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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町
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034 上級ダンジョン7


 ジャイアントスコーピオンが突撃して来ると、タピオは盾で受け、イロナは右から回り込む。1ミリも後退しないタピオのおかげで素早く横に移動したイロナは、中華包丁みたいな剣で足を斬り落とした。

 ジャイアントスコーピオンが痛みで気を取られている内に、タピオも左に回り込み、分厚いショートアックスで足を叩き斬る。


 そこからはタコ殴り。二人のほうがレベルが高いので、ジャイアントスコーピオンはガンガンHPを削られ、起死回生の毒の尾もタピオの盾で防がれ、ショートアックスで切断されて、あっと言う間に地面に沈むのであった。



「むう……やはり、我一人でやればよかった……」


 多少は歯応えのある相手だったのだが、二人でやったがために楽しみが減って、イロナの頬が膨らむ。


「ま、まぁ、いまので俺のレベルが上がったから、イロナの予定通りだろ?」


 またイロナの機嫌が悪くなると困るタピオは、ちょうどレベルアップしたことを引き合いに出してみた。


「おお! 今晩が楽しみだな。サービスしてやるぞ!!」


 だが、性奴隷希望のイロナは嬉々として喜ぶので、タピオの股間に痛みが走った。


「いや……イロナに追い付いただけだからな? 初日に戻っただけだからな??」

「うっ……そういえばそうだった」


 残念ながら、イロナは先日レベルが上がっていたので、タピオとの差は変わっていない。いちおうそのことに気付いてくれたので、タピオは無茶な要求が来ないとホッとするのであっ……


「我が戦えば主殿のレベルが上がらない……しかし戦いたい……我はどうすればいいんだ~~~!!」


 何やら頭を抱えるイロナを横目に見ながら、ドロップアイテムを拾い集めるタピオであったとさ。



「えっと……レベル差があるから、いまのペースで行けば、徐々に差が縮まるのでは?」

「それだ!!」


 ドロップアイテムを拾い終えても頭を抱えていたイロナにタピオが助言すると、悩みが消える。もちろんタピオは「俺に譲ってくれたほうが早くレベルが上がるのに……」と気付いていたが、怖いから口に出さないのであった。


 イロナが気を取り直すと、タピオは遠回しに剣を返して欲しいと言ったが「まだ試したい」と言うので返してもらえず。

 仕方がないので先へと進むが、イロナがなんだか張り切ってタピオの獲物まで取るので、タピオも離されるわけにもいかないから必死にショートアックスを振るう。

 その甲斐あって、上位冒険者より早くに地下50階に到達。セーフティエリアで遅めのランチを取りつつ雑談する。


「失敗した……」

「ん? 何がだ??」

「急いでいたから気付くの遅れたんだけど、ここのダンジョンって下に行くごとに広くなっていただろ?」

「そういえばそんな気がするな。それがどうしたというのだ?」

「こんな所にセーフティエリアがあるってことは、この先はめちゃくちゃ広くなっている可能性がある」


 イロナに言いたいことが伝わっていないと感じてヤルモは続ける。


「つまり、それだけ広いのに、この先にセーフティエリアが無いんだよ。たぶん丸一日か二日でここに到達して、休憩してから60階のボスに挑むのが普通だと思うんだよな~」

「我等なら、どうするのだ?」

「このペースでいくと、早くて明日の午前三時辺りにボス戦ってところだ。俺は大丈夫だけど……」


 タピオが恐る恐るイロナを見ると、答えを述べる。


「主殿は、我が徹夜ごときで戦えなくなると……」

「いや、そこまでは思ってない。聞いただけだ」


 睨まれてブルッときたタピオは慌てて訂正したら、イロナは顔を崩す。


「まぁ睡眠不足は、体の動きが鈍るのは理解している。ただ、これだけ弱ければ、我なら大丈夫だ」

「そうか。それなら、ここで仮眠を取ってから行こうかな? 俺もきついし」


 タピオは三日三晩動き続けられるスキルを持っているから大丈夫なのだが、イロナに教えるつもりはないようだ。バレてしまうと、三日三晩レベル上げさせられると思っているのだろう。


 ランチをガツガツ食べると、小一時間の睡眠。タピオはいつでもすぐに眠れる特技を持っているから横になった瞬間に眠り、イロナはタピオの腕を撫でていたら眠りに就いた。

 それから目覚めたタピオとイロナは装備を整え、地下へと向かう。



 地下51階に下りても、相も変わらずモンスターを吹き飛ばし、ガンガン進むタピオとイロナ。

 55階からは、やっとイロナのお眼鏡に叶う巨大なモンスターが出て来たが、タピオの盾を崩せず、すぐに倒れてしまう。しかし、イロナは合点がいかないのか、また機嫌が悪くなって来た。


 とりあえず地下へと向かう階段の途中で、水分補給をしながらタピオはイロナの機嫌を取る。


「さっきからどうしたんだ?」

「この剣だ……」


 ここでようやくイロナは、タピオの剣を返す。


「切れ味が悪いし重心が変な所にあるから、どうも連続した動きが上手くいかないのだ」


 どうやらイロナは、思ったような斬り方にならないので、次の行動が微妙に遅れて乗りきれないでいたらしい。タピオの目には凄まじい速度で流れるような動きをしていたように見えていたのだが、本人からしたら、まだまだであったようだ。


「言っただろ? 壊れにくく作っているから切れ味が悪いって」

「まだ、買ってもらった剣のほうがマシか……帰ったら、もっといい武器を買ってくれ」

「この町でか~……売ってればいいんだけどな。探してみよう」


 少しの休憩を終えると、またガンガン進むが、先を歩く冒険者を発見。追い抜きたいタピオは、モンスターを倒して休憩していた冒険者の脇をイロナを伴って堂々と歩き、追い抜いた。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 その時、冒険者たちの間でこんな会話がなされていた。


「俺の見間違いか? オッサンと美女が腕を組んで通りすぎたぞ??」

「俺も見た……ゴーストかも??」

「あ、そういえば、こんな噂話を聞いたことがある」

「なんだ??」

「貴族の令嬢が一目惚れした庶民のオッサンとの結婚を親に反対されたんだ。そりゃ、父親と同年代じゃ反対するだろう。でも、諦めきれない二人は駆け落ちしたんだけど、町は封鎖されていたから逃げ場はダンジョンしかなかったんだって。そこでモンスターに無惨に殺された二人はゴーストになって、ダンジョンの中を徘徊しているんだ。そのダンジョンとは……」


 盗賊風の男が一呼吸置くと、全員、息を飲む。


「う~ん……いまいちの怪談だな」

「「「「ウソか~い!!」」」」


 タピオたちのおかげで話が弾む冒険者パーティであったとさ。


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