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323 トゥオネタルの魔王12


 ナビが二丁の機銃から放った楕円形の弾は放物線を描き、サタンに着弾したら一気に燃え広がった。


「うおっ!?」


 その炎にビックリしたヤルモは、大盾に隠れてナビに質問。


「いまのなんだ?」

『ナパーム弾です』


 答えが返って来ても、ヤルモは兵器の知識は持ち合わせていない。


「まぁいいや。ガンガン撃ったれ」

『了解! 死ね! 死ね死ね死ね~~~!!』


 なので、サタンの猛攻を耐えながら、攻撃はナビ任せ。この攻撃のおかげでサタンの視界を少しは塞げるので、ヤルモたちも攻撃に移れる。


「イロナも好きにやれ~~~!!」

「おおぉぉ!!」


 最終兵器、イロナ再始動。ナパーム弾が破裂して炎が飛び散るなか、イロナは炎ごとサタンを斬り裂く。その斬撃は鋭く、サタンも防御に力を注がなくてはならないので、必然的に手数が減る。


「防御は任せろ!」

「任せた!」


 ここからは、当初の作戦通りにヤルモが守り、イロナが攻撃。ついでにナビも攻撃。

 イロナが防御を捨てて攻撃しているから、サタンに大ダメージが入る。だが、一撃でも攻撃を受けると一気に瓦解するので危険な賭だ。


 その賭ができるのは、ヤルモの力が大きい。イロナが攻撃を受けそうな時には必ず割って入り、自分もバランスを崩さずいなしてくれるからだ。

 これでイロナは体勢を戻せるし、なんならサタンに隙ができるので大ダメージを与えられる。


 しかし、問題もある。ヤルモとサタンのレベル差だ。イロナより強いサタンの攻撃は、いなすだけでも少なからずヤルモにダメージが入るので、ぶつかる度にHPは減って行く。

 それにそんな攻撃は、一度でもミスればヤルモでも行動不能になり兼ねない。その恐怖に耐えながら防御に徹するヤルモの精神を、刻一刻と削り続けているのだ。



「はぁはぁはぁはぁ……」

「大丈夫か?」

「まだまだ~~~!!」


 この拮抗を続けて1時間、ヤルモの息が上がって来たのでイロナが心配していたが、ヤルモは大声を出して自分を鼓舞。イロナを守り続ける。


 それから30分……


「ゼェーゼェーゼェーゼェー……」


 ヤルモに限界が来てしまった。


「よくやった。あとは我に任せろ!」


 ヤルモが膝から崩れ落ちるなか、イロナはサタンに突撃するのであった。


 これは別にヤルモが足手まといだからではない。サタンのHPを十分削り、イロナの強さと同程度まで落としたからだ。

 本来ならばヤルモでは到底敵わない相手からイロナを守り抜いた快挙。だからこそ、イロナはヤルモを褒めていたのだ。



 サタン軍との戦闘を開始しておよそ三時間。イロナとサタンの戦闘は、イロナに大きく傾き、絶えず地下から上がって来ていたモンスターも(まば)らになり、トゥオネタル族も手が空く者が現れ出した。


「クックックックッ……」


 敗戦濃厚のサタンは、それでも不敵に笑う。その異様さに、イロナは足を止めて語り掛ける。


「まさか命乞いするわけじゃないだろうな」


 イロナはサタンが死ぬまで戦いをやめるつもりはない。


「もちろんだ。戦女神を殺すまで余は死ねん」

「フッ……その意気は良し。だが、そんな弱った体で、我に一太刀たりとも入れられると思うなよ」

「まだ余には切り札が残っているから問題ない」

「切り札か……どうせ残りの手札は発狂するだけだろう。時間の無駄だからさっさとやれ」


 イロナは魔王との戦闘を何度も行っているので、切り札は【発狂】しかないと決め付け、それよりも早く使ってもらって楽しみたいみたいだ。


「クックックックッ。その余裕、いつまで続くかな?」

「貴様の余裕よりは長くな」

「ならば見せてみよ! 【魔界の門】!!」


 サタンの切り札は【発狂】ではなく、四天王の再召喚。サタンの後ろに禍々しい巨大な門が現れ、断末魔のような音を出しながら開く。

 そこからトゥオネタル族が倒した四天王、ダークベヒーモス、ダークアークデーモン、ダーク悪魔呪術師、ダーク悪魔騎士が出て来てサタンの前に並ぶ。

 さすがに四天王をまた吸収されるとイロナでもきついのか、片眉をピクリと動かしたが、余裕の顔は崩さない。


「高々ザコが並んだだけだ」


 それどころか、サタンを挑発している。四天王と戦って満身創痍のトゥオネタル族は「嘘だろ~」って顔をしているのに。


「クックックックッ。強がりはそこまでだ!」


 せっかく召喚したばかりの四天王なのに、サタンは全員一太刀で首を()ねた。そしてエネルギーを吸い込みイロナに言い放つ。


「さあ、戦女神……最後の戦いと行こうではないか!!」

「ああ!!」


 こうしてサタンVSイロナの最後の戦いが幕を開け……


「トピアスさん!」

「手が空いてる奴は、一斉に掛かれ~~~!!」

「「「「「ヒャッハ~~~!!」」」」」


 ずに、ヤルモがイロナに駆け寄りながら叫び、トピアスもトゥオネタル族を引き連れてサタンに飛び掛かるのであった。



「何をしているのだ……」


 その光景を呆気に取られて見ていたイロナは、ヤルモに八つ当たり。


「戦女神化! 皆には時間稼ぎしてもらっているんだ! 早くやってくれ!」


 そう。トゥオネタル族の無茶な特攻は、ヤルモの作戦。ヤルモは時間稼ぎが必要になると思い、スタミナが少し回復したらペッコと一緒に走り回っていたのだ。


「ああ。アレか……」

「急がないと全員死んでしまうぞ!!」

「確かにこのままでは不利だな。わかった」


 イロナが嫌そうな顔を一瞬したが、ヤルモの説得に頷く。


「急いでくれよ~」


 サタンに飛び掛かったトゥオネタル族は、一太刀で数人吹っ飛んでいるので、ヤルモは5分も持たずに全員倒れると予想している。

 ヤルモもあそこに飛び込みたいが、もしもイロナの変身中にサタンが攻撃して来たら、命を懸けて守らないといけないので動くに動けない。


 ヤルモは散りゆくトゥオネタル族を見ながら、祈るしかないのであった……


「では、行って来る」

「え? ……もう終わったの!?」


 イロナの戦女神化、物の1分で完了。「アルタニアの時の苦労はなんだったんだよ」と嘆くヤルモの頭上を、翼を羽ばたかせて越えて行くイロナであった……


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