322 トゥオネタルの魔王11
イロナが軍服巨乳人形ナビに興味を持ってしまったのでヤルモは絡まれていたが、サタンとの戦闘後に話すと説得したらなんとか解放されていた。
それからヤルモが顔をバシバシ叩いて気合いを入れ直していると、サタンから放たれた黒い炎が弱まって来た。
『元帥、来ます!』
「方向は!?」
『3時です!』
「うおおぉぉ!!」
そこに、ナビからの警笛。ヤルモがすかさず右手に動いて大盾を力強く構えると、黒い炎を突っ切ってサタンが突撃して来た。
「イロナ!?」
「わかっている!」
その隕石のような衝突は、ヤルモでは支え切れないからイロナが背中を押すことで、なんとか耐えられる。
「このくそっ!!」
しかし、いつまでも引きずられそうになったので、ヤルモは強引にサタンの進路変更。攻撃を大盾に角度を付けてずらし、サタンを斜め横に滑らして見送る。
するとサタンは凄い速さで離れていき、壁にぶつかって止まった。ちなみにトゥオネタル族は、サタンから黒い炎が放たれた時点でモンスターを無視して逃げ惑っている。
『魔法が来ます』
「ああ」
その直後黒い炎が吹き荒れるので、ヤルモは大盾を傘にするように自身とイロナを守る。
『9時の方向から突撃来ます』
「うっし!」
視界が悪くとも、次のサタンの突撃は余裕を持って対応できる。今度は前もって大盾に角度を付けておいたので、サタンは勝手に弾かれて進路変更して通り過ぎた。
「おい……さっきから見えてるのか?」
この視界では、イロナでも目視できるのは接触間際なので、ヤルモの行動を不思議に思っている。
「俺じゃない。ナビが見えてるみたいだ」
『ご謙遜を。元帥あっての私です』
「いやいや、肉眼ではまったく見えてないぞ。てか、どうやって見てるんだ?」
『音波と魔力検知も併用しておりまして……』
「ムゥ……仲良さそう……」
イロナ、ナビ相手に嫉妬。ヤルモのこともゲシゲシ蹴っているけど、そんな場合ではない。
『また魔法の兆候があります』
「わかった! イロナ、次で叩き落とすぞ!!」
「チッ……夜に我との仲を見せ付けてやる」
サタンの攻撃が続いているからだ。でも、イロナはまだ納得いっていないのか、人形相手に性的拷問を見せ付けようとしているな。
『6時の方向!』
「ナビ! 集中放火だ!」
『ファイアー!』
「うおおぉぉ~~~!!」
黒い炎を防御したら、ヤルモは戦車モード。両肩からロケット弾を乱れ撃ち、大盾を構えたままキャタピラを高速回転させて全速前進する。
そのすぐあとに、ロケット弾が次々と着弾するサタンの姿が現れ、ヤルモと正面衝突して衝撃音が轟く。
「喰らえ~~~!!」
ほんの一瞬。サタンがヤルモとぶつかって止まった一瞬を見逃さないイロナ。最速の剣でサタンを上から斬り付けて地面に叩き落とす。
「まだまだ~~~!!」
ヤルモがサタンの圧力に耐え兼ねて吹っ飛ばされるなか、イロナはさらに連続斬り。イロナは空中で切り返しを繰り返し、サタンの背中を斬りまくる。
「くそっ! 【魔界の針山】」
「フンッ!」
それを嫌ったサタンは、真っ黒な針を全身から出してエスケープ。イロナも逃げなくてはならないので、空気を蹴ってサタンから離れるのであった。
「ナビ、ビームって細くして力を集約できないか?」
『可能ですよ』
「じゃあ、狙いは顔のド真ん中な」
『了解。カウントダウン開始します。5、4……』
吹き飛ばされたのにケロッとしているヤルモの元へイロナが近付くと、ナビと何やらやっていたので、またイラッとしている。そして顔を覗き込んだら、ヤルモの唇が尖っていたので吹き出しそうになっていた。
『エネルギー充填完了……ファイアー!』
その後は、なんだかナビがヤルモを操っているかの如く。ヤルモのタコみたいな口から、細長いビームが「ビュンッ!」と発射された。
ビームは黒い針が無くなった魔王の顔目掛けて一直線に進んで直撃した。
「おっ! 貫通したぞ。なかなかの威力ではないか」
そのビームは、イロナが褒めるほどの威力。サタンの顔から後頭部に抜けたのだから、ヤルモの予想外の効果となった。
「ぶはっ!? ナビ、撃てるだけ撃っておけ!」
『了解!』
「プププ……タコさん」
サタンはまだ身動き取れないみたいなので、いまのうちにダメージを稼ぎたいヤルモ。しかし、タコみたいな唇はイロナのツボに入ったらしく笑われ続けるので、ヤルモの顔が赤くなってるよ。
それからビームは二発で撃ち止め。サタンが動き出しそうなので、ヤルモもキャタピラモードを解除して立ち上がる。
「来たぞ!」
「プププ……夜にもう一度見せてくれ」
「うおっ!? わかったから戦ってくれ!!」
サタンは羽がもがれてもイロナより素早く走れるので、気付いた時にはもう目の前。イロナがふざけていたので、サタンの剣はヤルモが受けざるを得なかった。
「グギギギ……」
「よく止めた!」
「サンキュー!」
ヤルモが耐えてサタンの次の剣が振って来たら、イロナが刀で弾いてくれたのでヤルモは感謝。もう一発は無理だったみたいだ。
しかしサタンは目の前で魔法を使い出したので、イロナが前に出れず。サタンの怒濤の攻撃が絶え間なく襲い掛かるので、二人がかりでも防戦一方になっている。
サタンの剣をヤルモが大盾で受け、次の剣はイロナが弾く。その次の魔法はヤルモが盾で受け、また剣が来ると二人で左右を捌く。
防御に徹すればなんとか耐えられるが、いまもトゥオネタル族が悪魔を殺しているので、サタンの地力が上がってしまう。
「どうする? 我がムリヤリ出るか??」
「いや、俺に任せろ! ナビさん。なんか手はないか?」
ヤルモはかっこよくイロナの案を却下したけど、結局はナビ任せ。
『私が攻撃します』
「射線は開けられないぞ?」
『問題ありません。死にさらせ~~~!!』
そのナビはというと、銃を握ると性格が変わるらしい。
ヤルモの頭に立つ軍服巨乳人形は、二丁の太い銃からポンポンと弾を発射。その弾は放物線を描いて大盾を飛び越え、ヤルモたちの前を火の海に変えるのであった……