお金の話をすると、タピオは数日分をまとめて支払っていた。


「あれ? 多いですよ??」

「チップだ。修繕費の足しにしろ」

「あ……ありがとうございます!」


 タピオがぶっきらぼうに対応すると、エイニは断ることもなく懐に入れる。


「あと、私は昼の間はアルバイトに行かないといけないので、要望がある場合は朝か夜に聞きます。出掛ける場合は、部屋の鍵だけはしっかりかけてください」

「表の鍵はいいのか?」

「こんな幽霊屋敷、誰も入って来ませんよ~」

「それ、自分で言うのか??」


 タピオがツッコんでも、エイニはケラケラ笑うだけ。せめて扉の鍵をしていこうかと言っても、ボロボロの扉に鍵をかけても壊せるし窓から侵入できるので、やる意味がないと言う始末。

 セキュリティーに不安があるので宿を変えたくなるタピオだったが、エイニはそれを察して、「大事な物がある場所はセキュリティーはバッチリ!」と先に言われていた。



 それから何故かエイニの出勤を二人で見送り、タピオとイロナは庭をうろついていた。


「う~ん……庭というより森だな」

「本当に一部分しか手入れが行き届いていない」

「せめてあの木がなくなれば、俺たちの部屋にも光が入ってきそうなんだがな~」

「ならば切り倒してしまおう」

「待て!」


 タピオの制止は聞かず、イロナは腰の剣を抜いて、すれ違い様に大木の根元を切ってしまった。


「やばっ! こっちに倒れて来てる!!」


 大木は建物に向けて倒れるので、このままではぶつかる。なのでタピオは両手で押して、逆に倒していた。


「まったく……あの子が大事にしている木だったらどうするんだ」

「武器ならわからなくはないが、木なんか大事にするものなのか?」

「建物だって大事にしていただろ? 思い入れの強い物は、なんでも大事にするんだよ」

「ふむ……トゥオネタル族にはない文化だな」


 イロナがいちおう納得してくれたので、タピオは今後の話に移る。


「イロナの剣が出来るまで、自由行動にしようと思う」

「なんだ? ダンジョンに潜らないのか??」

「潜りたいけど、いまの武器では最下層まで持たないだろう。それに、ここの上級ダンジョンは90階もあるらしいし、戻るのは五日ぐらい……剣があと二日で出来るなら、待ったほうが効率的だ」

「ふむ……ま、我も新しい剣ならば、早く振ってみたい気持ちはあるな。わかった」


 イロナを説得できたらタピオは自由行動するのだが、イロナは自由行動に何をしていいかわからないらしく、タピオに付き合うようだ。



 ウサミミ亭を出てタピオが向かった場所は、材木屋。タピオの持っていたリヤカーに長い板や塗料を乗せられるだけ乗せて、ウサミミ亭に戻る。

 それから庭に材木を広げ、タピオの持つ大工用具を装備すると、屋根に上って状態を確認していた。


「主殿は、意外と器用なのだな」


 タピオが雨漏りのしそうな箇所をトントンとトンカチ片手に直していると、屋根までついて来ていたイロナが質問している。


「奴隷鉱山に送られた時に家を建てる事があったから、大工だった奴から習ったんだ。将来、家の手入れとか自分でできるかもしれないからな」

「そんな先まで考えていたのか……我らはその日暮らしだったぞ」

「そんな奴も人族には多いぞ。トゥオネタル族はどうかわからないけど、年取ったら働けないから準備しておかないとな」

「なるほどな。我らは死ぬまでダンジョンに潜れるから必要ない文化だ」


 タピオの大工姿が面白いのか、文化の違いが面白いのか、イロナはずっとタピオを見ながら質問し、時間が流れる。


 そうして四時頃になったらエイニが戻り、庭で木をノコギリでギコギコ切っているタピオたちの元へ現れた。


「何してるんですか!」


 宿屋の中を見て回ったエイニが怒鳴り付けるので、タピオは申し訳なさそうに謝る。


「勝手して悪い。実はあの木を切り倒してしまったから、せめてもの罪滅ぼしで、痛んでいた箇所を直していたんだ」

「あの木は……」


 タピオが大木を指差すと、エイニはヨロヨロと近付いて膝を突く。


「ひ、ひ……」

「やはり、思い出の木だったのか……」


 酷いと言われると察したタピオは暗い顔をする……


「ひゃっほ~! 大きくなりすぎていたから早く切りたかったんですよね~!!」


 必要はなかった。エイニは小踊りしてるし……


複数更新はきびしくなって来ましたので、ここからしばらく一日一話更新していきます。

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